AIツールの導入が進む中、これまで重宝されていた定型業務を担う人材の需要が減っている。調査によれば、多くの企業が採用ターゲットを根本から見直している。生き残るために必要な、人間ならではのスキルとは。
AI(人工知能)技術の急速な普及は、企業の業務プロセスだけではなく人材戦略にも大きな転換をもたらしている。人材紹介会社パーソルキャリアが運営する転職サービス「doda」は、AI時代における採用や人材育成への影響を把握するため、「AI活用実態と人材戦略に関する調査」を実施した。調査期間は2026年2月25〜26日、対象はAIツールを導入している従業員数501人以上の企業で採用に関わる正社員515人だ。
調査結果によると、AIツールの導入によって半数以上の企業が中途採用人数に変化があったと回答している。具体的には、「データおよびデジタル/IT企画系職種」などの採用が増加する一方で、「定型/ルーティン業務中心の職種」や「バックオフィス職種」の採用が減少傾向にある。AIツールで代替できる業務と人間が担うべき業務の選別が、採用市場で明確に進み始めている。
単に「AIツールが使える」だけでは評価されない時代は目の前に来ている。企業が求める真の「AI人材」の要件と、若手社員の育成に潜む新たなリスクを掘り下げる。
AI導入企業において、中途採用のターゲット(求める人物像)が「大きく変わった」「一部変わった」と答えた企業は75.1%に達した。企業が求めているのは、単なるAIツールの操作スキルではない。AIツールを活用した上で「どのような実績を具体的に残せたか」、そして「今後どのような価値を発揮できるか」という一段高い成果創出能力だ。約7割の企業でAIツール活用スキルの要求水準が高まっており、AIツールの利用を前提として業務を設計、推進できる人材が不可欠になっている。
この傾向は新卒採用にも波及している。新卒採用基準を見直した企業は6割を超え、そこで重視される能力のトップは「コミュニケーション力/対人調整力」(49.8%)だった。次いで「情報を適切に取捨選択、検証する力(情報リテラシー)」や「新しい技術やツールを自ら学ぶ力」(どちらも49.4%)が続く。AIツールが論理的な文章の作成やデータ処理を担うようになる中、人間にしかできない対人折衝や、AIツールの出力を評価、活用する能力への期待が高まっている。
業種別の状況に目を向けると、導入フェーズの違いが採用計画に色濃く表れている。IT/通信業界では「全社横断で活用している」割合が26.2%と他業界をリードしており、「データまたはデジタル/IT企画系職種」の採用を増やした企業が69.2%に達した。一方で、同業界では「バックオフィス職種」や「クリエイティブ職種」の採用減少が他業界よりも際立っている。金融業界では「企画/戦略立案職種」の採用が増加する半面、「定型/ルーティン業務中心の職種」の採用減少が目立つ。
AIツールの導入は、新卒3年以内の若手社員の業務内容も変容させている。約6割の企業が若手社員に任せる仕事内容が変化したと回答した。具体的には、「AIを活用しながら進めることを前提とした新しい業務が増えた」(44.0%)、「教育・OJTの中でAI活用を前提とした業務設計に変わった」(40.1%)といった声が上位に挙がった。定型業務がAIに代替されることで、若手であっても企画や判断など、より高度な思考力を要するタスクが前倒しで求められている。
しかし、こうした効率化は新たな組織課題を生み出している。企業が感じるAIツールの活用推進における課題として、「使いこなせる人とそうではない人の差が広がる」といったスキル格差への懸念が強い。さらに深刻なのが「AIツール依存による成長機会の減少」だ。特に若手社員に対しては、「AIツールに依存し過ぎることで、経験が蓄積されにくくなる」「思考力や判断力の低下につながる」といった懸念が一般社員に対するそれよりも高い割合で現れている。若手のうちに試行錯誤を通じて培われるはずの基礎能力が、AIツールへの過度な依存によって育たない「経験の空洞化」が危惧されているのだ。
AIツール導入企業の6割以上が、2029年までの中途採用人数においても変化が生じると見込んでいる。現在と同様にデータ/DX(デジタルトランスフォーメーション)人材の需要増と定型業務の縮小というトレンドは継続する見通しだ。
企業はAIツールによる生産性の向上を追求する一方で、人間が担うべき創造性や対人コミュニケーションの価値を再定義するフェーズに入った。今後は、高度なAIツールを全社横断で使いこなす環境整備とともに、AIツールに過度に依存しない「人間の成長」を促す新たな教育/評価制度の構築が急務になる。
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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
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