クラウドの台頭に伴う運用体系の変化
クラウドの大問題“ベンダーロックイン”を企業が心配しなくなった理由
従来のシステム構築においてベンダーロックインは課題であったが、クラウドでの運用となると話が異なる。クラウド導入によるパフォーマンスの向上を最優先とし、あえてロックインのリスクを背負う企業も多い。
クラウドへの移行には数多くの課題と懸念がある一方で、「クラウドのベンダーロックインが問題である」という認識が企業の中でなくなりつつある。
従来のオンプレミスのデータセンターでハードウェアやソフトウェアを使用している場合でも、ベンダーロックインは企業にとって懸念事項の一つだった。これまでのベンダーロックインのシナリオは、毎年同じベンダーのハードウェア製品を購入することで該当ベンダーへの依存性が次第に高まり、結果として特定のプラットフォームから脱却することが難しくなってしまうと考えられてきた。
パブリッククラウドの台頭に伴い、企業はオンプレミスのハードウェアとソフトウェアへの依存を回避することが容易になった。だが、ベンダーロックインのリスクを完全に解消するまでには至らなかった。
調査会社451 Researchのアナリストであるカール・ブルックス氏は、「実際は主要なクラウドプラットフォームの挙動はそれぞれ異なっているため、あるクラウドを選択すると基本的にそのクラウドに依存することになる」と語る。
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オンプレミスでの運用も視野に入れる
ロックインへの懸念の減少
あるベンダーから別のベンダーに移行するには、多大なコストがかかる可能性がある。しかし、クラウドのベンダーロックインに関する企業の懸念は、以前ほど顕著ではなくなってきている。
調査会社International Dataのリサーチディレクターであるディーパック・モーハン氏は、「セキュリティの理解、スキルセット、パフォーマンスなどに関する懸念は見られるが、ロックインに関する懸念が上位にくることは多くない」と言う。企業は、クラウドが提供する最先端の技術を利用することと、企業としての機動力を重視することの代償としてベンダーロックインを受け入れている。例えば、企業がマルチクラウドを選択する理由について、ベンダーロックインに対する懸念を軽減するためという場合もある。だがそれと同時にさまざまなクラウドサービスと機能にアクセスするためという場合が少なくない。
モーハン氏は、「ベンダーロックインとマルチクラウドを切り離して考える必要がある。数年前はそれぞれが密に関連していたが、現在は状況が変わっている」と言う。
一部のマルチクラウドでは、機械学習やビッグデータなどAI(人工知能)に関連するクラウドサービスを利用できる場合がある。これらを利用することでクラウドのベンダーロックインに対するリスクが高まる可能性がある。企業がこれらの高度なサービスを利用すればするほど、特定のクラウドへの依存性が高くなる。DWH(データウェアハウス)の「Amazon Redshift」や機械学習サービスの「Google Cloud AI」などのサービスはベンダー固有のサービスであり、システム移行が困難になる恐れがある。だが、企業はこれらの技術を利用するリスクを受け入れている。
IT関連の情報を扱うAmalgam Insightsの創業者であるアナリストのハイナン・パーク氏は、「現時点では、高度なサービスに移行する企業にとっての最優先事項はパフォーマンスで優位に立ち、より早く市場に参入することだ。今のところ、先進サービスの導入に伴うベンダーロックインのリスクについて深くは考えていない」と語る。
クラウド間での移行に備える
企業がクラウドのベンダーロックインについてさほど懸念していないもう一つの理由は、自社のクラウドリソースとそれらが抱える要件をよく理解しているからだ。企業のITチームがクラウドの導入に習熟するにつれて「どのワークロードがクラウド間で移行しやすく、そのためにはどのような手法をとればよいか」ということを見極められるようになってきた、とモーハン氏は言う。
このクラウド間の移行を実現してベンダーロックインへの懸念をさらに低くするために、企業は利用する全てのクラウドサービスを完全に把握する必要がある。RightScale、CloudHeath Technologies、CloudCheckrなどの会社が提供するクラウド運用ツールでは、クラウド間にまたがるサービスを追跡し、コストとセキュリティ機能を監視できる。
幾つかの企業では、計画プロセスの早い段階で、クラウドのベンダーロックインに対するリスクの軽減を出口戦略としている。これはベンダーロックインを完全に解決するものではないが、方向性を事前に明確化するのに役立つ。
調査会者Gartnerの副社長ミンディー・カンシラ氏は「出口戦略を策定するということは、基本的には移行先のベンダーでアプリケーションを管理する戦略を立てるということだ。移行先として適切なベンダーを見つけ、そのアーキテクチャを理解する。その上で移行先のクラウドプラットフォームでアプリケーションの管理が必要だということを意味する」と述べている。
単一プロバイダーという選択肢
マルチクラウドが台頭する中で、あえて単一のベンダーを利用することを選択し、ベンダーロックインのリスクを受け入れる企業もある。このアプローチでは、単一のベンダーの技術とその特性さえ学べばよいというメリットがある。
企業が単一のベンダーと、そのサービスを使用する時間が長くなればなるほど、そのクラウド環境をさらに最適化するための専門知識が強化できるとカンシラ氏は言う。単一ベンダーのユーザーは、統合やセキュリティなど、マルチクラウドでは不可避の課題も回避できる。
ブルックス氏は「プラットフォームの課題に取り組む時間を減らし、その時間をアプリケーション開発とITサポートのために費やすことができる」と単一ベンダーを利用するメリットをまとめた。
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