Web出願システムから「UCARO」へ
青山学院大学が「出願から入学手続きまで丸ごとIT化」した理由(2/2 ページ)
入試業務の効率化で職員が本来の業務に注力可能に
UCAROの導入により、既に業務効率化の効果が表れている。
入試担当者はUCAROを通じて、出願から受験、入学手続きに至るまでの一連の予定がいつでも確認できるようになった。受験票もWebを通じて提供する方式に変えたため、「受験票はいつ送られてくるのか」「どの会場で受ければいいのか」といった受験生からの問い合わせは、UCARO導入後は「明らかに減りました」と鈴木氏は説明する。ODKが提供する、電話による問い合わせ対応サービスも併せて利用。仮に問い合わせがあった場合でも、大学側の負荷がなるべく発生しないようにした。
「職員が本来の業務に注力できるようになったことが大きい」と、鈴木氏はUCAROの導入効果を語る。UCARO導入後は「各自の本来の担当業務に、より集中して取り組めるようになりました」と同氏は語る。
受験会場への誘導や入学手続き案内に活用 紙の書類を削減
UCAROを導入してからは、お気に入り登録してくれた受験生に対して、箱根駅伝開催のタイミングでメッセージを送るなど「積極的に本校の魅力をアピールできるようになりました」と鈴木氏は説明する(画面2)。メッセージと合わせて大学の公式サイトに掲載している紹介動画を案内し、志望校を選ぶ段階で受験生に青山学院大学の学びについて深く理解してもらうことで、入学後のミスマッチを防ぐことを狙う(画面3)。
入試業務のあらゆるフェーズで、受験生に対してきめ細かなフォローができるようになったことも、UCAROのメッセージ発信機能のメリットだと鈴木氏は語る。例えば大学側から受験生側に、あらかじめ会場までの地図や会場見取り図などを送付したり、試験日当日に公共交通機関の運行状況を知らせたりできるようになった。受験生が受験会場まで確実かつ時刻通りにたどり着けるようにする配慮だ。
住所や試験会場などを基に受験生をグループに分けて、各グループに対してメッセージの送信条件を設定できる点も評価する。例えば「この会場で受験する受験者に対してのみ、このメッセージを送る」といった情報の出し分けがしやすくなった。
無事試験に合格して入学の手続きをする受験生(入学手続き者)に対しても、UCAROのメッセージ発信機能を通じて各種手続きのやりとりや案内ができる。青山学院大学は可能な限り無駄な書類を減らし、なるべく多くの情報をUCAROに集約して参照できるようにしている。これまで紙で郵送していた各種パンフレットや書類を電子化して、UCAROで参照できるようにしたのも、その一環だ。
書類の削減は、当然ながら書類の作成や郵送に掛かる費用の削減にもつながる。青山学院大学は具体的な削減金額を明らかにしていないが、これまで3万人以上の出願者に対して受験票や合格通知を郵送したり、合格発表後に希望する不合格者に対して成績開示資料を郵送したりしていた作業が、一切不要になった。「郵送作業にかかる人手とコストを大幅に削減できたとともに、書類が届かないトラブルの心配もなくなった」と鈴木氏は語る。
今後は「保護者にとっての利便性」が重要に
現時点ではシステムの安定性やパフォーマンスの面で、UCAROに特に目立った課題はなく、機能面でも不便は感じていないと鈴木氏は説明する。同氏が改善要望として挙げるのは、受験性の保護者にとっての利便性向上につながる機能の充実だ。
青山学院大学はUCAROの運用を始めてしばらくたったころ、UCAROのエンドユーザーの中に、受験生の保護者が相当数含まれていることに気付いたという。「受験料や授業料を実際に支払うのは保護者。今の受験生の世代はスマートフォンアプリの操作に慣れていますが、その親の世代の中には不得手な方も少なくありません」
鈴木氏が何よりも期待するのは、UCAROを利用する大学がもっと増えることだ。参加校が増えれば増えるほど、受験生にとっての利便性は高まる。「もっと使う人にとって便利なシステムに育っていってほしいと考えています」
ITを大学と社会との橋渡しに
青山学院大学は現在、UCARO以外にもITを活用したさまざまな入試施策を検討している。特に高大接続改革を進める上でのITの役割には「大いに期待しています」と鈴木氏は述べる。新たな学習指導要領で学んできた世代が、2021年には新たな入試制度の下で大学に入ってくることになる。「これからの入試業務を考える上では、単に大学入試そのものだけでなく、高校と大学、そして大学と社会をいかに橋渡しできるかという視点が欠かせません」
学生が社会に出たときに、自分をきちんと評価してもらえる。小学校から大学に至るまで、それまで学んできたことを社会にきちんと受け止めてもらえる――。「今後はこうしたシステムが必要になってくる」と鈴木氏は強調する。その上で「注目に値する仕組み」だと同氏が評価するのが、学習者の活動内容をデータとして蓄積する「eポートフォリオ」だ。ただし「これからは単に仕組みを作るだけでなく、それをいかに使いこなすかを真剣に考えていく必要があります」と言い添える。
今回新たに導入したUCAROをはじめとする、受験業務を効率化するためのITの仕組みについても「まだどの大学も取り組みを始めたばかりですが、今後同様のシステムに多くの大学が参画することで、受験者と大学の双方によりメリットが出てくることでしょう」と今後の展開に期待をにじませる。
執筆者紹介
吉村哲樹(よしむら・てつき)
システムインテグレーター(SIer)とパッケージソフトウェアベンダーでエンジニアとして働いた後、IT系Webメディアで編集記者を務める。現在は独立して、フリーライターとして活動中。
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