「採用はAIに任せる時代」は誇大広告か
「人事の自動化」6大トレンド 人事業務はbotやAIにどこまで置き換わるのか
価格の低下や技術の向上が後押しとなり、人事の業務に自動化技術を採用するシーンが増えている。ソフトウェアbotやチャットbotがどのように活用され、人事の働き方はどのように変化しているのか。
人事担当者にとって、自動化プロセスの選択肢はかつてなく増えた。ソフトウェアbotがルーティン業務を担うようになり、チャットbotは採用担当者の仕事を補助している。
その選択肢は増加の一途にあり、2019年は「人事の自動化」が組織にとって筆頭の話題になりそうだ。だが大きな疑問もある。人事の自動化は雇用の削減につながるのか。それとも退屈な作業を機械に任せて負担を軽減することで、仕事をもっと面白くすることができるのか。自動化によって一部の職がなくなる可能性は裏付けられているものの、その研究は確固たる結論とは程遠い。
人事の自動化にまつわる刺激的な宣伝も含みつつ、人事のプロが目を向けるべき6大トレンドを紹介する。
1.2019年の人事スタッフは増加か、減少か
プロフェッショナルサービスファームのKPMGが、世界の人事担当幹部1200人を対象に実施した調査では「人工知能(AI)によって創出される仕事よりも、なくなる仕事の方が多い」という回答が60%と半数以上を占めた。
それでも「The future of HR 2019: In the Know or in the No」と題したこの報告書では、人事担当幹部の88%が「AIは投資する価値がある」と答えていた。
経営コンサルティング企業Hackett Groupによると、年商10億ドルを超す大企業や優良企業の中には、自動化技術を使って人事スタッフを減らしている組織もある。
Hackettがこのほど実施した調査では、業績トップの人事部門は従業員数が32%少ないことが分かった。これは自動化技術をうまく活用していることによる。ただしこれは人事部門のエリートグループであり、調査対象に占める割合は10%程度にすぎない。
2.人事に浸透するソフトウェアbot
人事部門の仕事はソフトウェアbotに取って代わられつつある。そうした人事自動化ツールは、従業員の住所の更新や給与プロセスの管理といった処理的な業務をこなす設計になっており、スクリプトに従ってルーティン業務を片付ける。
だがAIのおかげで、botはさらに高度になっている。もっと複雑な業務もこなせるほど能力が高まるかもしれない。その人気の一因は、ロボティックプロセスオートメーション(RPA)と呼ばれる技術のコストが下がっていることにあるのかもしれない。
Forrester Researchの推計によると、botは3万ドル足らずで構築でき、毎回のメンテナンス料金はその半分程度で済む。RPAツールを採用しているのは会計と人事部門が筆頭で、これによって企業の労働時間は数千時間も削減できる。その結果、人事担当者にもっとやりがいのある仕事を割り当てられることもあれば、雇用が失われる場合もある。
ITコンサルティング企業Gartnerと、コンサルティングおよびアウトソーシングを手掛けるAuxisの予想では、RPA市場は拡大の一途をたどる見通しだ。Auxisの調査では、全組織の71%がRPAツールを検討していることが分かった。Gartnerによると、世界のRPAツール市場は15億ドルの規模があり、毎年50%成長している。
3.チャットbotを使った採用の拡大
チャットbotシステムは、企業の人材募集サイトで求職者の基本的な質問に答えるために使われている。チャットbotはテキストを使って求職者と会話できる。そうした導入事例でも多くの場合、まだ音声には対応していない。だが2019年にはその状況が変わり始めるかもしれない。
採用担当者は今、AIを使ったシステムがいずれ自分たちに取って代わるのかどうかを問い掛けている。大手化粧品メーカーL'Orealは、人事チャットbotシステムを導入した時点で、その問題に直面した。
L'Orealは採用担当者を入れ替えるのではなく、世界で同社の求人に応募する200万人にとってより良い体験を創出することによって、採用担当者の効率を高めたいと考えた。同社は年間約5000人を採用している。
バイヤー向けビジネスソフトウェアアドバイザー企業Capterraの上級人事・人材管理アナリスト、ブライアン・ウェストフォール氏によると、採用チャットbotはまだ未成熟だが、「会社の在宅勤務ポリシーは?」といったより複雑な質問も、うまく処理できるようになりつつある。
さらに、チャットbotは「会話の切り替えの処理」も上達しているとウェストフォール氏は言う。「もしも求職者が突然、必要とされるスキルに関する質問から離れて、例えば給与について尋ねても、botは途切れない」
4.エンゲージメント調査の利用減少
Gartnerによると、年次のエンゲージメント調査(従業員の仕事や会社に対する満足度や幸福感を尋ねる意識調査)は2019年も着実に減り続けるという。同社の予想では、年次調査を取り入れる企業は2015年の90%から、2019年は74%に減る見通しだ。2020年までにはこうしたエンゲージメントツールを使う組織はわずか63%になるとGartnerは予想している。
年次調査については、完了までに何カ月もかかり、あまりにも後ろ向き過ぎるという批判がある。一方で推進派は、同調査では年ごとに比較したデータが得られると指摘する。
年次調査は、もっと短期的な調査やパルス調査(簡易的な調査を短期間に繰り返し実施する調査手法のこと)、従業員の行動追跡といった別の手法に入れ替えられつつある。短期調査を支持する層は「その方が早く結果を出すことができ、経営者が反応しやすい」と話している。
他にも、従業員のIDバッジデータを分析できるようなツールの人気も高まるかもしれない。もし従業員の退社が早くなり、出社が遅くなっていれば、エンゲージメントが低下している兆候かもしれない。そうしたデータは人事部門が積極的に手を打つチャンスを与えてくれるかもしれない。
カナダの人事アドバイザー企業Morneau Shepellの報告書「Human Resources Trends for 2019」では、従業員のエンゲージメント向上を人事にとっての最優先課題と位置付けた。356組織を対象としたこの調査では、回答者の67%がこれを課題に挙げている。
5.仮想現実(VR)の利用
仮想現実(VR)を使った従業員研修は普及が進み、主流へと向かっている。今のところ、VR技術の開発は高額だが、Walmartのように投資を拡大できる企業はこれを有効活用している。
Walmartは青果売り場の業務からブラックフライデーの買い物客への対応まで、あらゆる従業員研修にVRを使っている。同社によると、VRによって認定試験の点数が上がり、研修の未来はVRにあると確信するに至ったという。Walmartの上級デジタル業務ディレクター、ブロック・マッキール氏は「実生活は二次元ではない」と語った。
VRのコストは低下する見通しで、VR対応の研修資料も増加が見込まれる。
6.政治的になる従業員エクスペリエンス
コンサルティング会社Forresterは、恐らくは予想外の従業員エクスペリエンス(従業員の体験)を予測している。同社によると、政府や所属コミュニティーの起源といった「従来型の信用機構」が崩壊する中で、従業員は「企業に対して社会的責任という重責を負うことを求めるようになる」。
特に、優秀な人材を獲得しようとする企業は、例えば人種の不平等のような社会的問題と向き合う姿勢を示さなければならないかもしれない。こうした情報が、採用担当者の説明に盛り込まれるようになる可能性もある。
Forresterはその一例としてNikeを挙げる。全米向けの宣伝キャンペーンで、NikeはプロアメリカンフットボールリーグNFLのクオーターバックだったコリン・キャパニック元選手を登場させた。キャパニック元選手は2016年、国歌斉唱中に片膝をつき、論議を巻き起こした人物だ(編注:同氏はアフリカ系米国人に対する警察の暴力に抗議するために、国歌斉唱中に起立を拒否した)。「信念を持て。たとえ全てを犠牲にしても」。それがNikeのメッセージだった。
この宣伝キャンペーンに腹を立てたドナルド・トランプ大統領は、「Nikeは何を考えているんだ?」とツイートした。だがそれはNikeの戦略であり、Nikeの売り上げが急増したのはこのおかげだった。
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