平均評価は100点満点中20点
「現代奴隷制」が残るICT業界 強制労働がなくならない“深い理由”(1/2 ページ)
ビジネスと人権に関するNPOが、ICT業界における強制労働の実態を明らかにした。同業界にまん延する「現代奴隷制」はなぜなくならないのか。
情報通信技術(ICT)業界では、資源や部品の調達、商品の製造、配送の過程で強制労働を排除できていない――。この実態を、ビジネスと人権に関するNPO(非営利団体)Business & Human Rights Resource Centre(BHRRC)が主導するイニシアチブ「KnowTheChain」(KTC)が明らかにした。
企業の取り組みはどの程度なのか
併せて読みたいお薦め記事
人材の流出に企業はどう向き合えばいいのか
KTCは、資源や部品の調達、商品の製造、配送といったサプライチェーンにおける強制労働のリスクを可視化、改善するための指標とガイドラインを提供している。2025年4月に公開した年次調査レポート「KnowTheChain ICT benchmark」2025年版では、世界的なICT企業45社を対象に、人権侵害是正への取り組みを100点満点で評価した。評価は以下をはじめとした複数の指標に基づく。
- ガバナンス
- トレーサビリティー(追跡性)
- 購買慣行
- 採用
- 従業員の権利の行使
- 従業員の監視
- 救済措置
この調査で、45社の平均点は20点にとどまった。50点を超えた企業は以下の3社のみだった。
- Hewlett Packard Enterprise(HPE)
- Samsung Electronics
- Cisco Systems
一方で、調査対象45社のうち20社が15点未満だった。点数が一桁だった企業は以下の通りだ。
- 0点
- BOE Technology Group
- 3点
- Semiconductor Manufacturing International(SMIC)
- 4点
- Luxshare Precision Industry
- 5点
- Xiaomi
- 6点
- 京セラ
- 7点
- キーエンス
- 8点
- Infineon Technologies
- Broadcom
- Amphenol
- 9点
- 富士フイルム
指標のうち、「従業員の結社の自由の支援」については、調査対象企業全体の93%が0点を記録した。「購買慣行」と「従業員の権利の行使」はいずれの企業でも数値が最も低く、両指標とも平均点は5点だった。
強制労働をはじめとした「現代奴隷制」(権力の行使や脅迫、暴力などによって搾取される状態)は深刻な問題だ。ICT業界では、商品の製造過程で使用する原材料の採掘や部品の調達において強制労働が見られるとKTCは指摘する。
2020年6月、KTCは同月に公開したKnowTheChain ICT benchmarkの2020年版の内容を受けて、ICT企業が「サプライチェーンにおける強制労働防止の取り組みを怠っている」と指摘した。KTCが2023年1月に公開したKnowTheChain ICT benchmarkの2022年版では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)の影響でICT企業の収益は増加したにもかかわらず、企業の大半はサプライチェーンにおける強制労働のリスク排除や適切な対策を講じていなかったことを明らかにした。
KnowTheChain ICT benchmarkの2025年版によると、ICT企業におけるポリシーやガバナンス、「人権デューデリジェンス」の確立には一定の進展が見られる。ただし、ポリシーと実践の間の差は拡大する傾向にあると同レポートは指摘する。「実際の業務や労働現場でポリシーをどのように運用しているか、実践の実効性をどのように計測しているか、データを示すことができている企業が少ないことは明らかだ」というのが同レポートの主張だ。人権デューデリジェンスは、強制労働をはじめとした労働に関する人権侵害の特定、分析、予防、軽減を進めるための取り組みを指す。
「ICT業界は、サプライチェーンにおける従業員の権利を守る活動を依然として怠っている」。BHRRCのKTC責任者兼投資戦略担当のエイン・クラーク氏はこう述べる。同氏は続けて、「サプライチェーンから強制労働を根絶するための取り組みを早急に強化する必要がある」とICT企業の課題を強調する。
サプライチェーンの人権リスク評価を実施する方法を開示している企業は、2025年版の調査で対象になった企業全体の67%だった。一方、リスク評価の利害関係者と具体的な事例を開示できた企業は20%にとどまった。これは、実際に被害を受ける側である従業員の視点を重視してリスクを評価する取り組みが乏しいことを示しているとKTCは指摘する。
ICT業界のあの生産方式に問題が?
KnowTheChain ICT benchmarkの2025年版は、ICT業界で広く採用されている「ジャストインタイム」方式が、従業員の虐待リスクを高めていると指摘する。ジャストインタイム方式は、必要なものを必要な時に必要な量だけ生産し、完成品や部品の在庫を減らす生産方式だ。
「電子機器製造は中国や台湾、マレーシアなど、強制労働のリスクが高い地域で活発だ。さまざまな機関がリスクを指摘し、根拠となるデータを蓄積している」(クラーク氏)
特に、世界で流通する半導体の大半は台湾で生産されている。KnowTheChain ICT benchmarkの2025年版は、従業員の採用手数料や偽装請負など、台湾では強制労働のリスクが高まっているとし、移民労働者を保護する必要性を強調している。
KTCは、企業のリーダーやサプライチェーン、採用の専門家に対し、以下の行動を呼び掛けている。
- サプライチェーン全体を視野に入れた人権デューデリジェンスの徹底
- ガバナンス、購買慣行、採用慣行の是正と強化
- 従業員の権利の保護と搾取防止に向けた、企業と労働組合の連携
- EU(欧州連合)が定める「企業持続可能性デューデリジェンス指令」(CSDDD)の最低基準としての順守
TechTarget.AIとは
TechTarget.AI編集部は生成AIなどのサービスを利用し、米国Informa TechTargetの記事を翻訳して国内向けにお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
TechTarget.AI
TechTarget.AI編集部は生成AIなどのサービスを利用し、米国TechTargetの記事を翻訳して国内向けにお届けします。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社MatrixFlow] 「物流リソース最適化」ガイド:人員・配車・傭車を出庫依頼の確定前に決めきる -
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
4
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
5
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
6
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
7
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
8
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
9
「結局使わなくなる」Microsoft 365 Copilotを半年で定着 キリンの3施策
-
10
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー