企業における「ID管理」【第1回】
いまさら聞けない「ID管理」 その役割からライフサイクル管理のポイントまで(1/2 ページ)
ITシステムを利用する企業にとって、ID管理は重要な仕組みだ。認証や認可といった基本的な部分からID管理のポイントまでを幅広く解説する。
アイデンティティー管理(以下、ID管理)とは、情報システムにおけるアカウントや人事情報といったアイデンティティー情報と、そのアクセス権限情報のライフサイクル管理を意味する。本稿ではID管理の基本的な役割から管理のポイント、一般的なID管理システムの仕組みについて解説する。
ID管理の役割
一般的にIT環境におけるID管理の役割は、正しい利用者を「認証」し、業務に必要なITシステムや情報を正しく利用させるために「認可」することだ(表1)。逆に言えば、認証や認可を正しく実行するためには、IDを正しく管理しなければならない。
| 役割 | 説明 |
|---|---|
| 認証 | ITシステムへのアクセスが許可されている本人かどうかを確認する |
| 認可 | 業務に必要なITシステムや情報に適切な権限でアクセス可能な状態にする |
企業内におけるID管理の主な目的としては、セキュリティ対策、ITガバナンスの向上、コンプライアンス(法令順守)などが挙げられる。最近ではクラウドサービスを含めて、IDの一元化とシングルサインオン(SSO)、セキュリティ対策を進めることを目的としたID管理プロジェクトもある。
併せて読みたいお薦め記事
アイデンティティー管理はどのようにビジネスへ貢献するのか
- ID管理システムはAI、生体認証を活用へ ユーザー環境の多様性にどう対応するか
- モバイル管理ではなく統合エンドポイント管理へ IT部門の仕事は変わる?
- モバイルセキュリティはデバイス管理だけじゃない、IT担当者が知るべき8つの課題
製品選定のポイントは?
認証と認可の違い
認証と認可は同時に実施することが一般的なため、混同されがちだ。両者の違いについて、よく理解しておく必要がある(表2)。
| 種別 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| 認証 | 通信の相手が誰(何)であるかを確認すること。純粋な「認証」には「リソース」やそれに対する「権限」という考え方はない | マイナンバーカードを使って本人確認をする |
| 認可 | ある特定の条件に対して、リソースアクセスの権限を与えること。純粋な「認可」には「誰」という考え方はない | 切符を購入していれば電車に乗ることができる |
ID管理のポイント
企業で適切にID管理をするためには、まずはIDのライフサイクルを洗い出し、問題点を抽出してから、あるべき姿に近づけることが重要だ。一般的には人事イベントと関連付けて整理をするとよいだろう(図1)。
入社時を考えてみよう。まず正社員、契約社員、派遣社員など雇用形態の違いによって発行するIDが変わる。出向、受け入れといったグループ会社内での人的交流、嘱託(しょくたく)契約やパートナー企業の業務委託契約による要員受け入れでも、IDの発行や変更作業が必要になる。特に人的交流はさまざまパターンが起き得るので、抜け漏れなく検討が必要だ。
ID管理と「人の動き」は切り離せない重要なポイントになる。そのため人事部をうまく仲間に引き入れられるかどうかが、ID管理を成功させる要因の一つといってもいい。
認可の側面からも「どの部門」が「どこからどこまで」を管理対象とするかについては、十分な検討が必要だ。IDライフサイクルが人事部の管理範囲かどうか、人事部とよく協議することも求められる。
アプリケーション管理担当者とのコミュニケーションも欠かせない。人事異動によって権限を付け替える作業や引き継ぎが発生すると、アプリケーションの権限調整が必要となる場合があるからだ。必要に応じて「権限変更時のルール」などをID管理ポリシーとして制定することをお勧めする。
ID管理システムの要件
「ID管理のあるべき姿」を考えるときには、以下に紹介する3つの要素を検討することが重要だ。これはID管理システムの要件ともいえる。
Trusted DB
「Trusted DB」はその名の通り、信頼できるデータベース(以下、DB)のことだ。Trusted DBは、企業で利用するITシステムの全利用者のIDを一元的に管理する。企業において、Trusted DBは重要な部品(コンポーネント)となる。現時点ではTrusted DBを持たない企業がほとんどだろう。組織単位でシステムごとのID管理を実施している企業が少なくないからだ。Trusted DBを実現するためには、人事システムから従業員情報や組織情報を都度取得し、常に「ITシステム利用者のID」を最新化しておく必要がある。
契約社員や派遣社員など有期契約の従業員のIDは、人事システムの管理外となっていることが少なくない。その場合はワークフローシステムとの連携で従業員情報や組織情報を取得し、適切な承認ルートを経て、雇用契約期間の情報と共に、Trusted DBにIDを登録することが必要となる。さらに従業員の雇用契約満了もしくは退職時にはIDを迅速に削除(無効化)しなければならない。
IT統制による自動化
ID管理システムの理想は、IDライフサイクル管理の一連の作業をITによって自動化することだ。一部でも手作業の部分が残ると、不正や間違いが発生する可能性がある。特に利用者からのパスワードリセット依頼はヘルプデスクのリソースを大きく奪ってしまうため、セルフリセットサービスも導入すべきだ。
人事システムからの従業員情報や組織情報の取得には注意が必要になる。人事部が人事システムの画面を開き、人事情報を一つずつ登録していることが少なくないためだ。入力ミスによって人事システムのIDが誤った内容に更新されることを考慮して、Trusted DB側でも定期的にチェックしなければならない。
厳格なIDの受け渡し
Trusted DBや自動入力によって正しくIDが管理できても、最終的にIDを正しく払い出せなければ全てが無駄になってしまう。社員証やビルの入館証と同じように、IDを引き渡す場合には本人確認を確実に実施すべきだ。
「IDを受け渡す」ことは「IDにひも付いたシステムの利用規定を順守させる」という側面もある。そのためID引き渡しの条件として、システム利用誓約書にサインをさせる企業もある。
一度IDが別人に渡ってしまうと「なりすまし」が発生するリスクが高くなる。IDの引き渡しにおいては運用手順を定めて、適切に運用することが求められる。特に有期雇用の従業員については、より厳密な運用が必要だ。例えば1つのIDを3人の派遣社員が使い回すなどの運用はあってはならない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
企業における「ID管理」
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
2
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
3
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
4
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
-
5
本当に安いPCで十分か? “すぐ重くなる”を防ぐノートPC選びの絶対条件
-
6
Claudeの不可視透かしに批判殺到 著作権消失や誤判定に潜む企業リスク
-
7
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
8
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
9
LLMの「過学習」、正しく説明している文章はどれ?
-
10
レガシー基幹システムをSAPに統合 山善が突き止めた「標準化と個別最適」の境界線
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー