GPUはクラウドかオンプレミスか【前編】
「GPUが高過ぎる」なら“借りる”もあり? GPUaaSとは何か
AI(人工知能)技術の需要が高まるにつれて、GPU(グラフィックス処理装置)の入手が難しくなっている。そこで注目を集めているのが、GPUを購入せずに利用できる方法だ。
「GPU」(グラフィックス処理装置)は、さまざまなAI(人工知能)ワークロード(AI技術に関連する計算処理などの一連のタスク)の実行に不可欠な存在となっている。だが、GPUの価格高騰と供給不足に伴い、ユーザー企業にとってGPUを調達しにくい状況が発生している。そこで注目を集めているのが、GPUをサービスとして使う「GPUaaS」(GPU as a Service)だ。GPUaaSとはどのようなサービスか。
「GPUaaS」とは何か
GPUaaSは、オンデマンド(要求に応じて)でGPUのリソースを調達できるクラウドサービスだ。専業ベンダーやパブリッククラウドベンダーなどさまざまな事業者が提供している。GPUaaSベンダーが事業を拡大する動きがあり、市場は拡大傾向にある。例えばLenovoやRackspace TechnologyなどがGPUaaSを提供している。
NVIDIAは2006年に、GPUを用いた並列プログラミング向けの開発者ツール群「CUDA」(Compute Unified Device Architecture)を発表し、CUDAはその後まもなく、機械学習などAI技術のユースケースに使用されるようになった。今では、NVIDIAはデータセンター向けGPUの主要サプライヤーだ。
2022年にOpenAIが、AIチャットbot「ChatGPT」をリリースすると、テキストや画像を生成する「生成AI」のブームが起きた。AIモデルの精度を上げるには、大規模なデータセットを効率的に処理することが重要であり、並列処理に優れたGPUの需要が高まった。
「データセンター向けGPUを使ってAIモデルをトレーニングしたいという企業が急激に増加し、市場でGPUの需給が逼迫(ひっぱく)した」と調査会社Gartnerのアナリスト、チラグ・デカテ氏は説明する。ハイパースケーラー(大規模データセンターを運営するクラウドベンダー)がNVIDIAの主要顧客となっている。
GPUaaSのさまざまな側面
GPUaaSはユーザーにGPUをオンデマンドで提供するクラウドサービスだ。LambdaやCoreWeaveのようなGPUaaSベンダーは、NVIDIAと戦略的提携関係にあり、膨大なGPUのコンピューティングリソースを確保している。
だが、「GPUaaSには限界もある」とデカテ氏は指摘する。GPUaaSはGPUのコンピューティングリソースをユーザー企業に提供するが、AIワークロードのために必要な技術群の全てを提供するものではない。
「純粋なGPUaaSサービスの利用について言えば、望遠鏡で夜空を眺めるようなものだ。見えるものは美しいが、それはあくまでNVIDIA中心のエコシステム(複数の企業による共存共栄の仕組み)だ。全体を見渡すことはできていない」(デカテ氏)
これに対し、ハイパースケーラーはGPUへのアクセスに加え、フルスタック(関連分野を網羅した)の技術とサービスをユーザー企業に提供する。だが、この場合もユーザー企業はハイパースケーラーを中心としたエコシステムでの開発や運用を求められる。
Lenovoは2024年9月にGPUaaSとして「Lenovo TruScale GPUaaS」を発表した。Rackspace Technologyも2024年11月にクラウドサービス「Rackspace Spot」の拡張メニューとして、GPUaaSを提供すると発表した。だが、「これらのベンダーは、GPUへのアクセスを含むプライベートクラウド型のサービスを、既存データセンターから提供している」とデカテ氏は指摘する。CoreWeaveのような専門ベンダーのサービスとは異なる。
「LenovoやRackspace Technologyのサービスを利用してユーザーができることは、オンプレミスでプライベートクラウドを構築することや、GPUを利用したサービスの開発、プライベートAIサービスの開発だ」(デカテ氏)
それでも、LenovoやRackspace Technologyのサービスにより、「ユーザーは直接購入するより低コストで、GPUを利用できる可能性がある」と調査会社Futurum Groupのアナリスト、ラス・フェローズ氏は指摘する。さらに、ハイパースケーラーのエコシステムに縛られなくなるというメリットもある。
次回はGPUの供給が不足している現状について分析する。
TechTarget発 先取りITトレンド
米国Informa TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「Excel至上主義」の終わらせ方 丸2日の手作業地獄から情シスと現場を救うには
-
2
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
3
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
4
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
5
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
6
「AI時代の統合基盤・エンタープライズAI管理」に関するアンケート
-
7
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
-
8
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
9
本当に安いPCで十分か? “すぐ重くなる”を防ぐノートPC選びの絶対条件
-
10
Claudeの不可視透かしに批判殺到 著作権消失や誤判定に潜む企業リスク
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー