Nokiaの事例
「AWS Greengrass」でIoTアプリをクラウドとシームレスに連携させるには
AWS Greengrass上でIoTアプリケーションを構築する際の、さまざまなアプリケーションとインフラストラクチャの連携について考えてみよう。
新世代のIoTプラットフォームでは、クラウド、エッジサーバおよびコネクテッドデバイスにまたがるアプリケーションの構築、配備、管理を容易にすることができる。このようなアプリケーションは、開発者があらゆるレベルでコードと構成のバランスを保証する必要があるため、実装が難しい場合もある。「Amazon Web Services」(AWS)のIoT機能「AWS Greengrass」は、開発者がエッジデバイスや組み込みデバイスと通信する「AWS Lambda」フレームワーク(FaaS:Framework as a Service)の上にアプリケーションを作成できるため、最近注目されている。これには、既に「AWS Snowball Edge」やNokiaが開発した新しいクラスの携帯電話基地局などの技術が組み込まれている。
AWS Greengrassを使用すると、コネクテッドデバイスに対して安全な方法でローカル処理、メッセージング、データキャッシング、同期および機械学習(ML)などの機能を実装できる。AWSは、機械学習モデルをデバイスに直接配備可能なAWS Greengrass MLのような新しい機能のプラットフォームへの追加を開始した。これらを使用すると、デバイスがクラウドに接続されていなくても、迅速に意思決定を行うことが可能だ。
Nokiaのエンド・ツー・エンドソリューションアーキテクト、マルコ・ホッカネン氏によると、AWS Greengrassの主なメリットは、AWSの巨大なソースコードのエコシステム、簡単な配備、オフラインでの作業などがあるという。
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AWSのIoT事例
クラウドサービスのIoT機能
まずはクラウド側から
エッジでAWS Greengrassの使用を開始する前に、クラウドレベルのインテリジェンスのためにAWSのマイクロサービスの使用方法を理解することが重要だ。Digi Internationalの製品担当バイスプレジデント、スコット・ネルソン氏は、「AWS Greengrassのパワーにより、システム内でインテリジェンスを分散させ、そのインテリジェンスをオフラインで維持することが可能になる」と語った。
デバイスにインテリジェンスをプッシュする機能を提供することで、従来のAWS機能に比べて大きな利点が得られる。AWS Greengrassを統合する完全なシステムでは、AWSとデバイスの間でのインテリジェンスの分割を、システム要件に合わせて最適化する必要がある。どこで分割するかを決める際には、多くのトレードオフがある。エッジアプリケーションにとって直接的な価値がない場合でも、大量のデータを取得することに高い価値がある場合もある。よって、デバイスがデータをフィルタリングする機能を備えていても、システムはできるだけ多くのデータをAWSにプッシュしようとする。
「エッジのデバイスのデータレートが低い場合、あるいはバッファーが小さいため接続の信頼性が低い場合は、データ値の小さな変動は重要ではない。このような状況では、システムはAWS Greengrassでデータを大量にフィルタリングできるため、クラウドで処理する必要はない」とネルソン氏は言う。
デバイスは、AWS Greengrassを使用したオフライン動作が可能で、ネットワークに接続されていない場合でも、スケジュールされた動作や応答動作をローカル環境で継続できる。一方、デバイスにインテリジェンスを持たせて動作を継続すると、古いデータを使用することによって望ましくない結果を出す可能性がある。システム設計者はこのような状況を想定し、デバイスが分散インテリジェンスを効果的に制御できない状態にならないようにする必要がある。
セキュリティと管理の計画
AWSは、AWS GreengrassとAWS Lambdaにより、クラウドプログラミングのベストプラクティスを組み込み機器の開発の世界にまで広げてきた。NXP Semiconductorのソフトウェア開発担当シニアディレクター、ジャスティン・ヤン氏は、「実用的でスケーラブルなIoTソリューションを構築するには、セキュアデバイスの搭載とデバイスライフサイクル管理の課題を解決し、これらのデバイスへのAWS Greengrassの導入を自動化する必要がある」と述べる。
このようなシステムには、エンド・ツー・エンドのセキュリティインフラが必要で、セキュリティはハードウェアに作り込む必要がある。クラウドベースのデバイスの統合と管理のためのインフラは、共通の抽象化レイヤーを提供して、AWS GreengrassコアとAWS Lambdaの機能の配備方法を統一する必要がある。大規模な配備をサポートするには、デバイス登録の自動化が必要だ。
IoTデバイスとゲートウェイの更新およびアップグレードは厄介な問題だ。AWS上にサービスを実装するFileCloudのCOO、ベンカット・ラマサミ氏は、「実際のデバイスを抽象化することで、後で簡単にデバイスの統合とアップグレードが可能になる。開発者は、実環境でネットワークが信頼できなくなった状態を想定する必要がある。ネットワークの信頼性を検出できるようにアプリケーションを構築し、より軽いプロトコルを使用するよう適切に設計する必要がある」と述べた。
