本当に安全なVPNとは【第1回】
いまさら聞けないVPNの「IPsec」と「SSL」とは何か?
VPNは従業員が安全に働くためになくてはならない通信技術であり、いまだにリモートアクセス技術の主流だ。VPNの主要プロトコルであるIPsecとSSLの基本を確認しよう。
自宅や外出先、拠点などから社内のシステムやデータに安全に接続するためのリモートアクセスは、あらゆる規模の組織にとって不可欠な手段だ。VPN(仮想プライベートネットワーク)はそのための方法の一つになる。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)以降、リモートアクセスの新技術として「ZTNA」(ゼロトラストネットワークアクセス)が注目を集めたが、VPNはいまだに主流であり続けている。これはつまり、VPNの暗号化プロトコルとして「IPsec」と「SSL」(Secure Sockets Layer)のどちらを導入すべきかという積年の課題が、依然として存在することを意味する。IPsecとSSLはどのような技術なのかを確認しよう。
VPNの「IPsec」と「SSL」とは?
IPsecとSSLは、どちらも企業が必要とする安全な通信を可能にする暗号化プロトコルだが、暗号化と認証をするレイヤーが異なる。このレイヤーの違いが、保護する対象の違いとなるため、それぞれのVPNの特性や用途を決定する上で重要な要素となる。
簡単に言えば、IPsecを使用したVPN(以下、IPsec-VPN)は、内部ネットワークと外部ネットワークの境界にあるVPNのゲートウェイ装置が、パケット(ネットワークを流れる分割されたデータ)を保護する。
これに対して、SSLを使用したVPN(以下、SSL-VPN)は、遠隔地のクライアントデバイスにあるWebブラウザやアプリケーションから、ゲートウェイ装置へのトラフィック(ネットワークを流れるデータ)を保護する。IPsec-VPNは遠隔地のクライアントデバイスと社内ネットワークを、もしくはプライベートネットワーク同士を安全に接続する仕組みだ。SSL-VPNは社内ネットワーク内の特定リソースへのアクセスを、クライアントデバイスのアプリケーション単位で保護する仕組みと言える。
IPsecとは
IPsecは「Internet Protocol Security」の略であり、インターネットを介して送信されるデータを保護するためのプロトコルとアルゴリズムのスイート(一群)だ。インターネット標準化団体「Internet Engineering Task Force」(IETF)が仕様を策定した。OSI参照モデルのレイヤー3(ネットワーク層)で動作して、クライアントデバイスとゲートウェイ装置間を流れるデータを、パケット単位で暗号化や認証する。
IPsec-VPNでは、「トンネリング」という技術を用いる。これは全てのトラフィックおよびパケットをカプセル化(プロトコル用のヘッダ情報の付与)して暗号化することで、仮想的な通信経路を構築する技術だ。これにより、クライアントデバイスがVPNサーバを経由して社内ネットワークに安全にアクセスできるようになる。
SSLとは
SSLは「Secure Sockets Layer」の略で、クライアントデバイスとサーバ間で送信されるデータを暗号化するプロトコルだ。インターネットで通信するために普及していたプロトコルだが、さまざまな脆弱(ぜいじゃく)性が見つかり、Webブラウザベンダーや、IETFなどの標準化団体が2015年に非推奨とした。
非推奨となった後、SSLは暗号化プロトコル「TLS」(Transport Layer Security)に置き換えられた。今ではほとんどのWebサイトやアプリケーションはTLSを使用している。
TLSはOSI参照モデルのレイヤー4(トランスポート層)からレイヤー7(アプリケーション層)で動作する。クライアントデバイスとサーバ間で通信する全てのアプリケーションが、通信の度に暗号化と認証のためにTLSセッションを確立する必要がある。
「SSL-VPN」と呼ばれるVPNにおいても、現在実際に使われている暗号化技術はTLSだ。実態はTLSでありながらも、「TLS-VPN」や「SSL/TLS-VPN」という呼称よりもSSL-VPNという用語が広く定着している。
VPNとは
VPNとは、実際のネットワークに安全な仮想ネットワークを構築する技術、またはそのネットワーク自体を指す。VPNはトラフィックを暗号化して、アクセス制御を適用することでセキュリティを強化する。これにより、基盤となるネットワークインフラが安全ではない場合でも、機密性の高い通信経路を確立できる。
2つの拠点間を物理的に接続する回線である「専用線」の代わりにVPNを使用する理由は、通常、実現の難易度とコストだ。全てのテレワーカーのために専用線を敷設するのは不可能だ。コストが高過ぎる。テレワーカーが利用する家庭用ネットワークと、企業の社内ネットワークを専用線で接続するWAN(ワイドエリアネットワーク)の構築は不可能ではないが、非常に高額になる。
次回はVPNを用途に応じて解説する。
TechTarget発 先取りITトレンド
米国Informa TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣 -
製品資料
[サイボウズ株式会社] AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
4
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
5
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
-
6
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
7
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
8
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
9
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
10
【漫画付き】ひとり情シス協会が明かす、RAG導入でしくじる企業「2つの共通点」
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー