コンピュテーショナルストレージの可能性【前編】
いまさら聞けない「コンピュテーショナルストレージ」とは? なぜ必要?
ストレージと演算処理機能を1つにまとめた「コンピュテーショナルストレージ」は、それぞれが独立していた従来のストレージシステムと何が違うのか。コンピュテーショナルストレージの概要を解説する。
ストレージと演算処理は従来別々の機能だった。この2つの機能を1つにすれば、処理速度の向上を実現できるのではないか――。その構想を実現するのが「コンピュテーショナルストレージ」だ。
記録媒体が変わり、容量が増えても、データストレージの核となる機能はここ何十年も変わっていない。1980年代に主流だったHDDや磁気テープは、一般的に今日のフラッシュストレージと同じ機能を果たし、アーキテクチャもほとんど変わらない。一方コンピュテーショナルストレージは、ストレージと演算処理へのアプローチの定義を変えることになる。では、どのようなメリットがあり、どのような課題が潜んでいるのか。
そもそもコンピュテーショナルストレージとは何か
併せて読みたいお薦め記事
コンピュテーショナルストレージを知る
通常のデータの演算処理では、入出力(I/O)ブリッジ経由で少量のデータストレージデバイスからプロセッサに移動し、演算処理の終了後にストレージに書き戻される。ただしこのI/Oブリッジのデータ転送速度は、ストレージの近くでデータをやりとりする速度よりも低速になるのが一般的だ。その結果、演算処理速度が低下し、ボトルネックが生じることになる。
この演算処理の遅れによって、金銭取引やデータストリーミングなどの即時性が必要な操作に支障が出る可能性がある。演算処理が終わった時点で、すでに決定的瞬間を逃してしまっていることもあり得る。時間を重視する用例でこうした状況が発生すると、企業の利益損失や運用上の問題につながりかねない。
こうした問題を解消するために、ストレージシステムに演算処理機能を組み込むのがコンピュテーショナルストレージだ。これはストレージデバイスにミニサーバが組み込まれているようなものだと言える。この構造はストレージシステムと処理能力が直接連結しているため、コンピューティング用のプロセッサにデータを移動する必要がなくなる。
コンピュテーショナルストレージは従来の構造、つまりストレージシステムと演算処理機能が独立しているシステムよりも迅速にデータを処理可能だ。ストレージシステム内でデータを処理するため、大量のデータを扱うシステムには理想的だ。その結果必要な演算能力を削減できるとともに、プロセッサや冷却システムのエネルギー消費量も削減できる。データをプロセッサに送らずにストレージデバイス自体で処理できるため、データによってはトラフィック(ネットワークを流れるデータ)を減らせる可能性もある。
コンピュテーショナルストレージの種類
現時点のコンピュテーショナルストレージには、以下の2種類がある。
- Fixed Computational Storage Service(FCSS)
- データ圧縮などの専用機能をあらかじめプロセッサに組み込んでおく。
- 設定やインストールは比較的簡単だが、機能が限定的。
- 一例がストレージベンダーFlexxonのSSDで、組み込みのセキュリティ機能を備えている。
- Programmable Computational Storage Service(PCSS)
- 通常のサーバと同様にプログラミングする必要がある。デバイスは、特定のデータ処理タスクを実行するプログラミングが可能なオンボードプロセッサを搭載する。
- こうした汎用(はんよう)デバイスは特定のビジネスニーズを満たすのに適しているが、設定には時間がかかる。
次回は、コンピュテーショナルストレージの課題を説明する。
Computer Weekly発 世界に学ぶIT導入・活用術
米国TechTargetが運営する英国Computer Weeklyの豊富な記事の中から、海外企業のIT製品導入事例や業種別のIT活用トレンドを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Computer Weekly発 世界に学ぶIT導入・活用術
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣 -
製品資料
[サイボウズ株式会社] AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
4
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
5
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
-
6
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
7
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
8
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
9
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
10
【漫画付き】ひとり情シス協会が明かす、RAG導入でしくじる企業「2つの共通点」
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー