2つのロードバランサーを比較【後編】
ロードバランサー、L4とL7の違いは? 「Web閲覧を高速化」するならどっち?
サービスの安定運用に欠かせないのが「ロードバランシング」(負荷分散)だ。ネットワーク層とアプリケーション層での違いや使い分け、代表的な製品やツールを紹介する。
「ロードバランシング」(負荷分散)とは、ユーザーからの膨大なリクエストを、分散した複数のサーバに効率よく振り分けることによってサービスの応答性や可用性を確保する仕組みだ。特にクラウドサービスやWebアプリケーションを含めて構成が複雑になる中で、ロードバランサー(負荷分散装置)による処理はますます重要になっている。
ネットワークロードバランシングとアプリケーションロードバランシングという2種類のロードバランシングがある。ネットワークロードバランシングは「OSI参照モデル」(OSI:開放型システム間相互接続)の第4層(レイヤー4、トランスポート層)で機能し、アプリケーションロードバランシングは第7層(レイヤー7、アプリケーション層)で機能する。
2つのロードバランサーのどちらを使用すればいいのかを決める観点に加え、選択肢としてどのような製品やサービスがあるのかを本稿で解説する。
レイヤー4とレイヤー7、どちらの負荷分散を使用するか
ネットワークロードバランシングとアプリケーションロードバランシングには、利用するシステムの特性に応じて得られるそれぞれの利点がある。ネットワークロードバランサーは、リクエスト内容を解析せずに転送するため、処理が高速だ。これはリアルタイム性が求められる用途に適している。一方、アプリケーションロードバランサーは、リクエストの内容に応じて最適なサーバに振り分けるため、リソースの有効活用や全体の処理効率を高めるのに有効だ。
ネットワークロードバランシングとアプリケーションロードバランシングのどちらを選択すべきかは、状況によって異なる。例えば、以下が判断材料になる。
- Webアプリケーションやクラウドサービス、オンプレミスシステムに格納されている情報の種類
- ユーザーのアクセス目的
- トラフィック(ネットワークを流れるデータ)の規模
米ニュースメディア「CNN」のWebサイトを例に挙げよう。CNNのWebサイトを訪れる目的は、たいてい最新ニュースの閲覧だ。中には特定の記事へのリンクをクリックして直接アクセスするユーザーもいるが、多くはトップページを表示し、そこから記事を選択する。後者のケースでは、アプリケーションロードバランシングはあまり効果的ではない。なぜなら、リクエストは単に「CNN.com」のトップページへのものであり、ユーザーがどの記事を読むかといった詳細情報は含まれていないからだ。こうした状況では、リクエストを複数のサーバに均等に振り分けて全体のパフォーマンスを最適化する、ネットワークロードバランサーの方が適している。
一方、オンラインショッピングにおける「Amazon.com」のWebサイトへのリクエストには、買い物客が探している商品カテゴリーの情報が含まれているケースが多い。このような場合は、アプリケーションロードバランシングが効果を発揮する。ユーザーの関心に応じて、該当する商品ジャンルを扱うサーバに最初のリクエストを振り分けることで、応答速度の向上が期待できる。
併せて読みたいお薦め記事
連載:2つのロードバランサーを比較
負荷分散の仕組みをさらに広く
ネットワークとアプリケーションのロードバランサー
有料か無料かを問わず、さまざまな種類のロードバランサーが利用可能だ。アプリケーションロードバランシングまたはネットワークロードバランシングのどちらか一方にしか対応していない製品もあれば、両方に対応している製品もある。以下に、人気のある商用ロードバランサーをアルファベット順で紹介する。
- Akamai Technologies
- Akamai NodeBalancers
- Microsoft
- Azure Load Balancer
- Barracuda Networks
- Barracuda Load Balancer ADC
- Cloudflare
- Cloudflare Load Balancing
- Google
- Cloud Load Balancing
- DigitalOcean
- DigitalOcean Load Balancers
- Amazon Web Services
- Elastic Load Balancing
- F5
- F5 Big-IP、F5 NGINX One、F5 Distributed Cloud DNS Load Balancer
- Fastly
- Fastly Load Balancer
- Citrix Systems(Cloud Software Group傘下)
- Netscaler ADC
- Progress
- Progress Kemp LoadMaster
- VMware(Broadcom傘下)
- VMware Avi Load Balancer
「HAProxy」「Relianoid」「Traefik Proxy」など、オープンソースのロードバランシングツールには、無償で利用できるバージョンが提供されている。商用製品の中にも、Progress Kemp LoadMasterのように無料版を用意しているものがある他、評価目的で使えるトライアル版や、一定期間のみ利用可能な時間制限版を提供しているベンダーもある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
TechTarget発 世界のインサイト&ベストプラクティス
米国TechTargetの豊富な記事の中から、さまざまな業種や職種に関する動向やビジネスノウハウなどを厳選してお届けします。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
事例
[アルプス システム インテグレーション株式会社] 中小企業でも安心して活用できる「手ごろなSOCサービス」とは? -
製品資料
[株式会社シーイーシー] 脱VMwareに成功した企業は何をどう実践した? 事例に学ぶ戦略立案&実装のコツ -
製品資料
[株式会社オービックビジネスコンサルタント] ランサムウェア攻撃を“二重の防御構造”で防ぐ、クラウド型基幹システムの実力 -
製品資料
[株式会社オービックビジネスコンサルタント] 動画で知るランサムウェア被害企業のリアル、会計データが無事だった理由とは -
市場調査・トレンド
[セコムトラストシステムズ株式会社] EDR導入を成功に導くロードマップ:選定/稟議/運用のつまずきを防ぐコツ
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
2
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
3
LINEヤフーはなぜ「社内の管理者」すら信用しないインフラを作ったのか
-
4
鹿島建設のDXを阻む「10年前のAWS」 安全性と自由度を両立したモダナイズ
-
5
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
6
「Excel管理」では限界――製造現場の改善が進まない“隠れた原因”
-
7
慶應義塾が「Notion」を選んだ理由 AI導入の盲点になる“情報のサイロ化”
-
8
生データを隠してデータ連携 KDDIが4000万人の顧客情報を安全に分析できた理由
-
9
日本HP×大塚商会が明かす「AI時代のPC選定の落とし穴」とは
-
10
Microsoft製品でここまで自動化できる 情シスがやめられる手作業10選
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
DX/AI投資の壁を突破、現代の最高財務責任者が直面する課題と克服のヒント
-
3
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
4
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
5
システムの保守がモダン化を阻む? 「変えない判断」から脱却する方法とは
-
6
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
7
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
8
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
9
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー