ベンダー選びのポイントは?
サービスとしてのネットワーク「NaaS」でLAN、WAN、データセンターはどう変わる
「Network as a Service」(NaaS)によってネットワークインフラを設計する場合、LAN、WAN、データセンターのどこで採用するかによってその設計が異なる。それぞれの導入方法を解説する。
Software as a service(SaaS)、Platform as a Service(PaaS)、Infrastructure as a service(IaaS)の3つのアーキテクチャは、その概念がようやく理解されつつある。だがサービスとしてのネットワーク、「Network as a Service」(NaaS)のアーキテクチャについて理解できている人は多くない。
大まかに定義すれば、NaaSとはサードパーティーが提供、管理するデータ転送サービスの総称だ。NaaSによるネットワークインフラは、企業のWAN、LAN、データセンターなどに導入される。NaaSによるネットワーク設計にはさまざまな形式があり、目的も広範に及ぶが、このアーキテクチャによって得られる利点は他の「As a Service」に類似している。つまり、スケーラビリティの確保、設備投資(CapEx)から運用コスト(OpEx)への経費転換、インフラ管理業務の大幅な効率化などが期待できる。こうした利点を見込み、NaaSに対するニーズが高まっている。
本稿ではNaaSの一般的なユースケースを幾つか紹介しよう。同時に、企業のIT部門がどのようにして既存のITインフラをNaaSへ適切に移行できるのかについても解説しよう。
WAN向けのNaaS
企業はソフトウェアで定義したWAN、すなわちSD-WANを独自に構築、運用できる。だが現在は、企業で利用する全てのWAN接続の運用、管理をサードパーティーのSD-WANベンダーに外部委託することが一般的になりつつある。SD-WANベンダーは、自社が運用するクラウドネットワーク上で得た、アプリケーションを適切に管理するためのルーティングに関するインテリジェンス(知見)を顧客企業に提供する。SD-WANベンダーは、物理的なルーターまたは仮想化したSD-WAN用のルーターを、顧客の本社や支社におけるWANの接続点に設置し、ルーティングに関するインテリジェンスを顧客に提供する。SD-WANベンダーは顧客のWAN接続点にルーティング機能を配備した後、自社のクラウドから顧客のルーティングやトラフィックシェーピング(トラフィックを制御し、通信性能を最適化する)、セキュリティポリシーの管理などを実行する。
NaaSで得られるWANのもう一つの優れた機能は、「帯域幅オンデマンド」(BoD)だ。BoDにより、顧客は必要に応じてWAN接続の最大スループット(データ伝送速度)を上げたり下げたりできる。これによって企業は、データ伝送のために必要とする帯域幅が変化することに適切に対処できるようになる。SD-WANサービスの利用を開始する際、BoDの対象範囲や、スループットの変更をスケジュールに沿って適用するか、一定のしきい値を超えた場合に自動的に適用するかなどについて、顧客はSD-WANベンダーとの間であらかじめ定めておく。必要に応じて利用する帯域幅を拡張、縮小できる機能は、データ伝送の要件が頻繁に変化する企業にとっては非常に有用な機能だ。
LAN向けのNaaS
企業のLANに対する認識は、その他のITインフラとは異なる。アプリケーションやデータは遠隔のデータセンターに容易に格納できるが、LANはオフィスのオンプレミス環境に設置する特性があるためだ。企業はLANを構成するために、ネットワークスイッチ、無線LANのアクセスポイント、ルーターといったネットワーク機器をオンプレミス環境に設置する。NaaSがそのさまざまな形式の中でも非常に物理的な形式となるのは、インターネットやWAN、クラウドリソースとの接続点を持つLANにおいてである。
NaaSが普及するにつれ、ネットワークベンダーが提供するサービスは、マネージドサービスプロバイダー(MSP)のサービスモデルに近づきつつある。このMSPのサービスモデルでは、エンドユーザーである企業は、LAN構築に用いる装置を購入するか、リースするかを選択する。いずれを選んだにしても、その装置はエンドユーザーである企業のオフィス内に設置される。設置後、利用するポート番号の変更、トラブルシューティング、ファームウェアの更新、セキュリティパッチの適用といった標準的な保守作業を含め、LANの運用、管理に関する全てをネットワークベンダーが実施する。
こうしたMSPのサービスモデルにおいて、ネットワークベンダーはLANや無線LANをソフトウェア定義によって管理する技術と、クラウド上のネットワーク機器を組み合わせ、管理業務を効率化する。
データセンター向けのNaaS
プライベートデータセンターにおけるNaaSは、パブリッククラウドであるIaaSにおけるサービスに類似している。仮想スイッチ、ロードバランサー、ファイアウォールなど、仮想ネットワークを構成するために必要なアプライアンスをサードパーティーのMSPが導入する。MSPはリモートでこれらのアプライアンスを管理、監視し、有償でエンドユーザーにその機能を提供する。
企業が所有している既存のハードウェアにNaaSを導入できる場合もあるが、そうでない場合は、SD-WANベンダーが用意するオープンソースまたは専用の機器を使ってNaaSを導入する。いずれの場合でも、複雑さを増し続ける自社のデータセンター内のネットワークインフラ管理から、IT担当者は解放される。
NaaSによるネットワークインフラ設計の基礎
1社または複数社のNaaSベンダーが自社のニーズを満たせると判断したら、次にすべきことは具体的にどのような導入方法が可能かを評価することだ。例えば、NaaSを導入する第一の目的が地理的に分散したWANのオフロードにあるなら、評判の高い大手のSD-WANベンダーやBoDベンダーを選ぶとよいだろう。大手ベンダーは、世界中に広がる企業のリモートサイトに対してサービス提供し、運用する能力に優れているためだ。また、複数拠点分をまとめて購入することでWAN回線の費用を安く抑えることもでき、コスト削減という形でメリットを引き出せる。
中小企業でLANをNaaSに切り替えることを検討しているならば、トラブルが発生した際、すぐに現場に来てくれる近隣拠点のベンダーを希望することもあるだろう。
どのようなハードウェアとソフトウェアを導入するかについても評価しなければならない。専用ベンダーあるいは単一ベンダーにするか、オープンソースを利用するかという問題はよく議論になる。これはネットワークインフラの設計プロジェクトでは避けられない問題だ。どちらにもメリットとデメリットがある。結局のところ、ベンダーが何を好むのか、自社固有のツールとの連携機能と連携によって得られる利点、各製品間の価格差、などに判断が左右される。
最後に、NaaSへの移行プロセスを社内でどう進めるのかについて検討する必要がある。当然、従業員への影響は少なければ少ないほど良い。1回の移行作業で全て切り替えるのか、段階的に切り替えるのかは、移行タイミングや、NaaSによるアーキテクチャをどの程度まで既存のレガシーネットワークに統合できるのか、といった要素に左右される。ここでもベンダーの好みや、そのベンダーが提供するNaaS製品の特徴が判断材料になる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社MatrixFlow] 「物流リソース最適化」ガイド:人員・配車・傭車を出庫依頼の確定前に決めきる -
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
4
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
5
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
6
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
7
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
8
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
9
「結局使わなくなる」Microsoft 365 Copilotを半年で定着 キリンの3施策
-
10
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー