サーバ今昔物語【第2回】
「新しい技術が出るたび状況が良くなると信じた」 サーバはこれからどうなる?(2/2 ページ)
HCIの登場
ブレードサーバと仮想化技術により、サーバの集約が可能となった。このサーバの集約をさらに進めた形が、HCI(ハイパーコンバージドインフラ)である。サーバとストレージに加え、サーバ間をつなぐネットワークと管理用のソフトウェアが1つの筐体に収まっている、オールインワン型の製品だ(図3)。
HCIはソフトウェア定義ストレージ(SDS)技術を使い、サーバの内部ストレージを共有化。仮想環境で使うストレージ容量を調整可能な状態で利用できるようにする。小規模からの導入ができ、さらには拡張性が高く、リソースが不足した場合にはサーバ本体の増設によって容易にスケールアウトが可能という特徴がある。現在HCIの技術が市場で活性化しており、専業ベンダーのNutanixが市場をリードする形で、ベンダー各社がしのぎを削っている状態だ。
HCIの差異化ポイントとしては、以下の点が挙げられる。
- ユーザー企業自身での初期セットアップが可能かどうか
- 導入しやすいかどうか
- ストレージの重複排除機能による容量効率化ができるかどうか
- バックアップを含む一元管理環境における運用が容易かどうか
- ハイブリッドクラウド連携機能があるかどうか
コンテナが注目される理由
IAサーバが誕生してから四半世紀にわたり、サーバは目覚ましいスピードで変遷を遂げてきた。それでもテクノロジーの進化が止まる気配はない。近年注目を浴びているのは「コンテナ」技術だ。
「Docker」を中心としたコンテナ技術は、アプリケーションの実行環境を仮想化する技術のことだ(図4)。サーバを仮想化するのではなくアプリケーションの実行に必要な環境だけを仮想化するため、メモリやストレージといったリソースをそれほど必要としない。OSが稼働する環境を一から構築する仮想マシンより、効率的にリソースを使える。
現在はさまざまな環境で、コンテナ化されたアプリケーションを展開、実行できる準備が整いつつある。コンテナはオンプレミスやクラウドといった環境への依存度が低いため、オンプレミス環境とクラウド環境を組み合わせたハイブリッドクラウドでのコンテナ環境の構築や導入が進んでいる。
HCIやコンテナといった仮想化によるインフラの抽象化が進んでおり、今後はシステム構築において、サーバやストレージ、ネットワークという単位を意識することはなくなると考えられる。オンプレミスやデータセンター、クラウドといった環境をそれぞれOSのように「1つのまとまり」として運用する時代に向かうはずだ。
サーバを持ち歩く時代が来るか
ハードウェアの世界においては、長年続いているCPUとメモリ、HDD、それらを結ぶ銅線という「ノイマン型コンピュータ」をベースにした一般的なコンピュータ(図5)の構成を刷新する流れが出てきている。
Hewlett Packard Enterprise(HPE)は新しい構成のサーバ「The Machine」(図6)を開発中だ。「『ユニバーサルメモリ』と演算装置を光でつなぐ」という構成になっている。ユニバーサルメモリは小型で、現在のメモリを超えるデータ処理速度を持ち、HDD並みの容量を備える記憶装置だ。演算装置は、例えばAI(人工知能)であればGPU、信号処理であれば信号処理用プロセッサなど用途に応じたものを利用する。データの通信には光を使う。
The Machineが実用化されれば、超巨大なデータを光で転送することが当たり前の世界になっていくだろう。例えば複数のサーバラックをつなぎ、ほとんど遅延のない、巨大な1つのサーバとして動作させられるはずだ。
今後技術が発展して、ユニバーサルメモリのように小型でさまざまな機能を持った機器が当たり前になれば「高度な処理をするための大型の機器」といった意味での「サーバ」はなくなってしまう可能性がある。データセンターそのものが丸ごとアタッシェケースの中に入る、といった夢物語も現実のものになるだろう。
IAサーバが登場した当初は想定以上に障害が多く、ログの取得も不十分だったことから、障害の原因はハードウェアなのかOSなのか十分な切り分けができなかった。企業にとって、サーバ障害はビジネス停止のリスクを高める原因になるため、即時に解決できるかどうかが重要になる。企業のシステム構築を支援してきた私は、こうした相反する課題の間での板挟みが長く続き、不安と背中合わせの日々を送っていた。
新しい技術が出るたびに環境が改善されると信じて必死だったが、技術が進化し、いつかサーバがなくなるとしたら少し寂しい気持ちになる。だが同時にそんな未来が来るのが楽しみでもある。
高橋拓也(たかはし・たくや)
横河レンタ・リース 事業統括本部 システム事業部 商品企画部長
1995年横河レンタ・リースに入社。入社以来20年以上にわたり、日本ヒューレット・パッカードのサーバ/ストレージ製品にシステム構築と保守とを組み合わせて、エンドユーザーおよびパートナーに販売するシステム事業の営業に関わる。2017年に30周年を迎えた横河レンタ・リースのコンセプト「『モノ』から『コト』へ」「『ハードウェア』から『ソフトウェア』へ」をテーマとしたITサービスの企画を担当。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
サーバ今昔物語
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
2
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
3
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
4
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
5
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
6
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
7
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
-
8
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
9
本当に安いPCで十分か? “すぐ重くなる”を防ぐノートPC選びの絶対条件
-
10
Claudeの不可視透かしに批判殺到 著作権消失や誤判定に潜む企業リスク
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー