GCPも活用、ディープラーニングでぶつかった4つの壁
TensorFlowを独自に学習 無人店舗化を目指すクリーニング店のAI事例(3/3 ページ)
GCPを活用し、「自分の課題=業界の課題」に挑戦を続ける
TensorFlowがオープンソースで公開されていることから、ディープラーニング技術を習得し、画像認識精度の実証をする辺りまでは、田原氏は自分のMacBookでTensorFlowを動かしていたそうだ。
教師データの画像点数が多いときには「1週間近くもTensorFlowを走らせっぱなしなこともありました」と田原氏は語る。ところがTensorFlowを使った機械学習サービスの「Google Cloud Machine Learning」で同じ量のデータを処理してみたら、数時間で終わったという。「もっと早くから使っていればよかったと思いました」(同氏)。Google Cloud Machine Learningは、クラウドサービスの「Google Cloud Platform」(GCP)で稼働する機械学習サービスだ。
季節物など特定のシーズンにしかクリーニングに出されない衣類は、時間をかけてデータを収集しなければ認識精度を高められない。そのため教師データとなるクリーニング品の画像データは増える一方だが、GCPの処理能力があれば教師データ量を増やして認識精度を高め、自分の考える方向に進んでいけると、手応えを感じたようだ。
現在は4種類前後の衣類を高い確率で認識できるようになった。田原氏は「最大24種類の自動分類を目指したいと考えています」と意気込む。今後は認識時の衣類の状態による認識精度の劣化を抑えたい考えだ。「例えばワイシャツは既に認識精度が高いのですが、広げた状態ではなく、お客さんが持ち込んだくしゃくしゃの状態でもワイシャツと認識できるのか。そうした認識精度にまでチャレンジするには、より多くの教師データで学習させなければなりません」(田原氏)
今後の展開について田原氏は、自社での実証実験を経て一般用エンジンへと展開し、ファッションAIエンジンを構築したいと述べる。もちろんその先には、エルアンドエーの無人店舗展開を見据えている。
「自分の課題は、業界の課題だと考えています。自社で実験した結果をエンジンとして提供して、クリーニング市場を広げていきたい。例えばクリーニング店員の教育コストは結構大きいのですが、衣類の種類を正しく自動認識できれば素人でも正しいケアができる可能性があります」(田原氏)
田原氏はエンジン化を通じて「家庭の洗濯に進出できる可能性もあります」と語る。家庭の洗濯に進出するとはつまり、家庭で衣類をカメラにかざすと、適切な選択方法を選んでくれる洗濯機などが登場する可能性を示唆している。田原氏が取り組んでいるディープラーニング技術や画像認識技術などを駆使した衣類データベースがそこで役立つとしたら、クリーニング業界は「プロの正しい洗濯方法」をデータとして提供できるようになり、ビジネスのパラダイムシフトを迎えるだろう。
「届かない高さにボールを投げて、必死に拾いに行くのが私の性分です。投資的な観点よりも、未来を創るという気持ちで取り組んでいます」(田原氏)
無人店舗に、家庭洗濯市場への進出。大きな夢を掲げる田原氏が、九州からクリーニング市場を変えていく可能性がある。
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