なりすましメールを判別
「文章の癖」を学ぶAIでビジネスメール詐欺(BEC)防止 トレンドマイクロ
トレンドマイクロは、AI技術を使ったビジネスメール詐欺(BEC)対策技術「Writing Style DNA」を発表した。メール作成者の文章における癖を学習し、なりすましの疑いが強いメールを検出する。
トレンドマイクロは2019年1月29日、ビジネスメール詐欺(BEC)対策の新技術「Writing Style DNA」(図1)を発表した。なりすまし対象となる企業幹部の文章の癖をAI(人工知能)技術で分析し、特徴を学習する。受信メールの特徴と、差出人になっている企業幹部本人の文章に現れる特徴を照合し、詐欺の可能性が高いメールを判別する。2019年2月15日に、同社のクラウドアプリケーション用セキュリティサービス「Trend Micro Cloud App Security」(以下Cloud App Security)に同技術を用いた新機能を組み込む。
書き方の癖を学ぶAI
ビジネスメール詐欺は、企業の幹部層や取引先を装ったメールを送信し、金銭や機密情報を要求するサイバー犯罪だ。「詐欺メールの送信元アドレスや件名には不審な点がない場合も多い。そうしたメールは内容を見るまでは有害なメールかどうか分からないため、これを判断する技術が重要だ」。トレンドマイクロ担当者の宮崎 謙太郎氏は、Writing Style DNAの必要性をこう説明する。
Writing Style DNAは、なりすましの対象とされやすい企業幹部層のメール本文をAI技術で分析し、ビジネスメール詐欺の検知に役立てる(図2)。英文の場合、およそ500~800通のメールを教師データとし、文章の長さや空白行の使い方など約7000種類の特徴量をAIが算出。作成した文章特徴モデルを受信メールが示す特徴量と照合し、一致しないと判断した場合、ビジネスメール詐欺の可能性があるという警告付きメールを受信者や管理者に送信する。同時になりすまされた本人にもメールが届き、なりすましメールかどうかの確認を取ることで、AIエンジンの分析精度向上に生かす。
トレンドマイクロはWriting Style DNAをCloud App Securityに組み込み、メールセキュリティ用の新機能として提供する。まずはMicrosoftのクラウドオフィススイート「Office 365」で利用可能となり、2019年4~6月にはGoogleのメールサービス「Gmail」での利用を可能にする計画だ。グループウェア「Microsoft Exchange Server」向けのセキュリティ製品「InterScan for Microsoft Exchange」での利用は同年2月18日に開始する。いずれも現段階では英文メールでのみ機能するが、同年7~12月には日本語メールの学習も可能になるという。
Writing Style DNA自体は追加料金なしで利用可能。Cloud App Security とInterScan for Microsoft Exchange の1ユーザー当たりの料金は、導入する製品/サービスやライセンス数によって異なる。1000~2999ライセンスの場合、Cloud App Securityは4150円、InterScan for Microsoft Exchangeは1280円(全て税別)。
迫りくるBEC詐欺
2018年6月にトレンドマイクロが実施したビジネスメール詐欺に関する調査では、回答者1030人の約4割に当たる406人が「詐欺メールを受け取ったことがある」と答えた。国内外で被害が発生しており、例えば2017年12月には日本航空が約3億8000万円をだまし取られた。「至急」「緊急」などの単語が件名に含まれていたり、本物の送信者のメールアドレスに似せたメールアドレス名を使ったりするなど、手口が巧妙化している(図3)。
従来の詐欺メールは英語で書かれたものが多いことから、「日常的に海外と取引するような企業でなければ、怪しいとすぐ気付くことができた」と宮崎氏は指摘。しかし最近では日本語で書かれた詐欺メールも観測されていると注意を促す。
ビジネスメール詐欺対策の観点として、宮崎氏は「組織的対策」と「技術的対策」の2つを挙げる。組織的対策には送金処理の社内ポリシーや承認・処理プロセスの整備、従業員教育などがあるという。一方の技術的対策について、「複数フェーズでセキュリティを有効にする『多層構造』が重要だ」と述べる。ビジネスメール詐欺は大きく分けて情報収集フェーズとメール送信フェーズに分けられる。「攻撃者が各フェーズで取る行動に応じたセキュリティ技術を導入することが、ビジネスメール詐欺の防止につながる」(宮崎氏)
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