“現金主義”とデバイスコストが壁に
キャッシュレス決済はなぜ日本で普及しないのか? Visaが明かす課題は
各決済事業者がキャッシュレス化の推進に取り組んでいる。店舗でのキャッシュレス化の動向と、これから導入の進むことが予想される技術について、Visaの鈴木氏の話を基に伝える。
経済産業省は2027年までにキャッシュレス決済の比率を40%まで向上させることを目標としており、各決済事業者がキャッシュレス決済システムを新たにリリースしている。今後どのような技術が台頭するのか。キャッシュレス決済の推進に向けた課題は。ビザ・ワールドワイド・ジャパン(Visa)のデジタル・ソリューション&ディプロイメント部長 鈴木章五氏の話を基に、店舗決済のキャッシュレス化の動向を探る。
クレジットカードのタッチ決済用端末の普及
クレジットカードの磁気テープを読み取るタイプのPOS(販売時点情報管理)レジは世界的に減り、代わりに「EMV」規格に準拠したタッチ決済デバイスの店舗導入が進むと鈴木氏は予想する。EMVは磁気テープではなく、ICチップと暗証番号を読み取って決済するシステムの国際規格だ。店舗がEMV準拠のタッチ決済デバイスを導入すると、店舗の顧客はこのデバイスにEMV準拠のクレジットカードを接触させるだけで決済できる。
Visaは2020年を目標に、EMVに準拠したタッチ決済システムを、ほとんどの加盟店舗で利用可能にすることを目指す。小規模加盟店でのタッチ決済に重点を置き、スマートフォン用アプリケーションと専用カードリーダーの提供など、キャッシュレス決済サービスを利用できるようにするためのインフラ整備を進めている最中だという。
カード情報のトークン化が進みつつある
鈴木氏は、電子マネーやQRコードなど決済手段の多様化に伴い、クレジットカードや現金以外のツールを使った決済が飛躍的に増えると言う。スマートフォンやウェアラブルデバイスなど顧客の決済用デバイスと、顧客自身が操作して会計するセルフレジなど店舗側の決済用デバイスの多様化が進んでいる。そのため顧客と店舗側の決済用デバイスがどのような組み合わせでも、クレジットカード番号やセキュリティコードといったカード情報のセキュリティレベルを確保して情報漏えいを防ぐ必要がある。そこで有効なのがカード情報のトークン化技術だ。
トークン化技術は、カード情報をトークンと呼ばれる別の文字列に置き換える。トークンを用いれば実際のカード情報を開示することなく決済処理ができるため、偽造やなりすましを防げるという。Visaカードのトークン化技術では、Visaの決済ネットワーク「VisaNet」のシステムを使い、1枚のクレジットカードに最大で99個のトークンをひも付ける。トークンごとに、決済できる店舗やデバイスの指定、利用期限の付与などができる(図1)。鈴木氏は、今後セキュリティの観点から、決済に必要なカード情報はトークン化されていくのではないかと予想する。
キャッシュレス社会に向けた課題
鈴木氏は、日本におけるキャッシュレス決済の普及における主な課題を2つ挙げる。1つ目は、日本人の顧客や店舗担当者にとって現金決済がなじみ深いため、そのマインドを変える必要があることだ。
2つ目には導入コストの課題がある。海外の大規模な決済デバイスベンダーは全世界を対象市場にしており、何百万、何千万台規模でデバイスを生産することが珍しくない。日本国内にも決済デバイスベンダーは存在するが、「Suica」「PASMO」といった国内向けのキャッシュレス決済手段の利用を前提としており、現時点ではデバイスの販売は国内が中心だという。そのため国内ベンダーの決済デバイスは、海外の大手ベンダー製品と比べ生産台数が少なく、販売価格が高くなる傾向がある。結果として国内での導入コストが総じて高止まりしていることが、国内店舗でのキャッシュレス決済の普及を妨げている要因ではないかと、鈴木氏は推測する。小規模店舗のキャッシュレス化は、導入コストが低い、スマートフォンアプリなど既存のデバイスに組み込める決済システムの導入を中心に進むと考えられる。
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