新人IT担当者でも分かるITトレンド
クラウドDWH(データウェアハウス)は今までのDWHと何が違うのか?
Googleの「BigQuery」やAWSの「Redshift」などの「クラウドDWH」が充実しつつある。クラウドDWHには、オンプレミスのDWHと比べてどのような特徴があるのだろうか。
クラウドサービスベンダーの間で、データウェアハウス(DWH)の機能をクラウドサービスにした「クラウドDWH」を提供する動きが広がっている。クラウドDWHはオンプレミスのDWHとは異なり、導入時のインフラ構築を不要にしたことが大きな特徴だ。
選択肢が豊富になりつつあるクラウドDWHについて、アクセンチュアのデジタルコンサルティング本部でマネジング・ディレクターを務める三原 哲氏の話を基に解説する。
本題に入る前にあらためてDWHの説明をしておこう。DWHとは、複数のシステムから収集したデータを保持するデータ保管システムだ。データの管理構造を事前に定義した「構造化データ」の扱いに長けている。複数のシステムのデータを収集・変換して一元的に扱えるようにする「データ統合」の処理を通じて、データを分析や活用の目的で蓄積できる。データ統合の代表例な手段に「ETL」(Extract、Transform、Load)ツールがある。
主要なDWH製品は、取り込んだデータを複数のサーバやストレージに分散させて処理する「超並列処理」(MPP)技術をはじめ、データの大量取り込みと大量処理をしやすくする仕組みを盛り込んでいる。オンプレミスDWHのインフラ構築には、サーバやストレージ、ネットワーク機器といったハードウェアに加え、大量のデータのやりとりに特化したデータベース管理システム(DBMS)を準備する必要がある。
クラウドDWHの仕組みとメリット
クラウドDWHの物理インフラは、オンプレミスのDWHと基本的に同じで、データの蓄積工程にも目に見える違いはない(図1)。エンドユーザーはクラウドDWHのインフラに、インターネットを介して接続できる。ユーザー企業が物理的なインフラを構築する必要がなく、Webブラウザで管理コンソールを起動すればすぐに利用できるところが、クラウドDWHの強みだ。
Amazon Web Servicesの「Amazon Redshift」やMicrosoftの「Azure SQL Data Warehouse」、Googleの「BigQuery」といった主要なクラウドDWHは、基本的に初期導入費用を設けていない。課金体系はデータの処理性能やデータの保存量、処理量に応じた従量課金制が一般的だ。
オンプレミスDWHの導入には物理インフラの構築が必要で、アプライアンスであれば数億円以上かかることがある。償却期間も考える必要があり、導入する際におよそ5年以上使うことを前提としたインフラの構築をしなければならない。このため「インフラ構築に半年くらいかかり、スモールスタートがしにくいことや、拡張しづらいことが難点だった」と三原氏は説明する。
社内外とのシステム連携が容易に
クラウドDWHはオンプレミスDWHと比べて「システム連携のハードルが低くなる傾向がある」と三原氏は説明する。複数の企業が公開するAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)を活用する動きが広がるなど、企業のビジネスは一社のシステムだけで完結しなくなりつつある。そこでクラウドサービスでの提供やAPIの公開といったクラウドDWHの特徴が生きる。
オンプレミスDWHの場合、DWH内のデータを社外のシステムとの間でやりとりする際、他社に社内システムへのアクセスを許可することになる。その際は適切なセキュリティ対策が必要になるだけでなく、セキュリティポリシーで社外システムとの連携を禁止している企業もあるだろう。クラウドDWHはそもそも社外システムであり、APIを提供していることが一般的だ。そのためクラウドDWH自体の利用さえ問題なければ、他の社外システムとの連携が比較的実現しやすい(図2)。
クラウドDWHの用途
三原氏は、クラウドDWHに向いているデータとして、活用の目的が明確ではなく、それほど量が多くないデータを挙げる。クラウドDWHであれば、自前でのインフラ構築が必要ないため、分析したいときに契約して、すぐに試験運用ができる。将来的に扱うデータが増大した場合に備えて、自前で膨大なリソースを確保しておく必要もない。
他のクラウドサービスとデータ連携させたいときも、クラウドDWHが効果を発揮する。前述の通り、クラウドDWHは一般的にAPIを用意している。APIを活用すれば、ビジネスインテリジェンス(BI)や顧客関係管理(CRM)といった他のクラウドサービスとのデータ連携が容易にできる。
クラウドDWHが抱える現状の課題
現時点でのクラウドDWHのデメリットとして三原氏は、場合によってはスループット(単位時間当たりのデータ転送量)やレスポンスタイム(応答時間)といったI/O性能が、オンプレミスDWHと比べて低くなりやすいことを挙げる。クラウドDWHは複数のユーザー企業がインフラを共有するため、場合によってはクラウドDWHのインフラに膨大な量のデータが流れる可能性がある。こうした状況でもサービスを止めないようにするには、クラウドDWHのインフラに流れるデータ量を制限せざるを得なくなる。これが低いI/O性能の要因になり得ると同氏は説明する。
クラウドDWHでオンプレミスDWHと同様の構成を組んで運用しても、前述のような原因から、オンプレミスDWHと同等の性能が担保できないことがある。場合によっては「I/O性能が10分の1になってしまうこともある」と三原氏は言う。そのためオンプレミスDWHを想定して必要な性能を見積もった場合、クラウドDWHで同等の性能を出すには、想定以上にコストがかかる可能性がある。オンプレミスDWHからクラウドDWHへ移行する際は、クラウドDWHの特性を理解し、メモリの容量を見直したり、流すデータの種類を絞り込んだりして、DWHのI/O性能の問題を回避しなければならない。
セキュリティ面の課題もある。機密性の高いデータの場合、データセンターの所在地やベンダーが提供するセキュリティ対策の内容によっては、クラウドDWHではユーザー企業の求めるセキュリティの条件が満たせない場合がある点にも注意が必要だ。
クラウドDWHの選定ポイント
クラウドDWHを選定する際は、CPUやメモリ、ストレージといったDWHのリソースを増減する際の自由度に注意する必要がある。リソースの増強は容易だが縮小には制限を設けているクラウドDWHもあり、期間限定のプロモーションなどで一時的に多くのリソースを利用する場合は注意する必要がある。
リソースの増減が比較的容易なクラウドDWHには、MicrosoftのSQL Data WarehouseやSnowflake Computingの「Snowflake」がある。GoogleのBigQueryは処理するデータ量に応じた料金であり、ユーザー企業側でリソースの拡大や縮小を意識する必要がない。同時に実行できるクエリの数にも留意しなければならない。例えばSQL Data WarehouseやRedshiftには制限があるが、特に制限を設けていないクラウドDWHもある。
企業の間では現在、機密性が高いデータや性能要求が厳しいデータをオンプレミスDWHに、少量のデータや社外サービスと連携させたいデータをクラウドDWHに保管するという、ハイブリッドDWH環境を選択する傾向がある。オンプレミスのDWHを導入する前に、クラウドでDWHを試験運用する使い方もできる。「用途に応じてクラウドDWHもオンプレミスDWHも含めた、複数のDWHの組み合わせを考える必要がある」(三原氏)
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ITの分野では絶え間なく新技術が登場し、今までにない製品分野が生まれ続けている。こうした新たな製品分野は何を可能にするのか。どのようなメリットがあるのか。新人IT担当者に向けて分かりやすく解説する。
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