自律型エージェント時代に「人間」がやるべきこと
1年で50万時間を消し去ったSalesforceの「AI活用術」 カギは“4つの役割分担”
Salesforceは、AI時代における人材と組織の変革を支援する「AI Fluency Playbook」を公開した。生成AI活用の成熟度向上とビジネス活用を成功することを目的としている。具体的な内容は。
Salesforceは2026年1月8日(米国時間)、「AI Fluency Playbook」(以下、プレイブック)を公開した。生成AI(AI:人工知能)ツールやアシスタントの使用だけでなく、ビジネスにおけるAI活用を発展させるためのものだという。プレイブックには具体的にどのような情報が含まれているのか。
プレイブックの中身は?
併せて読みたいお薦め記事
Salesforceの関連記事
「AI Fluency」は、以下の三要素で構成される。「人間とAIエージェントの導入を成功に導く、人間、AIエージェント、ビジネススキルの熟達度」とSalesforceは定義している。
- AIを触り、使ってみる「エンゲージメント」
- AIを業務に活用する「アクティベーション」
- 従業員のスキルや知見とAIが持つスキルで構成する「専門知識」
Salesforceの最高人事責任者(CPO)ナタリー・スカルディーノ氏は次のように述べる。「AIフルエンシーを正しく実現できれば、従業員は毎日AIを学び、使い、AIを構築するようになる。AIエージェント時代に成功するためには、AIフルエンシーへの投資、初心者の心構えで生涯学び続ける姿勢を持つことが不可欠だ」
「AIの革新的な使い方を自ら実践するマネジャーの下で働く従業員は、そうでないマネジャーの下で働く従業員に比べ、エンゲージメントが22ポイント高いことが分かった。つまり、マネジャーの役割はこれまで以上に重要になっている」(スカルディーノ氏)
Salesforceの顧客Pearson VUEの最高人事責任者、アリソン・ベボ氏も次のように語る。「今重要なのは学習の俊敏さだ。学ぶ力、適応力、コミュニケーション力、批判的思考といった人間的スキルは、AIエージェント時代において重要だ」
Salesforceは、日常的にAIを使用するメリットについても言及している。2025年6月にSlackのWorkforce Labが公開した調査結果によると、AIを日常的に使用している従業員の業務生産性は64%、集中力が58%、仕事の満足度が81%向上するという。この調査は、2025年4~5月、オーストラリア、フランス、ドイツ、日本、英国、米国の就業者5156人を対象に実施された。
プレイブックは、AIと人間の役割を以下の4つに分類している。
| AIの役割 | 人間の役割 |
|---|---|
| ツール | オペレーター |
| アシスタント | 委任者 |
| 貢献者 | パートナー |
| カタリスト | 預言者 |
プレイブックは、Salesforceの自律型AIエージェント「Agentforce」を「カスタマーゼロ」(最初の顧客)として活用した経験を基に作成されたという。同社によると、Salesforce従業員の85%は「日常業務でAIを使うことに自信を持っている」と回答した。さらに、Slackと連携したAIエージェント群を使うことで以下を実現したという。
- 1年間で50万時間以上の業務時間を削減
- 営業部門が19万件以上のリードを処理
- カスタマーサポート部門の200万件超の問い合わせを処理
Salesforceはこのプレイブックを、「従業員が自信を持ってAIと協働し、迅速かつ大規模にビジネス上の成果を生むための実践ガイド」と評す。同社はさらに、「AIに精通した人材を育成できた企業は、より高い成長を実現し、優秀な人材を引き付け、『働きがいのある企業』としての地位を確立できる」と主張する。
プレイブックの発表に当たり、Salesforceの最高人事責任者(CPO)ナタリー・スカルディーノ氏は、Salesforceの顧客企業の代表者を招いたラウンドテーブルを開催した。参加企業には、人材紹介会社Adecco Groupや、同社がSalesforceと出資して設立したAI特化のソフトウェア/コンサルティング企業r.Potentialが含まれている。
ラウンドテーブルでは、r.Potentialのグレッグ・シューメーカー氏(CEO)と、Adecco Groupのピエール・マチュシェ氏(ITおよびデジタルトランスフォーメーション担当上級副社長)が、以下について説明した。
- AI導入の成功は技術よりも戦略に左右される
- 人間の知能とAIを適切に組み合わせ、それぞれを正しく位置付ける必要がある
「従業員の意識は改善し、ツールの利用も進み、生産性も向上している。一方、自分の仕事がどうなるのかという不安も存在している」。シューメーカー氏はこう語る。
しかし問題はAIそのものではなく、トップからの説明や理解が不足していることにあるとシューメーカー氏は指摘する。「多くの企業では戦略が欠けている。この変化をどう乗り越えるのか、組織に伝えていくのか。これらを説明するリーダーを支援する仕組みが不足していることが課題だ。AIをITプロジェクトやソフトウェアの導入のように扱っている企業は苦戦している。一方で、組織の能力を新たに構築、再構成すると捉えている企業は滞りなく運用を進められている」
マチュシェ氏は次のように述べる。「AIエージェントは業務の流れの中に自然に組み込まれていることが非常に重要だ」。続けて、「どの意思決定をAIエージェントに委任できるのか、人間が引き続き責任を負うべき領域はどこか、AIエージェントが代理で行動するとはどういう状態なのか。多くの組織は、壊れたプロセスをそのままにAIエージェントを導入しようとする。しかしこれではうまくいかない。Adecco Groupでは、まず業務プロセスを修正し、標準化することから取り組んできた」
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[ファインディ株式会社] AI利用率だけでは説明できない成果 開発組織の競争力を生む「開発資本」とは? -
製品資料
[ニュータニックス・ジャパン合同会社] AI活用を成功へ導く、シンプルで費用対効果に優れたクラウド基盤とは? -
製品資料
[ニュータニックス・ジャパン合同会社] マネージドKubernetesには限界も――メリットをフル活用する新たな選択肢とは? -
技術文書・技術解説
[ニュータニックス・ジャパン合同会社] 決断の日が迫る「vSphere 8」サポート終了問題 考慮すべきリスクと選択肢は? -
製品資料
[サイバーソリューションズ株式会社] メール誤送信対策のルールが肥大化 苦しむ情シスはどうすれば救われるのか?
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
半数がブルーカラー転向を視野に? ベテランエンジニアを追い込む“54歳の壁”
-
2
「アップグレードできないJava」をどう守る IBMとRed HatがAIで400件超修正
-
3
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
4
パッチなしで「今すぐサーバを落とせ」 Kiteworks異例警告の波紋
-
5
「企業におけるAI導入検討度とIT投資優先度」に関するアンケート
-
6
「サイバー犯罪株式会社」に潜入 現地調査で判明した“犯罪者求人”の実態
-
7
祝10周年! 創業者も予想できなかったRaspberry Pi活用例
-
8
kintoneで実践 製造業のための「見積もり管理」改善のヒント
-
9
OpenAIやAnthropicでさえ制御不能 2026年夏「3大サイバー攻撃」の衝撃
-
10
私も“AIエージェント開発者”に? 裾野を広げる「Agent Bricks」とは
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365のメールセキュリティ、3つの“死角”と追加で検討すべき対策とは
-
4
システムの保守がモダン化を阻む? 「変えない判断」から脱却する方法とは
-
5
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
6
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
-
7
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
8
Linux初心者でも知らないとまずい「RHEL」「SLES」の違いとは?
-
9
東大教授と考える、AI時代の「データ主権」「信頼性」「ガバナンス」の在り方
-
10
マンガで学ぶXDR/MDRのメリット、中小企業のセキュリティ強化になぜ有効か?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー