売り上げは数百万ドル
化粧品会社の人事採用チャットbotが救ったのは「17%の既存顧客」
化粧品会社L'Orealでは、年間求人応募数が200万人に上る。145人の採用担当者で対応しているが、さらなる効率化のために人材採用プロセスを補助するチャットbotを導入した。
化粧品会社L'Orealは求人応募者への対応を改善するために人材採用チャットbotを導入した。この人事部門向けAI(人工知能)技術の導入を実現するに当たり、同社のグローバル人事部門の最高デジタル責任者ニーレシュ・ボーイテ氏はまず、投資効果を経営陣に上申するためのビジネスケースを作成しなければならなかった。さらに「このチャットbotを導入したら仕事がなくなるのではないか」という採用担当者たちの不安も払拭(ふっしょく)する必要があった。ボーイテ氏はこの2つの難題をどう解決したのか。
L'Orealの求人に応募する人は年間約200万人、そのうち採用されるのは約5000人だ。ところがソーシャルメディアへの書き込みを調べると「応募したのに同社から何の返事もなかった」という声が出ていることが分かった。そこで「応募者も顧客だ」という発想で対応を改善し、145人の採用担当者の業務を効率化することに決めた。まず本当に「応募者も顧客」なのか検証することから取り掛かった。HRテクノロジーのイベント「HR Tech Conference & Expo 2018」でのインタビューとプレゼンテーションで、ボーイテ氏は同社の取り組みを紹介した。
併せて読みたいお薦め記事
チャットbotは人間の仕事を奪うのか
チャットbotを支える技術
売り上げ増加にもつながる人材採用チャットbotの潜在的効果
AIの投資効果を説明するビジネスケースを作成するために、ボーイテ氏は英国内の求人応募者の電子メールアドレスと、同社の各種ブランドの顧客関係管理(CRM)データベースを照合した。
照合の結果、応募者の17%が既に登録顧客だった。次に、CRMデータベースと売り上げデータベースを相互参照したところ、英国内のこうした応募者たちからの売り上げが年間260万ドル以上に達していることが分かった。やはり応募者への対応を改善し、同社と同社の技術力に好印象を持ってもらうことが必要だったのだ。ボーイテ氏はこの動かぬデータを基に、人事向けAIの導入について経営陣の合意を得ることができた。例えば、ある求人に応募してきた人に、条件の合いそうな別の求人も勧めたり、応募者の情報を分類しやすくなったりすることも大きな投資誘因となった。
一方、チャットbotを導入したら採用担当者の人員が削減されるのではないかという懸念が浮上した。そこで同社は、このチャットbotは採用担当者の代わりとなるものではなく、その業務を補うためのものだと説明し、採用担当者たちの不安を払拭した。
「人材採用プロセスの要となるのはやはり採用担当者たちであり、それは今後も変わらないと私たちは確信している」とボーイテ氏は語った。
カスタマイズ性を重視
L'Orealが採用したチャットbotは、独自の対話型AI技術を開発しているMya Systemsによるものだ。人事向けAI技術ベンダーの中には、GoogleやIBM、Microsoftなどのチャットbot技術を利用している会社もある。だが、Mya Systemsは他社が開発したシステムの商用ライセンスを利用するより、独自のAIチャットbotプラットフォームを開発することを選んだ。同社が開発した対話型AIシステムは人材採用専用に作られている。同社の共同創業者でCEOのエヤル・グレイェフスキ氏はそう語る。
ボーイテ氏によると、L'Orealがこのような小さなベンダーの人事向けAIを採用することにしたのは「これくらいの規模の方がずっとオープンでフレキシブルにサービスを設計できる」からだという。
同社の開発したチャットbot「Mya」は応募者からの質問に回答できるだけでなく、そのチャット記録を求人応募者追跡システムに組み込むことができる。さらに、特定の国での就業能力といった固定的な条件に照らし合わせて応募者を審査し、タグ付けする。Myaによるこうした事前審査とタグ付けにより、採用担当者は時間を節約でき、条件に適合する可能性の高い応募者に絞り込んで審査を進められる。Myaによる事前審査は、業務への適性が高い人材のリストを提供し、採用担当者の業務効率を高めている、とボーイテ氏は語った。
L'Orealが活用している人材採用チャットbotでは、複数言語への対応が進んでいる。まず英語版から始まり、今はフランス語への対応を進めている。その次はドイツ語とスペイン語で、2019年初めには中国語に対応する予定だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[LRM株式会社] 「標的型攻撃メール」事例・サンプル集 -
製品資料
[LRM株式会社] セキュリティ教育はなぜ「年間計画」を立てる必要があるのか? -
製品資料
[LRM株式会社] セキュリティの重要性が伝わらない…… 効果がない社員教育から脱却する方法 -
製品資料
[LRM株式会社] 「標的型攻撃メール訓練」導入ガイド 社員の意識を確実に高める仕組みの作り方 -
事例
[株式会社マクニカ] アイカ工業に学ぶ脆弱性対策 情シスが把握できずにいたアセットも正確に把握
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「VMware離れ」は本当か 3000社がVCF 9にかじを切った現実的な理由
-
2
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
3
Oracle巨大ITプロジェクトはなぜつまずいたのか 8年で導入1割、追加で170億ドル
-
4
Microsoft製品でここまで自動化できる 情シスがやめられる手作業10選
-
5
「Microsoft 365」が乗っ取られる 跡形もなくMFAを破る手口
-
6
エンジニアが選考を辞退する本当の理由 7割が隠す“面接の違和感”とは
-
7
Netflixのバックエンドは「ほぼJava」 3000超のアプリを支える開発基盤の裏側
-
8
ISMSの“コンサル丸投げ”が招く数千万円の無駄 NTTドコモビジネスの脱出劇
-
9
AI基盤は本当に「オンプレ回帰」する? Broadcomの言い分と企業の本音
-
10
生成AIの7割が「別画面・コピペ運用」 “導入”は進んでも定着せず
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
生成AIのハルシネーションを防止 回答精度を高めるセマンティックレイヤーとは
-
2
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
3
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
4
AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
-
5
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
6
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
-
7
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
8
マンガで解説:「ゼロトラスト」「SASE」の必要性とメリット
-
9
5分で分かる「セキュア大容量ファイル転送サービス」の機能とメリット
-
10
情報セキュリティ対策早分かりガイド:25の自社診断で弱点と解決策を理解
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー