無償の自動作曲ツールも
AIによる作曲はゲームに新たな命を吹き込むのか?(1/2 ページ)
インディーズのゲーム開発者は、プロシージャル生成を活用してゲームにさまざまな要素を組み込んでいる。その世界にAIが生み出す音楽が加われば、活気に満ちた現実のような世界を作り出せるかもしれない。
2016年、ゲーム制作会社Hello Gamesは待望の探検ゲーム『No Man's Sky』をリリースした。このゲームには、高度な「プロシージャル生成」を用いて生み出された1800京個もの惑星が存在する宇宙空間がある。プロシージャル生成とは、手作業ではなくアルゴリズムを使って自動的にコンテンツを作成することで、ゲーム業界ではよく使用される用語だ。各惑星には異なる植物群や動物群が生息し、プレイヤーは固有の生物を捕獲したり、手なずけたりすることができる。
映像は確かに変わった。しかし、ロックグループ65daysofstaticによるゲームのサウンドトラックは変わらぬままだ。このサウンドトラックの評価は高いが、代わり映えがなく、AIが生み出す世界とはあまり調和しないように思える。このゲームに必要なのはAIがリアルタイムに作曲する音楽かもしれない。
AIが作曲した音楽の利用はここ数年で着実に増加しているものの、ゲーム業界を席巻するほどではない。ただ、変化の兆しは見える。
古いテクノロジー
AIが音楽を作曲するという考えも、それを支える技術も新しいものではない。2000年代の初め、著名な科学者スティーブン・ウルフラムは自動作曲ツール「WolframTones」を作成している。同氏は、質問応答システム「Wolfram Alpha」やプログラミング言語「Wolfram Language」を開発したことでもよく知られている。WolframTonesは、15種類の音楽様式のうちユーザーが選んだ様式に基づいて独自のメロディーを生み出す簡単なAIプログラムだ。このプログラムはオンラインで無料入手できるが、Wolfram Languageのデモの一つにすぎない。
AIが作曲した音楽が目指すのは“人間の作曲家の支援”
ゲームジャムイベント「Ludum Dare」は、開発者に2日間でゼロからゲームの作成を課すことでよく知られている。同イベントのサイトでは、WolframTonesを始めとしたゲーム音楽の生成ツールに関する投稿を扱うフォーラムが幾つかある。こうした投稿に見られたのが、WolframTonesを調整して反復を加えれば、苦境に陥っている開発者や予算の少ないインディーズの開発者でも音楽を生み出せるという考えだ。ただし、WolframTonesから最終的に得られる音楽は、恐らく「AIが作り出した音楽」という印象を与えてしまうような安っぽいものだろう。
これらの自動作曲ツールでは、ゲーム音楽としてふさわしい音楽をリアルタイムで都合よく生成できない。だがそれとは別に、こうしたツールには情緒が足りないという大きな問題がある。
AIを利用した作曲ツールの大半に欠けているのは人間的要素だといち早く指摘したのが、現在AIが生み出す音楽シーンでの成功を目指す企業の一社であるAiva Technologiesの共同創設者兼CEOのピエール・バルー氏だ。
創業2年目のAiva Technologiesは、今のところかなりの成功を収めている。同社のソフトウェアは、NVIDIAの展示会において幾つかの講演や製品発表向けの簡単な音楽を作るのに使用された。また、インディーズのゲーム制作会社Epic Starsによるモバイルとブラウザ向けの無料ゲーム「Pixelfield」のテーマを作曲する際にも利用された。しかしこれらのユースケースには難点がある。WolframTonesと同様、Aiva Technologiesのソフトウェアは、アイデアこそ与えてくれるものの、既に完成されて即使用可能な曲を与えてくれるとは限らない。
熟練の音楽家でもありプログラマーでもあるバルー氏によると、Aiva Technologiesのソフトウェアには、機械学習ツールを使用して作り出した何万もの楽譜を収容するデータベースが含まれているという。その目的は、顧客のニーズに基づいて多種多様な楽譜を組み立てるためだ。同ソフトウェアは音楽理論を用いて、バルー氏が言うところの「情緒的な音楽」を作り出すことができる。だが楽譜はピアノの譜面だけで構成されているため、結局のところ同氏が率いるチームは顧客にとって最適な楽譜を探し、それを調整し、さらには新たな楽器パートを加えなければならない。
「AIは情緒的な音楽を作り出すことにも優れる存在となったが、必ずしもユーザーの望んだ意味が込められた音楽を作り出せるとは限らない。AIは人間の作曲家の仕事を助け、その生活を楽にするために利用できるだろう」とバルー氏は言う。結局のところ、人間の作曲家が手を加えなければならない。
実際に楽譜通りの演奏と録音をするには、奏者の存在も不可欠だ。そのため、今のところAIがリアルタイムに音楽を作り出す可能性はない。例えばPixelfieldのテーマには、フルオーケストラがレコーディングに参加している。
それでもバルー氏は次のように考えている。「特にゲーム業界では、AIが作曲した音楽が将来大ブームになるだろう。単純に人間の作曲家にはゲーム音楽を作曲する時間がないということもあり、AIが作曲する必要が出てくる」
そのような未来はそれほど遠くないかもしれない。
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