無償の自動作曲ツールも
AIによる作曲はゲームに新たな命を吹き込むのか?(2/2 ページ)
リアルタイム作曲が現実に
ドイツに拠点を置くMelodriveは、音楽をリアルタイムに作り出すエンジンの開発に取り組む設立間もない企業だ。同社はこのソフトウェアを、予算が限られている多くのインディーズのゲーム開発者に無料で提供する予定だ。
「ユーザーは、簡単に作り出せるなら音楽を作りたいと考えている」とMelodriveの共同創設者兼CEOのヴァレリオ・ヴェラルド氏は話す。
本稿執筆時点の2018年9月で、Melodoriveのエンジンはα版だ。ヴェラルド氏はこのエンジンで、人間の作曲家による工程を再現しようと試みている。
同社のエンジンは全て社内開発で作られている。このエンジンは機械学習を用い、音楽の大規模データベースを活用して、独創的な音楽を作り出すことを支援する。ヴェラルド氏によると、このエンジンは複数の「ハイレベルなシステム」を利用しているという。具体的には、楽譜のみを作成するシステム、楽譜に表情豊かな強弱を加えるシステム、「抽象的な楽譜を音で表現する」システムなどがある。
2018年9月時点で4つの音楽様式があり、各様式にはそれぞれ固有の音と楽器がある。このエンジンは合計100種類近くの楽器を呼び出すことが可能で、今後も楽器の種類と様式の数を増やす予定だとヴェラルド氏は話している。
実際にこのエンジンをゲームに組み込むことを考えると、「ゲーム内で自分のアバターを作成するのと同じ方向性になる可能性が高い。とはいえ、音楽をAIと共同で作り出せるという新たなレベルに進むことを想像してほしい」とヴェラルド氏は言う。
ゲーム開発者は懐疑的
Melodriveは、同社のWebサイトで無料デモを幾つか公開している。熟練の開発者で音楽家でもあるマット・シュグルー氏は同社のデモをダウンロードしてテストした。
ゲーム業界で26年の経験を持つベテランのシュグルー氏によると、MelodriveはAIが生み出した音楽をゲームに組み込む機能を備えているようだが、音楽のクオリティーはまだ標準にも満たないという。
「Melodriveのデモにはメロディーのバリエーションが4種類あるが、4つの音楽様式はいずれもパッとしない。同社の音楽クオリティーが、優秀なゲーム作曲家が作り出す音楽のレベルに達するまでの道のりは遠い」(シュグルー氏)
音楽に予算を割けないインディーズのゲーム開発者にとっては、Melodriveのソフトウェアが実際に無料で提供されるのであれば、それは「素晴らしいこと」だ。「ただし、少しでも予算があるのなら、開発者には『AudioJungle』や『Soundstripe』のような有償サイトにある数百ものメロディーから適切なものを選ぶという選択肢もある。そうすることで安価にライセンスを取得できる」とシュグルー氏は言う。
「優れた音楽はゲームに深みを持たせる。しかしただ音楽があるだけという状態や不適切な音楽が流れる状態ならば、ゲームの面白さは損なわれる。技術的立場から音楽を生み出すことは評価できるが、そうして生み出された音楽が、人の手によってゲーム用に作曲された音楽のクオリティーに匹敵することはないだろう」(シュグルー氏)
ゲーム業界でAIが作曲する音楽の利用が広がるかどうかを考えるのはまだ時期が早過ぎるようだ。だがジャーナリズムなどのクリエイティブな作業が既にAIによって改良され、完全に機械に委ねられているという現状もある。音楽業界が同じ道をたどるかどうかは時間が経てば分かるだろう。しかし現代のゲームでは他にも多くの要素がプロシージャル生成を用いて生み出されていることを考えると、音楽業界が同じ方向に進むという予測は無茶なこじつけとは思えない。
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