AIチャットbotの可能性について識者が対談
女子高生AI「りんな」は人間に投資信託を買わせることができるか?(2/2 ページ)
必要なのはデータより関係性
神山 りんなには会話を続ける能力があります。何でもいいから言葉を返してつなげていく力がある。そこに、サジェスチョンをする力を載せられますか。
砂金 そこは、りんなとは違う仕組みが必要になります。ただ、まずはそのサジェスチョンを会話の中に自然な形で溶け込ませるアプローチが重要になります。広告だと嫌がられても、自分のことを理解している身近な相手から、日常的な会話の中で薦められたものは、裏側のロジックが何であっても信頼できるはずです。重要なのは関係性です。
神山 やろうと思えばできるのですか。
砂金 できると思います。個人をデータで理解すること以上に、ユーザーの心に刺さるパッケージを作れるかどうかが重要ですね。LINEとしては、広告配信を最適化するときは「みなし属性」を使っています。個人を特定できても、全部を個人にカスタマイズする必要はないと思います。「自分を理解している」と感じてもらうことが大事なのであって、実際にはクラスタに対してのレコメンデーションでも問題はありません。LINEのグループ会社が提供するサービスに、「“俺の嫁”召喚装置」というコンセプトの「Gatebox」があるのですが、3D(3次元)キャラクターの女の子との会話は、さほど内容がパーソナライズされてはいません。それでも、親近感を持たせることができれば、相手が人間でなくても、会話を繰り返すうちにだんだんと思い入れができてきます。
投資の裾野を広げるためにAIをどう使うか
神山 日本で個人の投資が普及していないのは、2つの障害があるからです。1つはお金がないから。もう1つは知識がないから。本来は、お金がないから投資をする必要があるのです。ある程度の資金がたまってから投資をするのでは、資金効率が悪い。そのこと自体が知られていません。それなのに、投資教育となると、金利の計算や株式の理論の話ばかりになる。世界中のいろいろなものがパッケージになった投資信託にざっくりお金を入れればいいと納得してもらうには、すごく時間がかかる。
砂金 現在のLINEのMAU(月間アクティブユーザー数)は7500万ユーザーぐらいですが、毎月およそ100万ユーザーずつ増えている背景には、ガラケー(従来型携帯電話)から移行する高齢者の存在があります。高齢者にとって重要なのは「誰が発言したか」です。例えばある人に「最近孫が生まれた」という情報が得られたとして、窓口で担当者が孫の教育費のためにと投資を勧めても、納得させるのは簡単ではありません。そこで、例えば孫に成り代わって会話してくれるbotを用意して「勉強したい」と語り掛けさせたら、投資したい気持ちになるかもしれません。
神山 今の教育費の例は「投資の目的」に関わる大事な指摘です。金融機関の窓口で「一番売れている商品」を買おうとする人が多いのは、投資の目的が明確でないからです。大事なお金を他人任せにしているわけで、実は無責任な態度ともいえます。本来、投資にはプロもアマチュアもいません。目的は学費や旅費を作ることでも何でもいいのですが自分の判断に責任を持つこと。そのために、何らかの形で個人の投資目的に即したサジェスチョンを提供することが重要です。投資に興味のない人の心を動かす工夫をすれば、りんなでなくてもAIによる投信販売の裾野が開拓できると思います。
砂金 近い将来、そうなると思います。単に、銀行や証券会社の窓口がロボットやAIに置き換わるだけでは面白くありませんよね。リアルな孫の代わりに、孫の特徴データを持っているbotが高齢者に投資を勧めるということが、数年のうちにできればいいと思います。他の企業にはLINEとは違う資産があるのですから、他のやり方もあるかもしれません。LINEとしては、りんなでやったように、ファンを作って仲良くする手段をこれからも追求します。
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