評価を守るほど成長は遠のく?
元Facebook人事が明かす、キャリアで差がつく「崖から飛び降りる」思考法
元Facebookの人事担当者でスタートアップの立ち上げにも参画したモリー・グラハム氏は、キャリアは段階的に積み上げるものではなく、リスクを伴う挑戦によって非連続に成長すると指摘した。その実現に必要な3つの要素とは。
キャリアは階段のように積み上げるもの――そう考える人は多い。学校、就職、昇進と段階を踏めば成功に近付くという見立てだ。この「階段型キャリア」は見通しを立てやすく安心しやすい。一方、成長の幅を制限する側面もある。自身の価値を役職や評価に委ねてしまう構造にもなりやすい。
こうした前提に対し、現代において優れたキャリアを築くのは「階段を上るのが上手な人ではなく、リスクを取れる人」と主張するのは、モリー・グラハム氏だ。同氏は、Facebookで人事として勤めた後、コンテンツコラボレーションツールベンダーQuipで最高執行責任者(COO)に従事。Quipはその後Salesforceに売却された。同氏のキャリアは一見すると順風満帆だが、その内実は、意図的に「安定を手放す選択」を重ねてきた結果に過ぎない。同氏はどのようなリスクを取り、それをキャリアの転機へとつなげてきたのか。
非連続なキャリア構築を恐れないための3つのポイント
グラハム氏のキャリアを象徴する出来事が、25歳のときに経験した転機だ。当時、同氏はFacebookの人事部門で順調にキャリアを積んでいたが、別部門の新規プロジェクトへの参画を打診された。内容は未経験の領域であり、成功の見通しも立たない。周囲からは「やめた方がいい」との助言が相次いだ。
それでも同氏は、この誘いを受け入れた。しかし、その後に待っていたのは順調な成長ではなかった。新しい環境では、自身の能力を発揮できず、常に「何も分からない状態」に置かれたという。プロジェクト開始から数カ月は成果を出せず、評価も大きく下がった。約9カ月にわたり、失敗が続いている感覚に苦しんだ。
転機は、ある重要な会議だったという。複雑な議論をリードする役割を任され、そこで初めて成果を出すことができた。その瞬間、自身の中で「できる」という感覚が戻ったという。この経験をきっかけに、同氏は新たな環境での自信を獲得し、その後のキャリア機会も大きく広がった。
この一連の経験が示すのは、成長は階段のように連続的に積み上がるものではないという点だ。むしろ、一度大きく後退したように見える局面を経て、一気に跳ね上がる「ジャンプ型」で訪れる。安全な環境にとどまる限り、この跳躍は起きにくい。
では、こうした「非連続な成長」を実現するためには何が必要なのか。グラハム氏は以下3つを紹介している。
1.飛び降りる力
優れたキャリアは「階段を上る」ではなく「リスクを取れる」かどうかで決まるとグラハム氏は強調する。多くの人は必要だからではなく、「失敗が怖い」という理由で現状にとどまる。しかし、リスクには種類がある。生活基盤を揺るがすリスクは避けるべきだが、「失敗するかもしれない」という恐怖は、むしろ挑戦すべきサインだ。この違いを見極めることが出発点になると同氏は述べる。同氏はこれを「jumping off cliffs」(崖から飛び降りる)と表現する。
2.落下に耐える力
新しい環境に飛び込むと、誰もが一度は“できない自分”に直面する。評価が下がることもある。重要なのは、この状態を異常と捉えないことだ。感情は日々変動するため、短期的な不安で判断せず、一定期間は継続するという視点が欠かせない。
3.「プロのバカ」になる力
未知の領域では、初歩的な質問を繰り返すことになる。しかし、多くの人は無知を露呈することを恐れ、質問を控えてしまう。結果として学習速度が落ちる。一方で、あえて「分からない」と言える人は、周囲の知識を引き出しやすく、短期間でキャッチアップできるとグラハム氏は指摘する。
この3点は、いずれも従来の「評価を維持する行動」とは相反する。だが、評価を守ることを優先する限り、大きな成長は得られない。むしろ、一時的に評価が下がる局面を受け入れられるかどうかが、その後のキャリアの分岐点になるというのがグラハム氏の主張だ。
さらに重要なのは、「成功の定義を自分で決める」ことだ。高い役職や報酬を得ても満足できないケースは少なくない。従来の階段を登り切った先に、自分が望む状態があるとは限らないためだ。非連続な挑戦を重ねる中で、自分にとっての成功を再定義する必要がある。
グラハム氏の主張を情報システム部門に置き換えるとどうなるか。新技術の導入、部門横断の調整、業務の再設計といった領域は、いずれも「正解が見えない崖」だ。既存業務の延長で対応する限り、評価は安定するが、役割は固定化する可能性がある。一方で、あえて未知の領域に踏み出すことで、組織内での価値を向上させることができる。
評価される情シスは、必ずしも最初から高度なスキルを持っているわけではない。むしろ、「分からないことを認め、聞ける」「一時的な不安定さを受け入れられる」といった行動特性が、結果として差を生んでいる場合がある。キャリアの伸びは、能力そのものよりも、こうした意思決定の積み重ねによって決まると言える。
本稿の内容は、2024年12月に公開された「Forget the Corporate Ladder ――Winners Take Risks」で共有されたものだ。
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