業種や事業規模によって機能はさまざま
ERP製品選びに役立つユースケース9選、何を指標にすればいい?
ERPシステムを適切に選定するには、組織の規模や事業目標など、さまざまな要素を検討しなければならない。本稿では、検討要素の決定に役立つ9つのユースケースを紹介する。
ERPシステムを選定する最初の手順は、ERPシステムの導入が必要なのかどうかを判断することだ。企業においてERPシステムの導入が改善策になり得るのは、社内で利用する複数のデータやシステムの仕様に大きな差異がある、部門間のコミュニケーションが欠如している、運用上の非効率性やタイムラグが発生しているなどの問題がある場合だ。
企業がERPシステムの導入を検討するに当たって精査すべき要素はさまざまだ。ERPシステムの種類は多彩で、詳細にカスタマイズもできる。しかし選択肢に富んでいることが、逆に選択の決定を難しくしている。
ERPシステムを検討する前に、自社のサービスや製品、ITインフラ、事業目標などを認識しておくことが重要だ。それを踏まえて、ここでは自社の特性に合ったERPシステムの選定に役立つ一般的な9つのユースケースを紹介しよう。
1. 初期コストを心配せずにERPシステムを導入したい小規模企業
このケースに該当するのは、ERPシステム導入の目的として、業務プロセスを改善すること、複数のシステムを併用することで生じるコストやデータの不整合を解消すること、経営効率を向上させることなどを設定する小規模企業だ。
こうした小規模企業が選択しているのは、オンプレミスの業務システムを置き換えることが可能なクラウドベースのERPシステムだ。クラウドベースであれば自社のデータセンターでERPシステム用のハードウェアやソフトウェアのための設備投資をする必要がない。クラウドベースのERPシステムベンダーは、企業が月額のサブスクリプション型で利用できるERPシステム用のハードウェアとソフトウェアを用意している。
2. 業界固有の要件に合ったERPシステムを求める企業
食品業界や飲料業界など専門性の高い業界に属する企業は、業務に固有の条件に合うERPシステムを必要としている。
これらの企業が選択しているのは、自社が所属する業界向けにベンダーが開発したERPシステムだ。専門化したERPシステムを導入することで、企業はERPシステムを実際のビジネス環境に適合させる時間を短縮できる。こうした専門的なERPシステムは、対象となる業界では最善の選択となり得る。
3. 新たな子会社や遠隔地のオフィスを統合する必要がある大企業
大企業は、自社で運用する社内業務用のERPシステムをオンプレミスで保持している。しかし新たに海外支社を作る際や企業を買収する際は、それらの新たな拠点の統合が必要になる。こうした場合のERPシステムの選定には特別な配慮が必要だ。
こうした企業はERPシステムに対して2段階のアプローチを取る。このアプローチにおいては、オンプレミスで利用しているERPシステムと、そのシステムと統合可能なクラウドベースのERPシステムが用いられる。第一に、企業は海外などの新たな事業拠点で利用でき、オンプレミスのERPシステムとの互換性があるERPシステムを選ぶ。そして新拠点における業務はクラウドベースで開始する。親会社は将来的に、新拠点のERPシステムをオンプレミスのERPシステムに統合する必要があるが、当面はクラウドベースで運用するため時間に余裕ができる。この次のステップとして、企業は新拠点のERPシステムをオンプレミスのERPシステムに統合するのか、オンプレミスのERPシステムをクラウドベースに全面的に移行するのかを判断する。
4. 運用効率の向上とコスト削減が必要な製造業者
製造業の企業は製造プロセスを統合する必要がある。また組織の機能ごとに異なるシステムを使用することで生じるデータの食い違いを解消したり、ソフトウェアのライセンスコストを削減したりすることも必要だ。
こうした企業が、ERPシステムの導入により発注から納品まで一連のフローを追跡する機能を統合する場合、部品の調達や工数計画などを実施するMRP(資材所要量計画)の機能から着手する。その後、製造、出荷、配送、受注、支払いの処理まで、一連の流れを統合する。
5. プロジェクト単位の管理が必要な企業
顧客にサービスや製品を提供する際、全ての作業をプロジェクト別に分類して管理している企業は、プロジェクト単位で工程やリソース、コストを管理できるERPシステムを利用する。この場合、プロジェクトの初めから終わりまで、エンド・ツー・エンドで全工程を管理できる機能が求められる。こうした要件に適合するERPシステムは、スケジュール超過やリソースの制約についてチェックする機能も備えている。
6. ミスを減らす優れた連携機能を求めるサービス企業
専門サービスを提供する企業は、自社の財務、営業などの組織が適切に連携することを望んでいる。全員が同じデータを使用することで、業務上のミスを減らすことが目的だ。
こうした企業が選択するのは、人員リソースの利用状況やサービスで発生するコストを管理できる、サービス業向けのERPシステムだ。
7. 分析機能を必要とする中規模企業
ERPシステムで優れた分析機能を利用し、経営効率の改善につなげたいと望んでいる中規模企業がこのケースに該当する。
こうした企業は、ERPシステムにビジネスインテリジェンス(BI)のコンポーネントを追加する。これにより財務処理のフロー短縮、経理の精度向上、財務フローのモデル化やリスク査定といった分析機能を利用する。
こうした企業が選ぶのは、充実した財務管理機能一式を備えたERPシステムだ。
8. CRMシステムの機能強化を図る小規模企業
自社の営業やマーケティングの効率化を目的にCRM(顧客関係管理)システムを利用している小規模企業が、経理や経営に関連する機能を必要とする場合がこのケースに該当する。
こうした企業が選ぶのは、新規ビジネスの展開を支える機能があり、CRMシステムとの互換性があるERPシステムだ。
9. ERPシステムに柔軟性と拡張性を求める企業
このケースでは、まず企業はCRMや人材管理といった個別の機能に限定して追加できるコンポーネント型のERPシステムの導入に着手する。その後、必要な機能を備えたモジュールを追加する。コンポーネント型のERPシステムの中には、機能を拡張しやすいものと、そうでないものがある。
そのため全ての機能をすぐに必要としていなくても、ERPシステムの初期選定時には将来を見据えて拡張性を検討しておく必要がある。
ERPシステムの機能とユースケースは複雑であるため、実際の業務環境に適合せずERPシステムの導入が失敗に終わるリスクがある。そのため、適切なビジネスパートナーやベンダーを選ぶことも、ERPシステムの選択と同様に重要だ。
ERPシステムを選定する際は事業目標を見失わず、自社の事業構造とその機能の仕方を常に念頭に置き、それらに適合するERPシステムを選択できるように最大限尽力する必要がある。自社が必要とするERPシステムの機能だけでなく、オンプレミスで導入するか、全てをクラウドベースにするか、あるいは両者を組み合わせたハイブリッド構成にするかを検討しなければならない。そうすることで、ERPシステムの導入を成功に導くことができるだろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社MatrixFlow] 「物流リソース最適化」ガイド:人員・配車・傭車を出庫依頼の確定前に決めきる -
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
4
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
5
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
6
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
7
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
8
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
9
「結局使わなくなる」Microsoft 365 Copilotを半年で定着 キリンの3施策
-
10
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー