ガートナーが重視する3つの戦略的要素も紹介
人工知能(AI)の勝ち組企業が重視する「CoE」とは?(2/2 ページ)
AI戦略の3つの戦略的要素
CIOが注意を払うべき要素は、AI技術のCoEだけではないとエリオット氏は指摘。「AIビジネスの革新」「AIポリシーとガバナンス」「AIスキルのCoE」という3つの戦略的要素こそ考慮すべきだと主張する。
ビジネスの革新は、ビジネス部門と相談しながら取り組む。最も重要なアプリケーションとユースケースに加えて、それらに優先順位を付ける方法を決める。
AIポリシーとガバナンスは、注意すべき対象と、従うべきベストプラクティスについてのガイドラインを定める。「データを大規模に使用する場合もあれば、アプリケーションを顧客に公開することもある。そうしたことを適切に遂行する必要がある」とエリオット氏は説明する。
プロジェクトを選んだら、関連するスキルを整える必要がある。そこでAIスキルのCoEが役割を果たす。AIスキルのCoEに含まれるのは、多層構造のニューラルネットワークであるディープニューラルネットワークや自然言語の理解といった、AI技術固有のスキルだけではない。場合によってはデータサイエンスやデータ分析などの一般的スキルも含まれる。「AIスキルのCoEは、スキルの整理と管理を支援する一つの方法だ」(エリオット氏)
多くの場合、あるスキルチームのメンバーが、AIスキルのCoEに永続的に再配置されるのではなく、兼任で参加する形になる。各自固有のスキルの利用方法に応じて、プロジェクトを支援するために指名される。
「場合によっては育成が難しいスキルもある」とエリオット氏は指摘する。「市場価値が非常に高い従業員は、2、3年後に離職することも珍しくない。こうした従業員を雇用し、トレーニングすることに、企業はあまり関心がないこともある」と語る。
AIスキルのCoEのメンバーを社内の従業員に限定する必要はないというのが、エリオット氏の考えだ。「企業はコンサルタントに頼ることができる。コンサルタントが、プロジェクトの完了を支援するスキルを持った企業やスタッフを引き入れる。従業員を抱える必要はない」(同氏)
鍵を握る仮想CoE
米ボストンの大手資産運用会社State Streetで、シニアバイスプレジデント兼チーフテクノロジーアーキテクトを務めるモイズ・コハーリ氏は、組織の仮想化がAI戦略の鍵を握ると話す。同氏は厳密には、AI技術のCoEに反対している。「物理的な組織」というイメージを想起させるからだという。
中国から米ボストンまで各地に人材が分散しているグローバル企業に勤める立場から、コハーリ氏は従来の物理的なCoEは「近視眼的に感じる」と語る。「適切な人材を適切な問題に割り当てられる方が、はるかに有益だと考えている」(同氏)
コハーリ氏が想定するのは、オープンソースコミュニティーのような組織だ。オープンソースコミュニティーでは、世界中の専門家が同じ部屋で1つのプロジェクトに取り組む必要はない。プロジェクトの特定領域の保守管理者と、そのプロジェクトの貢献者を用意する。貢献者は「GitHub」のようなソースコード共有サービスにコードを投稿する。コードはそこで確認および受理された後、プロジェクトの保守管理者が承認する。こうしたワークフローがState Streetには存在する。
物理的CoEという考え方を絶つことで、State Streetはローカル規模ではなくグローバルの規模で、リーダーシップについて考えることができるようになったという。「最適な人材を雇用することが、State Streetにとっては最も有益なアプローチになる。その人材がどこにいるとしてもだ」とコハーリ氏は述べる。
State Streetは、同社の将来にとって欠かせないと考える具体的な技術分野を特定した。具体的にはアノマリー(異常)検知、自然言語処理、予測分析などだ。同社は技術ごとに「核となる人材」を作ろうと努めている。チームを築き、これらの分野でビジネスの課題に対処するプロジェクトを監督できる、少数の専門家だ。
核となる人材は各自の分野で光り輝く。こうした人材は「プロジェクトに貢献するだけでなく、自ら幾つかプロジェクトを立ち上げている」とコハーリ氏は言う。
State Streetは、プロジェクトの進行状況を追跡するために、管理手腕に優れた人材をチームに配属することで、核となる人材をサポートしている。「アノマリー検知のためのライブラリ開発に取り組む屈指の頭脳を持つ人材を捕まえて、管理面の仕事を任せて負担を掛ける――。そのような事態は絶対に避けなければならない」とコハーリ氏は強調する。
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