AI活用の目的と予算の再定義が必要に
生成AI導入が「利益を食いつぶす」? ガートナーが警告する3ドルの壁と死角
「人件費の削減のために生成AIを導入する」という考えは、成り立たなくなる可能性がある。Gartnerは2030年までに生成AIのコストが人件費を超えると試算した。企業のAI活用方針は今後どうすべきか。
調査会社Gartnerは2026年1月26日(米国時間)、消費者向けビジネス(BtoC)の顧客サービスで生成AIによる問題解決1件当たりのコストが2030年までに3ドルを超え、オフショア(海外)の担当者に業務を委託するよりも高くなる傾向が生じるという見通しを明らかにした。
Gartnerは顧客サービスにAIシステムを利用する際のコストが今後急増すると予測している。その要因として、データセンターコストの高騰やAIベンダーの事業モデルが収益性重視に転換すること、AIシステムで解決する課題の複雑化を挙げる。複雑な用途ほど、トークン(単語や記号といった生成AIで処理するデータの最小単位)の消費が増加し、高度なIT人材が必要になる。
生成AIの利用コストを増加させる、さらなる懸念事項
Gartnerは、2028年までにAI技術関連の各国の法規制がサービス提供者に対し、「人間と話す権利」を保証することを求めるように変更されると予測する。これに伴い、人が対応しなければならない顧客サービスの対応件数が30%増加するという。「顧客がAIシステムによる応対を拒否する権利を行使するようになれば、顧客サービスを担当する人材を増やしたり、賃金を引き上げたりする必要が生じる」と、Gartnerの顧客サービス・サポートプラクティス担当のシニアディレクターアナリスト、パトリック・クインラン氏は言う。
生成AIの利用方針の転換が企業の競争力強化の鍵に
生成AIの利用コストが上昇することで、企業は自動化によるコスト削減を断念し、他の目標を目指すようになる。AI技術を問題解決のためだけでなく、顧客ジャーニー(製品やサービスに対する認知から購入までの過程)全体を通じて価値を創造するために活用する企業は、競争力を強化する好機となる。
クインラン氏はこう説明する。「企業の顧客サービスの責任者は、AIシステムを活用したコスト削減に意欲的だが、その投資対効果は不透明だ。完全な顧客サービスの自動化を実施しようとすると、結果的にほとんどの企業にとって法外な費用がかかる」
AI活用に先進的な企業は、コスト削減のためではなく、顧客エンゲージメント(顧客との結び付き)の向上を図るためにAI技術を活用するようになるとクインラン氏は予測する。「パーソナライズされたサービスを顧客が期待するようになれば、こうしたサービスをいち早く手掛けた企業が競争優位に立つ。企業の顧客サービスのリーダーは、コストの最適化にとどまらず、顧客体験や再購入率、ブランドイメージの向上といった成果を目指すようになるだろう」と、クインラン氏は述べる。
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