AI時代における市民開発の実態【後編】
「非エンジニアが開発者になる」は生成AI時代の“幻想”でしかなかった?
生成AIの台頭により、非エンジニアが開発に参加する「市民開発」への期待が高まっている。一方で、「誰でもコーディングできる」という考えに注意を促す専門家もいる。その理由とは。
テキストや画像を自動生成する人工知能(AI)技術「生成AI」の進化によって、市民開発(非エンジニアによる開発)はますます身近なものとなりつつある。一方で、「生成AIを使えば誰でもコーディングできる」という考えに、期待し過ぎてはいけないと主張する専門家もいる。それはなぜなのか。
「非エンジニアが開発者になる」は幻想でしかないのか?
併せて読みたいお薦め記事
連載:AI時代における市民開発の実態
市民開発に関する記事
市場調査アプリケーションベンダーStreetbeesで、エンジニアリング部門の責任者を務めるギャビン・アルクール氏は、「コーディングの民主化」に懐疑的な視線を向ける。過去に生成AIを用いて製品の設計や検出、実装をした経験から、生成AIの効果を引き出すには相応の投資が不可欠であるとアルクール氏は理解しているからだ。
例えば、市場調査を実施するには、単にデータを集めるだけでなく、それを有用な形に整理して翻訳する作業が必要だ。Streetbeesには、市場調査に関する専門知識を図式化し、翻訳するスタッフがいる。生のデータをデータライブラリ(特定の目的のために整理されたデータの集まり)に変換するためには、データスキーマの操作スキルが必要だ。他にも、マーケティングの知識、戦略的思考、技術スキルを備えた人材が欠かせない。
生成AIやそのベースとなる大規模言語モデル(LLM)は進化を続けており、時間の経過とともに一般的な技術になると予測される。StreetbeesでAI製品担当ディレクターを務めるシャフ・シャジャーハン氏は、「LLMを使えば、誰でもある程度の品質と結果を出せるようになったとしても、それが最適とは限らない」と指摘する。製品やサービスの差別化要因は、専門家によって設計および開発されているという事実にあるからだ。
ローコード(最低限のソースコードを記述)開発ツールベンダーMendixで最高製品責任者(CPO)を務めるハンス・デ・ビサー氏は、特定の制限された範囲内でのみ機能するシステムである「ウォールドガーデン」について言及する。
例えば、Microsoftのローコード開発ツール「Microsoft PowerApps」(以下、PowerApps)でウォールドガーデンを構築することが可能だ。PowerAppsでは、ポータルサイト構築ツール「Microsoft SharePoint」や表計算ツール「Microsoft Excel」など限られたデータソースからデータを取り出して使用できる。他にも、ユーザーインタフェース、チェックリスト、承認リマインダーなど、PowerApps内でのみ機能するシンプルなワークフローの構築が可能だ。
このように限られた範囲内であれば、誰でも簡単なアプリケーションを安全に開発できる可能性がある。より難易度の高いアプリケーション開発に挑戦する場合は、生成AIを組み込むことで作業の抽象化と自動化を実現し、生産性の向上が期待できる。
「どのタイプの生成AIツールを、どのような人に提供するか検討すべきだ」とビザー氏は強調する。アプリケーションを一度も開発したことがない人でも、生成AIを使用すればソースコードを自動生成できる。しかし、その仕組みを理解できないことがほとんどだ。
通信大手BT GroupでAI分野のプリンシパルエンタープライズアーキテクトを務めるメルビン・ホワイト氏は、「非技術者を含め、幅広い人が容易に生成AIを使えるようにすることは良いことだ」と話す。同時に、「LLMを使用すると生産性は向上するが、成果物を人が確認し、必要に応じて調整することが欠かせない」とも強調する。
Computer Weekly発 世界に学ぶIT導入・活用術
米国TechTargetが運営する英国Computer Weeklyの豊富な記事の中から、海外企業のIT製品導入事例や業種別のIT活用トレンドを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Computer Weekly発 世界に学ぶIT導入・活用術
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社ガラパゴス] 「AIっぽい広告」の山に埋もれさせない AIマーケで着実に成果をだす秘訣とは? -
製品資料
[株式会社ガラパゴス] 「広告投資」調査レポート2026:勝ち組企業は何に投資しているのか? -
製品資料
[株式会社Helpfeel] 「問い合わせの渋滞」を解消、情シスの負担を軽減する“次世代型AI”活用方法 -
製品資料
[株式会社Helpfeel] 対話型AIエージェント×RAGで社内情報の検索/問い合わせを効率化するには? -
技術文書・技術解説
[株式会社クレスコ] ソフトウェア開発の属人化と手戻りをどう防ぐ? 速さと品質を両立させる方法
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Copilot」はなぜ放置される? “議事録要約止まり”を脱する処方箋
-
2
脱VMwareの前提が崩れる BroadcomのVDDK公開停止で確認すべき点
-
3
「コンテナ型データセンターの検討状況と課題」に関するアンケート
-
4
「ネットワークインフラの現状と課題」に関するアンケート
-
5
9割が頓挫する「AI内製化」 差がついたのはツールより設計力
-
6
AI全部入り「Microsoft 365 E7」に企業が二の足を踏む訳 移行意向はわずか4%
-
7
マンガで解説:採択率は3割台? デジタル化・AI導入補助金申請の落とし穴
-
8
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
9
AIエージェントが自社を襲う 人間より危険な「非人間ID」の盲点
-
10
「企業内サーバ環境の利用実態」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
マンガで解説:「ゼロトラスト」「SASE」の必要性とメリット
-
2
5回聞くだけじゃ足りない? トヨタ式「なぜなぜ分析」の正しい実践方法
-
3
インシデント対応工数を約3割削減、東京ガスの事例に学ぶ監視体制刷新のコツ
-
4
AIエージェントで多様な日常業務を効率化するための入門ガイド
-
5
JR西日本ITソリューションズが「監視業務の属人化」を解消した方法とは?
-
6
国税庁の次世代基幹システム「KSK2」稼働開始に向けて、対応すべき変更点とは?
-
7
5分で分かる「セキュア大容量ファイル転送サービス」の機能とメリット
-
8
ドラマで分かる、標的型攻撃メールの被害を受ける企業と回避できる企業の分岐点
-
9
少額減価償却資産が40万円未満へ拡大、令和8年度税制改正で押さえるべき変更点
-
10
「脱Excel」か「Excel快適化」か? 現場にやさしい業務改善の進め方
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー