実践事例に学ぶDXの知恵【第1回】
DXができない企業は「消えるだけ」の現実と、成功者が知る“実践の知恵”
「DXを推進すべき」は世界の流れだが、そもそもDXに取り組む理由は何か。DX をしなければどうなり、“成功するDX”をしたければ何をしないといけないのか。専門家たちの意見を紹介する。
経済状況が厳しい中にもかかわらず、「デジタルトランスフォーメーション」(DX)の取り組みは世界中で活発化している。コンサルティング企業Boston Consulting Group(BCG)のDX専門家集団「BCG X」が2022年12月に公開した調査レポート「Mind the Tech Gap」によると、対象企業の60%が2023年にDXへの投資額を増やすと答えた。
ただしDXの成功は簡単なことではない。マーケティングツールベンダーPhraseeの非業務執行取締役であるパリー・マルム氏は「まだDXに着手していない企業にとっては、特に難しい取り組みになる」と話す。どういうことなのか。
DXをしなければ“消える”だけ 実践のための知恵とは?
マルム氏によると、DXを始めて試行錯誤する中で、問題が生じた際に軌道修正できるだけのリソースを持っている大手企業は利益を上げ続けることができる。中小企業やスタートアップ(設立後間もない企業)は、素早く立ち回って変化を起こす能力で大手企業に対抗し、競い合う。しかし大手企業や新興企業のような強みを持たない中堅企業は、企業間の競争から締め出される恐れがある。「そのような状況を切り抜けるためには、DXを成功に導くための仕組みやプロセスを理解することが不可欠だ」と同氏は指摘する。
コンサルティング会社PSG Consultingのマネージングディレクター、アントニー・エドワーズ氏は、DXを3つのタイプに分類している。
- 製品やサービスのデジタル化
- デジタル技術を使った、顧客との関わり方の変革
- 社内インフラの変革に伴う、従業員の働き方の変化
DX支援を手掛けるグローバルサービス企業のGenpactでチーフデジタルストラテジストを務めるサンジェイ・スリバスタバ氏によると、さまざまな業界の企業がDXを通じて以下のようなビジネス課題に取り組む中で、投資利益率(ROI)を達成している。
- 顧客体験の向上
- 業務生産性の向上
- サプライチェーンの最適化
ITはあくまでもDXを支える一部に過ぎないものの、スリバスタバ氏が今までに見聞きした事例の中で成功したと考える取り組みは、デジタル技術やデータ、AI(人工知能)技術を活用したものだったという。
調査会社Gartnerのディスティングイッシュトバイスプレジデントアナリストであるクリスティン・モイヤー氏は「DXが成功すればビジネスは最適なものになる」と話す。
DXの成果としてモイヤー氏が挙げるのが、業務効率の改善や顧客エンゲージメントの向上だ。重視すべきなのは、新しいデジタル製品やサービス、新しいビジネスモデルなど「全く新しい収益」を作り出すことだ、と同氏は説明する。
DXをロードマップに沿って実行することで、顧客のニーズに応え続けられるようになり、そして顧客がよく利用するチャネルに応じてサービスを展開できるようになる。セキュリティコンサルティング企業RisksilienceのCISO(最高情報セキュリティ責任者)を務めるジェイソン・フルージ氏はこう説明し、「結果として、顧客基盤の拡大につながる」と話す。
人々はデジタル技術への依存度をますます高めている。スマートフォンやタブレットなどのデバイスを使って企業とつながりを持ちたいと考えている一般消費者も存在する。だからこそ「そのような現実を受け入れDXを実施しなければ、取り残されてしまう恐れがある」とフルージ氏は主張する。
専門家たちは、DXによってIT部門や開発部門のアジリティー(機敏性)を高められる点についても強調する。社内のITインフラが整い、小規模な変更を短期間のうちに繰り返す「アジャイル」な開発ができるようになり、今までよりもはるかに素早くプロジェクトを進められるようにもなる。
第2回は、大手企業3社のDX実践例を紹介する。
TechTarget発 世界のインサイト&ベストプラクティス
米国TechTargetの豊富な記事の中から、さまざまな業種や職種に関する動向やビジネスノウハウなどを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
TechTarget発 世界のインサイト&ベストプラクティス
米国TechTargetの豊富な記事の中から、さまざまな業種や職種に関する動向やビジネスノウハウなどを厳選してお届けします。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社MatrixFlow] 「物流リソース最適化」ガイド:人員・配車・傭車を出庫依頼の確定前に決めきる -
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
2
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
3
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
4
「IBM iはDXのボトルネック」は誤解 意外と知らない今風モダナイズの効果
-
5
「朝8時にバッチが終わらない」データ爆発の危機をJPX総研はどう乗り越えたか
-
6
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
7
AI導入後に発覚する「社内文書を読めない」問題 情シスは何を直せばいい?
-
8
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
9
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
-
10
IT製品の導入に関するアンケート「PC&デバイス」編
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
プログラミング不要で誰でも実現できる、ネットワーク運用管理の自動化とは
-
5
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
6
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
-
9
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
10
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー