IBM、Oracle、Microsoft、SAPなども取り組む
企業向けブロックチェーンを推し進める「Hyperledger Fabric」とは(2/2 ページ)
農場から食卓までのブロックチェーン
サプライチェーン内でのB2Bトランザクションは、ブロックチェーンのユースケースになる可能性がある。こう話すのはFarmLogixでCEO兼プレジデントを務めるリンダ・マラース氏だ。FarmLogixは農場と食品購入者をつなぐソフトウェアプラットフォームを構築している。このようなサプライチェーンには、ブロックチェーンと似ている点が幾つかある。
FarmLogixのシステムでは、トランザクションチェーンの全てに属性を追加している。「当社のシステムは動的にコードを生成する。そういう意味では、ブロックチェーンと似ている」とマラース氏は言う。
一方、食品チェーンでは記録管理の必要性がますます高まっていると同氏は補足する。
「食品業界のブロックチェーンでは、食品の安全性が非常に重要になる。そのため、種まきの時点までさかのぼって記録するアプリケーションが多く登場すると考えている」(マラース氏)
ただし、ビットコイン式のブロックチェーンネットワークを特徴付ける暗号通貨の匿名性は、FarmLogixにとっては必要ない。
食品安全性を重視する最新のアプリケーションでは、ブロックチェーンが非常に効果的なツールになる可能性があるとマラース氏は言う。
「だが、このようなアプリケーションでは全ての場所を把握し、ユーザーがその情報にアクセスできることが求められる。当社がブロックチェーンに求めるのは匿名性ではなく、透明性になる」(マラース氏)
ブロックチェーンに必要な説明責任
実は、Hyperledgerが企業用ブロックチェーンに新たに取り入れようとしている要素の1つが説明責任だ。可視性と同意が、ブロックチェーンをビジネスに応用する鍵となるとクオモ氏は話す。
「ビットコインのブロックチェーンに欠けているものの1つが説明責任だ。B2Bブロックチェーンネットワークでは、匿名性は受け入れられない」(クオモ氏)
そのためHyperledger Fabricでは、認証を受けたユーザーが特別に限定された方法でアクセスできる許可型のネットワークアーキテクチャを構築している。
ブロックチェーンをB2Bに応用するに従って直面するもう1つの問題が、スケーラビリティと遅延だ。クオモ氏によると、ビットコイントランザクションは時折スループットが低下することがあるという。
クオモ氏は次のように説明する。「台帳のトランザクションは、ほぼリアルタイムに解決されなければならない。トランザクションがシステムに加わると、データストアにコミットされる。ブロックチェーンでは、全員がトランザクションのコピーを保持し、トランザクションがネットワークに参加すると、提案と同意の段階に入る。規則が満たされると、トランザクションがコミットされる」
企業のリアルタイムな運用に合わせてこのようなトランザクションのスケーラビリティを確保するために、取り組むべきことがある。クオモ氏はHyperledger Fabricに取り組んでいるIBMのサイエンティストが最近発表したレポートを例に挙げる。このサイエンティストは、1秒当たり3500件のトランザクションを1秒以内の遅延で実行するHyperledger Fabricアプリケーションをテストした。
他の多くの新しい技術と同様、企業向けブロックチェーンには注意点もある。現時点でこの技術に取り組むと、後でやり直しになる可能性が高い。
Gartnerでアナリストを務めるニック・ヒューデッカー氏は次のように述べる。「重要なのは、この技術がまだ初期段階にあることだ。18カ月後には、現在導入した手法を捨て、別のものに置き換えることになるだろう。近いうちにブロックチェーン技術が既存の手法に取って代わることはなさそうだ。多くは、付加的な利用にとどまるだろう」
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣 -
製品資料
[サイボウズ株式会社] AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
4
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
5
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
-
6
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
7
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
8
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
9
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
10
【漫画付き】ひとり情シス協会が明かす、RAG導入でしくじる企業「2つの共通点」
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー