「VPN」が危険な理由と「ZTNA」移行の利点は? IAMの主要トレンドまとめ「IAM」トレンド予測9選【後編】

不正アクセスのリスクを減らすには「IAM」(IDおよびアクセス管理)への取り組みが重要になる。IAMについて今知っておくべき動向とは何か。VPNからZTNAへの移行など、主要トレンドをまとめた。

2025年04月07日 05時00分 公開
[Phil SweeneyTechTarget]

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 ID(アイデンティティー)が流出すれば、大きな攻撃につながりかねない。IDを守るためには、「IAM」(IDおよびアクセス管理)への取り組みが鍵を握る。IAMを巡るトレンドとして何を押さえておくべきなのか。本稿は、調査会社やコンサルティング会社などのセキュリティ専門家が予測するIAMトレンドのうち、6つ目から9つ目までを紹介する。

6.脱VPNからのZTNA移行 メリットは?

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)を機に、VPN(仮想プライベートネットワーク)の導入が広がった。しかしVPNを狙った攻撃も活発化し、VPNのセキュリティリスクが指摘されるようになった。VPNをより安全なツールに置き換える選択肢として、「ZTNA」(ゼロトラストネットワークアクセス)が登場している。

 ZTNAには例えば、設定されたセキュリティポリシーが許可するまでトラフィック(ネットワークを流れるデータ)を制限する機能がある。そのトラフィックに関与する全てのユーザーのIDを検証し、アクセスを許可した後でも変更がないかどうかを再度検証する。これは社内外を問わず、全ての通信を怪しいと見なす「ゼロトラストセキュリティ」の考え方に基づいている。

 「VPNでは一度システムに入り込めば、ずっと居残れる」と、コンサルティング会社General Dynamics Information Technology(GDIT)のバイスプレジデント、マシュー・マクファデン氏は説明する。一方で「ZTNAではユーザーからデバイス、アプリケーション、データまで、あらゆる情報が何度も検証される」(同氏)

 近年、ZTNAの製品化も進んでいる。例えば、Amazon Web Services(AWS)のアクセス管理サービス「AWS Verified Access」や、セキュリティベンダーPalo Alto Networksの「SASE」(セキュアアクセスサービスエッジ)製品「Prisma Access」にZTNAの機能が採用されている。

7.「シングルサインオフ」の登場

 1度の認証で複数のシステムにアクセスできる手法として、「シングルサインオン」(SSO)がある。SSOにひも付いて、次は「シングルサインオフ」が登場する可能性があると、調査会社Gartnerのセキュリティアナリスト、フェリックス・ゲートゲンス氏は語る。シングルサインオフとは、ユーザーが複数のシステムにSSOでアクセスした際、1度のログアウトで複数のシステムを閉じられる仕組みだ。技術基盤としてシングルサインオフを可能にするのは、開発中の「継続的アクセス評価プロファイル」(CAEP:Continuous Access Evaluation Profile)だという。

 CAEPを使用すれば、システムにアクセス中のデバイスのセキュリティポリシーに反する挙動を検出し、セッションを閉じることができる。「IDプロバイダーとSaaS(Software as a Service)プロバイダー間で、リアルタイムにリスクについて信号を送り合える」(ゲートゲンス氏)。MicrosoftやGoogle、Appleなどが、CAEPの採用を進めている。2025年から2026年にかけて普及が始まると同氏は予想する。

 もう一つ、注目すべき動きが、新たなIDセキュリティ標準「IPSIE」(Interoperability Profile for Secure Identity in the Enterprise)の策定だ。非営利団体OpenID Foundationが立ち上げたワーキンググループには、MicrosoftやGoogleの他、ID管理サービスを提供するOktaが参加。IPSIEによって、複数のIDを一つにまとめるための技術開発に取り組んでいる。

 ログアウトを適切に管理しなかったり、定期的に再認証を要求しなかったりする場合、攻撃を招く恐れがある。

8.自動化の推進

 大半の企業がIDセキュリティに十分に取り組めていない。その理由は、実施すべきことが多岐にわたり、持っているリソースでは対応し切れないことだ。その解決策として期待されているのは、タスクを自動化できるIAMツールの導入だ。GDITのマクファデン氏は、IAMの取り組みを「可能な限り自動化する」よう勧める。

9.MFAの強化

 セキュリティを強化するために「MFA」(多要素認証)を導入する企業が広がっている。MFAツールは、パスワード入力だけではなく、ユーザーに複数の異なる認証要素の提供を要求する。しかし近年、MFAツールを狙った攻撃も活発化している。例えば、認証済みのユーザーに向けたテキストメッセージを傍受しようとする攻撃がある。組織は「MFAを無効にする攻撃に耐性のある『耐フィッシングMFA』(Phishing-Resistant MFA)に取り組むことが重要だ」(マクファデン氏)

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