ローエンドIoTデバイス
AWS Greengrassを導入したデバイスは、機能と操作性の制約によって異なるタイプのソフトウェアを実行する。最も制約の厳しいデバイスはマイクロコントローラーだ。その処理能力とメモリ容量は貧弱(RAMは通常数十キロバイト程度)なため、電球、煙検知器、コンベヤーベルトなどのデバイスに最適だ。
Amazon FreeRTOSは、低消費電力の小型エッジデバイスに使用するマイクロコントローラー用OSで、プログラミング、配備、保護、接続、管理を容易にする。これは、マイクロコントローラー向けの一般的なオープンソースOSであるFreeRTOSカーネルをベースにしており、Amazon Web Services(Amazon)は、これをソフトウェアライブラリにより機能拡張をして、低消費電力の小型デバイスからAWS IoTコアなどのAWS機能への安全で簡単な接続や、より強力なAWS Greengrassを実行するエッジデバイスからAWS IoTコアへの接続を可能にする。開発者は、C言語を使用してAmazon FreeRTOSの上にアプリケーションを構築できる。NXPのヤン氏によると、ローエンドのデバイス(センサーなど)は、AWS IoT Device SDKを使用せずに、(Modbusなど)レガシーまたは低電力のワイヤレスプロトコルを使用して互いに通信することができるという。
Digiのネルソン氏によると、最新バージョンのAWS Greengrassが提供するOpen Platform Communications Unified Architecture(OPC UA)機能を使用してプログラマブルロジックコントローラー(PLC)を利用することも可能だという。OPC UAは、OPC Foundationによって開発された産業オートメーション用のマシンツーマシン通信プロトコルだ。Greengrass OPC UAは、Greengrassグループ内のデバイスやクラウドに対するルールに基づいたメッセージ配信により、産業機器からのメッセージの取得と処理を可能にする。例えばPLCは、OPC UAサーバを介して、GreengrassコアのOPC UAアダプターのLambda機能に接続できるようになった。
エッジサーバ
より多くの処理能力とメモリ容量(数百MB程度)を持つデバイスは、エッジゲートウェイとして使用することで、より制約のあるコネクテッドデバイスからのデータをローカルに集約して処理することができる。このようなデバイスは、LinuxなどのOSを実行することができ、インターネットに接続されていなくても、AWS Lambda機能を実行して、デバイスデータとの同期と他のデバイスとの安全な通信が可能だ。開発者はPython 2.7、Node.JS 6.10、Java8で書かれたAWS Lambdaの関数を利用できる。
開発者は、Amazon FreeRTOSとAWS Greengrassの両方を使用してAWS上のAWS IoTコアにデータを送信できる。AWSをさらに利用すると任意のプログラミング言語でアプリケーションを開発することができる。AWS Lambdaは、AWS IoTコアとネイティブに統合されているため、一般的な選択といえる。
実用化済みのAWS Greengrass
Nokiaは、Nokia Mobile Edge(マルチアクセスエッジコンピューティング)ゲートウェイで動作するAWS GreengrassのIoTアプリケーションをデモンストレーションした。このアプリケーションは、AWS Greengrass、機械学習、AIなどのアプリケーションを実行する仮想コアを提供する。このコアはエンドデバイスに安全に接続してセンサーデータを処理し、このデータの基本的な解析を実行することができる。
Nokiaのホカネン氏は、「データの一定量はエッジに保持しておくべきで、全てをクラウドに送信するのは適切ではない」と語る。同社は、コールドチェーンロジスティクスなどのアプリケーションを使用して、データをエッジゲートウェイに送信して結果を分析し、イベントをローカルでトリガーするか、クラウドにデータを送信する。例えば、コンベヤー上のアイスクリームの温度が上昇した場合、ゲートウェイがサーモスタットを作動させて温度を局所的に調整することができる。異常情報や非定期的データをクラウドに送信することも可能だ。
もう1つの良い例はエッジビデオ解析だ。その典型的なパラダイムは、都市全体、または複数のキャンパスや店舗からのビデオストリームをWAN経由で収集することだ。カメラは大量のネットワークデータを生成してビデオ解析サーバにアップロードする。より効率的なアプローチは、このストリームをエッジで受信して解析をし、データ量を大幅に削減してからクラウドに送信して処理する方法だ。それでも解析サーバに送信するデータの量は元データの1%程度の量になる。
成長するAWS Greengrassのエコシステムを利用してIoTアプリケーションを構築しようとする企業にとってAWSは良い選択だ。しかし、より優れた方法が利用可能になる日に備えることも選択肢の1つだろう。FileCloudのラマサミ氏は「移植性を念頭に設計すべきだ。AWSのネイティブAPIをソリューションに多用すると、新しいプラットフォームへの移行は非常に難しくなる。別のプラットフォームへの移行を将来可能にするには、適度に分離した実装を設計に盛り込むことが重要だ」と述べた。
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