ラックスケールPCIeの落日?
「高価でも価値がある」PCIeがNVMe-oFに負けた理由とは
NVMe-oFの普及は目覚ましい。NVMe-oFプロトコルを採用したストレージシステムが増える中、ラックスケールのPCIeが衰退した理由を探ってみる。
わずか数年前、NVMe-oF(Nonvolatile Memory Express over Fabrics)が登場するまでは、データセンターがラックスケールのPCIe(Peripheral Component Interconnect Express)ファブリックを基盤にすると考えられていた。
PCIe向けのインタフェースとして「OcuLink」規格が整備され、半導体企業のBroadcomやIDTは商用PCIeチップをリリースした。その結果、DellやHP、その他のスタートアップ企業は、FPGA(製造後にプログラムが可能な集積回路)をプログラミングする必要も、もちろんASIC(特定用途向けに製造された集積回路)を設計する必要もなく、ラックスケールのシステムを構築できるようになった。
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外付けのPCIeで実現したかったもの
ストレージベンダーのNextIOとVirtenSysは、約10年前に外付けのPCIeを開発しようとしたが失敗した。これが成功していれば、さまざまな周辺機器を簡単に共有できただろう。例えば高価な数枚の10Gbpsイーサネットカード、ファイバーチャネル(FC)、ホストバスアダプター(HBA)、RAIDコントローラーなどだ。ディスクストレージやレーザープリンタなど「高価な周辺機器の共有」がネットワークを利用する大きなメリットだったためだ。
だが問題点もある。NextIOとVirtenSysの製品のコストが、全てのサーバにネットワークインタフェースカード(NIC)とHBAを搭載した場合と変わらないことだ。さらにはインタフェースを共有することで、帯域幅が2分の1または4分の1しか得られなくなってしまう。
DSSDの登場
そんな中、登場したのが半導体ベンダーのDSSDだ。同社はアンディ・ベクトルシャイム氏、ジェフ・ボンウィック氏、ビル・ムーア氏が主導していたが、2014年にEMC(現Dell EMC)に買収された。同社の取り組みはラック内のサーバ間でフラッシュを共有することだ。これはとても有望な考えのように見えた。当時のPCIe型SSDは、NICやHBAよりもはるかに高価だったが、それでも共有ストレージの価値は高かった。
DSSDが提供する仕組みはSSDを共有するだけではない。他のフラッシュアレイベンダーが約1ミリ秒の遅延時間を自慢していたときに、DSSDの仕組みは100マイクロ秒の遅延を実現していた。
だがDell EMCがDSSDの仕組みを最善の手段として売り込む中、Apeiron Data Systems、E8 Storage、Excelero、Mangstorなどのストレージのスタートアップ企業グループがネットワーク経由のNVMe(の実証に成功した。このシステムは75~80マイクロ秒程度の遅延を抑えられており、DSSDがイーサネット経由で提供する100マイクロ秒の遅延に匹敵する。
NVMe-oFの登場
2017年にDell EMCはNVMe-oFを発表し、DSSDを終わりにするという賢明な決定を下した。DSSDと比べても遅延に大差がなく、コストが5分の1に抑えられることからNVMeを選択する顧客が増え、高価なカスタムハードウェアとPCIeにコストを掛けようと考える顧客は少なくなった。
最近では、Dell EMC、NetApp、Pure Storage、Western Digitalなどのストレージ業界大手をはじめとして、前述のスタートアップ企業のほとんどがNVMe-oFプロトコルを採用したストレージシステムを出荷している。こうしたストレージシステムは、顧客が既に使用しているイーサネットやFCのネットワーク経由でも遅延を100マイクロ秒程度に抑える。こうしたシステムの多くは、ホストとストレージシステム間のフロントエンド側ストレージへのアクセスプロトコルとしてNVMe-oFを使用する。ストレージシステムと外部メディア間のバックエンド接続でもSASに代わるプロトコルと位置付けられている。
NVMe-oFが、ホストからアレイ、アレイから外部メディアへの通信の標準ストレージプロトコルになりつつある今、ラックスケールPCIeの居場所はあるのだろうか。それともラックスケールPCIeは現代に残らず、革新的なものから旧式のテクノロジーに成り下がってしまうのだろうか。
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