知名度のある大手企業が取り組むDXでも失敗事例は存在する。そこにはどのような経緯や敗因があったのか。4社の事例から探る。
「デジタルトランスフォーメーション」(DX)に取り組むからには失敗は避けたい。失敗するDXのタイプや、失敗の分類を紹介する本連載の後編は、大手企業4社におけるDXの失敗例とその敗因を紹介する。
ハードウェアの製造販売企業だったGE(General Electric)は、2011年からデジタルをビジネスの軸にすべくソフトウェアの開発と販売にかじを切った。IoT(モノのインターネット)を活用したDXに取り組み、2015年9月には同社のグローバルIT部門やソフトウェア開発部門、セキュリティ部門を統合する新たな事業部門「GE Digital」を設立した。しかし2021年11月、GEはGE Digitalの事業のうちヘルスケア、エネルギー、航空の3分野を分社化することを決定した。これを受けて、「GEのDX事例は失敗に終わった」という見方がある。
経営コンサルティング会社Lotis Blue Consultingのパートナーであるジョン・キング氏は、GE Digitalの敗因を「手を広げ過ぎた」と指摘する。
あまりにも早く数多くの取り組みを実施しようとし過ぎた結果、組織は加速度的に拡大し、目標を見失った。販売するにはまだ早いと思われるソフトウェアやサービスを提供したことで顧客企業の不満は増加したという。
ある大手グローバル製薬企業は、臨床に関するさまざまなデータがサイロ化(連携せずに孤立した状態になること)することに悩まされていた。そこで取り組んだのが、臨床データを一元的に扱えるようにするシステムの構築というDXに取り組んだ。
調査会社Everest Groupのパートナーであるニティシュ・ミッタル氏は、この取り組み自体は優れたものであると評価する。一方で「チェンジマネジメント(組織の変革を成功させるためのマネジメント手法)の取り組みが不足していた」とミッタル氏は指摘する。テクノロジーについて臨床や研究に携わる人々が理解していることや、システムの導入に伴う労力を過小評価していたのだ。その結果、システムの導入プロセスは再検討され、運用開始が当初より3カ月間遅くなったという。
「このような取り組みにおいては、システムのエンドユーザーによるフィードバックを最初から収集することが重要だ」とミッタルは語る。
米大手自動車メーカーFord Motorは2016年3月、モビリティーサービス分野の子会社Ford Smart Mobilityを設立した。その目的は、新たなモビリティーサービスの設計や自動運転技術、顧客体験(CX:カスタマーエクスペリエンス)といった分野での取り組みを強化することだった。Ford Smart Mobilityは、Ford Motor社内の他の自動車製造部門との接点を持たずに事業を運営したことやFord Motorのサービスの品質問題などから、2017年に多大な損失を計上したという。
Procter & Gamble(P&G)は2011年、「地球上で最もデジタルな企業」になるという目標を掲げ、同社内のあらゆる事業部門でデータ解析を実施して製品やサービスの改善につなげる取り組みを実施した。一方で、同社は2011年時点で競合他社を大きくリードしていたこと、世界経済危機という厳しい経済状況の中にあったことから、DXへの投資に対して得られた効果は少なかったという。
「企業のこうした事例からは、DXには失敗が付き物だということを学んだ」と、調査会社Constellation Researchの設立者兼プリンシパルアナリストであるレイ・ワン氏は添える。
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