タレントマネジメントによる統合が鍵
後継者育成計画に必要なものとは? HR担当者が今知るべき人材開発の進め方
人材管理コンサルタント企業BPI groupでリーダーシップと人材育成部門を率いるマイケル・マクゴワン氏が、サクセッションプラン(後継者育成計画)を正しく遂行するための重要なアドバイスを共有する。
タレントマネジメントにおいて「今ほど良い時はない」という格言が適用できる分野があるとすれば、サクセッションプラン(後継者育成計画)だ。
「ベビーブーム世代の退職、組織におけるリーダーシップ開発の欠如、またとりわけミレニアル世代の転職の繰り返しによる従業員数の自然減などが理由となり、5年以内に約85%の組織で相当数のリーダーシップが不足するだろう」と、人材管理コンサルタント企業BPI groupでリーダーシップと人材育成を担当するマネージングディレクター兼プラクティスリーダーのマイケル・マクゴワン氏は述べる。「だからこそサクセッションプランが重要であり、企業が現在実施している以上に注力すべきだ」(マクゴワン氏)
サクセッションプランの対象は将来のリーダー候補だけではない
サクセッションプランは、単に次のCEO(最高経営責任者)を育てるという役割にとどまらないと、マクゴワン氏は定義する。それは短期的および長期的に、あらゆる職務レベル、地域、ビジネス機能において次世代のリーダーを育てるために、組織が継続的に人材を採用し、開発する取り組みであるとする。
マクゴワン氏によれば、HR(人事)担当と各ビジネス部門のリーダーが年に1~2回集まり、さまざまなレベルにおける有望な人材を選定しておくことは、サクセッションプランを成功に導くための土台になる。この人材の対象になるのは、経営幹部の役割が担える高い可能性を秘めた従業員だけではない。自らの機能的、技術的な領域を超えてリーダーシップの役割を果たすことまでは望まない、または期待されないものの、事業への貢献度が高く企業が引き留めておくべきハイプロフェッショナルと呼ばれる人材も含まれる。この両方のケースにおいて、サクセッションプランを推進するための学習および開発のプログラムが作られるべきである。
業界に精通している人の多くが指摘していることでもあるが、マクゴワン氏は「人材のパイプライン開発、とくに次世代のリーダー育成に失敗すれば、今日の市場競争で生き残るために必要な企業の力を損なうことになるだろう」と語る。マクゴワン氏は、サクセッションプランのベストプラクティスと課題、そしてコミュニケーションとコラボレーションがなぜ重要であるかについて説明する。
サクセッションプランを成功に導く鍵は統合
――企業とHR部門が知っておくべき、サクセッションプランのベストプラクティスに関する重大な真実とは何でしょうか。
マイケル・マクゴワン氏:サクセッションプランは、業績管理、リーダーシップ開発、研修プログラムといった組織におけるタレントマネジメントの仕組み全体と、戦略およびソフトウェアの両面で統合されるべき重要な取り組みだ。採用や人材を定着させる活動とも連携する必要がある。
私が考えるサクセッションプランは、まずタレントマネジメントが傘の一番上に来る。その下に、後継者、タレントレビュー、タレントアクイジション、業績管理、採用、従業員エンゲージメントといった他の項目が入る。そしてサクセッションプランが成功するためには、これらの項目全てを結び付け、統合する必要がある。
これらを統合できなければ、サクセッションプランだけでも、またはその他のいずれかの項目だけでも、残念ながら多くの組織でその取り組みを最終的には放棄せざるを得なくなることが分かった。関係する全ての分野を結び付けることができなければ、それぞれうまく機能させることができないためだ。
――何が間違っているのでしょうか。
マクゴワン氏:一例を挙げてみよう。私たちは巨大な飲料会社と仕事をしてきた。その会社には比較的成熟した人材管理部門があり、洗練された業績管理の仕組みがあり、企業内大学では多くの研修プログラム、採用プログラムを提供し、サクセッションプランもある。
しかし、ここに失敗の原因がある。この企業はサクセッションプランの一環で、タレントレビューや有望な人材の選出などを実施している。その中で「この従業員は高い潜在能力を持ち、これが強みで、これが足りない部分だ」と彼らは議論する。だがそれで終わってしまう。これでは人材開発のための変化は何も生まれない。
対象となった従業員は研修に参加するが、サクセッションプランにより見極められたスキル開発にはつながらないだろう。サクセッションプランの担当者から伸ばすべきスキルを聞いていないためだ。あるいは、企業内大学の担当者が、その従業員に不足しているスキルに気付いていないためだ。これでは残念ながら、その従業員の育成につながる新しいものは提供できない。
採用についても同様だ。「よし、サクセッションプランによれば開発すべき高い潜在能力を持つ有望なリーダーの資質とはこうしたものだ。成功に導くためにどういった人物が必要か分かった」と言うだろう。しかし残念なことに、採用部門はその後継者に特化した情報を利用できず、自分たちの部門が持っている採用の必要がある人物像のプロフィールを参照してしまう。
こうした例から、各部門がお互いの情報を共有せず単独で動く場合は、人材育成は時間の浪費に終わることが分かるだろう。従業員を育成するために必要な情報を使用しなかったり、自分たちが本当に希望する人材を採用できなかったりするなら、サクセッションプランを実施する意味はあるのだろうか。
――そうしたシナリオとは反対の、サクセッションプランのベストプラクティスとはどのようなものでしょうか。
マクゴワン氏:仮にあなたが従業員の強みと開発すべき分野が完全に明確になっているサクセッションプランを持っているとする。その情報を育成部門に伝える。そしてその情報をもとに話す。「こういうタイプの従業員が成功するために与えなければならないものはこういうものだ。採用については、これがわれわれの必要とする人材のタイプだ。全組織のレベルに応じて、探すべき正しい人材の職務要件を更新してほしい」。これが、私たちにとっての統合しようとする取り組みだ。
サクセッションプランのベストプラクティスを目指すコラボレーションのコツ
――各ビジネス部門のリーダーとHR部門がサクセッションプランに参加しているとして、誰が指揮を執り、全体を監督するのでしょうか。?
マクゴワン氏:CHO(最高人事責任者)などHR部門のリーダーだ。しかし、サクセッションプランは事業全体で推進されるべき活動であり、HR部門だけの問題ではない。
サクセッションプランは組織が成功を続けるために不可欠なものだが、HR部門だけでどの人材が、なぜ有望であるのかを知ることはできない。ビジネス部門のリーダーなら知っている。それぞれの部門で将来誰が必要になり、対象となる従業員が次のステージに進むための組織が何を提供しなければならないのかを明確にすることができる。
――どのようにして従業員の希望を織り込むのでしょうか。
マクゴワン氏:一般的に、年間を通じて交わされる管理者やビジネス部門のリーダーとの意見交換から得られる情報が元になる。しかしより重要なのは、キャリア開発の一環である毎年実施している目標設定の取り組みを活用することだ。
――私が知る限り、多くの企業はサクセッションプランをそれほど重要視しているようには見えません。
マクゴワン氏:確かに残念ながらその通りだ。大部分の企業は、サクセッションプランにあまり力を入れていない。それには時間がかかるし、多くの従業員を巻き込まなければならないためだ。しかし残念なことに多くの場合、リーダーの変更は失敗に終わる。サクセッションプランを導入していない多くの企業や、導入していてもうまく機能しない企業は、外部から人材を雇い入れる。
これは問題である。第一にはるかにコストがかかるし、第二にしばしば失敗する。外部から雇い入れた人材は社内の文化にうまく適応できないことや、自分に何を期待されているのかが分からないことが原因だ。たとえ社内から昇進する場合でも、サクセッションプランがなければ従業員は適切に育成されておらず、新しい職務を担うための準備が整っていない。これはサクセッションプランを取り入れていないか、適切に実施できていない企業が陥る本当に悲惨な結果だ。
――ベストプラクティスに関して最後に述べておくことはありますか。
マクゴワン氏:何点か挙げておこう。
- シンプルにやろう。過剰な機能を持つ仕組みを設計するのは時間がかかるし、最終的には放棄することになったり、適切に運用されなくなったりする。
- 費やす時間は最小限にしよう。時間をかけ過ぎると、管理者たちは手を抜くやり方を見つけるか、完全に投げ出してしまうだろう。
- 高い潜在能力がある人材だけが対象ではないことを覚えておこう。全てのタイプの人材が対象だ。
- ソフトウェアパッケージを購入する前に、自分の組織に合うプロセスを設計しよう。そしてあなたの組織特有のプロセスに適合できる技術を持つベンダーを探そう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
SNS認証や多要素認証も数分で実装、IDaaS基盤でデジタルビジネスはどう変わる? -
製品レビュー
「電子帳簿保存法対応」実践術:タイムスタンプ付与などの要件の手軽な実現方法 -
事例
「大企業のデジタル化」成功事例集【コクヨ、九州電力、ヨネックスなど21社】 -
製品資料
“顧客管理の課題”を簡単に解決する方法とは? -
製品資料
契約管理の“あるある課題”をノーコード開発で解決するためのポイント
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
ソフトウェア開発生産性向上に取り組む企業は4割 調査で学ぶ「停滞」の正体
-
2
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
3
Oracle巨大ITプロジェクトはなぜつまずいたのか 8年で導入1割、追加で170億ドル
-
4
Microsoft製品でここまで自動化できる 情シスがやめられる手作業10選
-
5
「技術屋」で終わらないために 情シスが今取るべき認定資格5選
-
6
Synologyがエンタープライズ向けユニファイドストレージを投入 その実力は
-
7
継続利用は4割どまり M365 Copilotが「効く業務」と期待外れの境界
-
8
迫る“インフラ崩壊”の危機 米英を相次いで襲った「PLC悪用攻撃」の全貌
-
9
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
-
10
ISMSの“コンサル丸投げ”が招く数千万円の無駄 NTTドコモビジネスの脱出劇
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
2
AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
-
3
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
4
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
5
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
-
6
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
7
「結局、一部の人しか使わない」 AI活用が業務に定着しない根本的な理由
-
8
AIエージェントで成果は出る? 調査結果に見る費用対効果の実態
-
9
PostgreSQLの「機能」「性能」「運用」「拡張性」に関する悩みの解消法
-
10
ゼロトラストにおける「IDaaSの課題」と補完すべき重要機能とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー