900時間かかる面接を高速化
JCBが挑む「AI面接」でのミスマッチ解消 学生の心理的ハードルへの対策は?
限られた選考時間では企業の魅力が伝わり切らない――。JCBはこの課題に対し、「AI面接」を導入し、従業員と学生が直接対話できる時間を捻出した。学生の不安を解消しつつ、公平な選考を進める工夫とは。
新卒採用において、いかに学生とのミスマッチを防ぎ、相互理解を深めるかは企業にとって共通の課題だ。クレジットカードブランドを運営するジェーシービー(JCB)は、2026年卒の新卒採用選考から、HR(人的資源)ツールベンダーのタレンタが国内展開する録画型デジタル面接システム「HireVue AIアセスメント」を導入した。これによって、選考プロセスの見直しを図っている。
これまでJCBは、2025年卒採用まで選考プロセスの一部に人事部以外の現場従業員による面接を組み込んでおり、約900時間を費やしていた。従業員は面接に加えて、入社前の不安を解消するキャリアアドバイザー制度やOBOG訪問などにも協力している状況だった。しかし、自身の業務に加えて面接の担当業務が重なることで、学生と直接対話するOBOG訪問などの機会を受ける従業員が減少しつつあったという。
一方で、学生からは「事業内容をもっと知りたい」という要望が寄せられていた。採用イベントなどの限られた時間では、JCBが展開する幅広い領域を十分に伝え切れず、現場で働く従業員がリアルな情報を伝える機会を同社は模索していた。
そこでJCBは、AIを活用した録画型面接システムを導入することで、現場従業員による面接を廃止した。これによって捻出した約900時間を、学生の事業理解を助けるOBOG訪問やキャリアアドバイザー制度に加え、新たな企画に充てる体制を整えた。
AI技術を用いた自動評価システムによる選考は効率化の手段として注目されているが、JCBの狙いは単純な面接の手間や人手の削減だけではない。同社の選考プロセスには、学生の不安を取り除き、本来の魅力を引き出すための独自の工夫が隠されている。
行動事実に基づき、公平に評価するAI
今回導入されたHireVue AIアセスメントは、構造化面接の手法を用いて社会人基礎力(コンピテンシー)を自動判定する仕組みだ。候補者はスマートフォンやPCで、時間や距離の制約を受けずに受検可能だ。HireVue AIアセスメントが搭載するAIモデルは、プロの面接官の評価基準を学習している。これによって、単なる印象による評価ではなく、候補者の回答内容に含まれる行動事実に基づいて、実力を定量的に評価することが可能になる。結果として、評価のバイアスを排除し、高精度で公平かつ公正な選考を実現できる。
JCBの人事部採用・研修グループは、学生がこれまでの人生で何を得て、どのような考えを持っているのかといった人となりを重視している。HireVue AIアセスメントを導入した後もこの方針は変わらない。成功体験だけではなく、失敗からどう成長し、どう考えるようになったのかを問うことで、学生の人物像に触れる選考を目指す。録画型の面接は、学生が自分のタイミングで受検できる点で、学生の選考体験に配慮して時間を尊重するという同社の考えに適合している。
不安を取り除く「学生目線」の工夫
録画型の面接は比較的新しい手法であり、受検する学生にとって心理的なハードルになる懸念がある。この点に対し、JCBは明確な対策を講じている。動画選考がプロセスに含まれることを公表した上で、動画共有サービスの採用公式チャンネルで対策動画を公開しているのだ。
学生が動画選考の受け方や自己アピールの方法について戸惑うことを見越し、事前にしっかり準備できる条件を整えた。この取り組みは、学生目線で「受けやすい選考」にすることを意識した結果だ。採用活動に対する学生の声を引き続き集め、不便な点があればタレンタや開発元のHireVueと連携して速やかに解消する方針だ。
採用後を見据えた評価基準の構築
JCBは現場従業員面接を廃止したことで浮いた人的リソースを活用し、2027年卒採用では、通常のプログラムとは別に、企業理解をより深められる新たなOBOG訪問プログラムを準備することを計画している。人的リソースを本当に必要な学生とのコミュニケーションに振り向けることで、採用活動の質を高める狙いがある。
「採用して終わり」ではなく、入社後の活躍までを見据えた活用も展望している。入社後の実際の活躍状況と、システム受検時の評価データを照らし合わせることで、「どのような評価を受けた人材が活躍しやすいか」を根拠を持って示せるようにする構えだ。
AIツールを活用しつつ、限られた時間の中で自分を伝えなければならない場として、人による面接も選考プロセスに残している。学生が本来の自分を出し切れる仕組みづくりを進めると同時に、採用担当者自身も学生の魅力を引き出す能力を磨き続ける必要があるとJCBは考える。時代の変化に合わせて、学生のためになるよう企業も変化していく姿勢が、今後の採用活動において重要になる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
TechTarget ニュースプラス
国内のIT業界ニュースを迅速に報道します。企業動向から導入事例、市場トレンドまで幅広く取り上げ、実務に直結する情報をタイムリーに提供する連載です。
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[ファインディ株式会社] AI利用率だけでは説明できない成果 開発組織の競争力を生む「開発資本」とは? -
製品資料
[ニュータニックス・ジャパン合同会社] AI活用を成功へ導く、シンプルで費用対効果に優れたクラウド基盤とは? -
製品資料
[ニュータニックス・ジャパン合同会社] マネージドKubernetesには限界も――メリットをフル活用する新たな選択肢とは? -
技術文書・技術解説
[ニュータニックス・ジャパン合同会社] 決断の日が迫る「vSphere 8」サポート終了問題 考慮すべきリスクと選択肢は? -
製品資料
[サイバーソリューションズ株式会社] メール誤送信対策のルールが肥大化 苦しむ情シスはどうすれば救われるのか?
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
半数がブルーカラー転向を視野に? ベテランエンジニアを追い込む“54歳の壁”
-
2
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
3
OpenAIやAnthropicでさえ制御不能 2026年夏「3大サイバー攻撃」の衝撃
-
4
IT製品の導入に関するアンケート「セキュリティ」編
-
5
積水化学が挑む「データ経営」の核心:SAP S/4HANA Cloud導入の狙いとは
-
6
LINEヤフーはなぜ「社内の管理者」すら信用しないインフラを作ったのか
-
7
パッチなしで「今すぐサーバを落とせ」 Kiteworks異例警告の波紋
-
8
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
9
「中堅製造業にSAP S/4HANA導入は難しい」は本当か?
-
10
【専門家に聞く】シャドーAIや過剰共有のリスクを防ぎ、安全に生成AIを活用するポイントとは?
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
2
Microsoft 365のメールセキュリティ、3つの“死角”と追加で検討すべき対策とは
-
3
システムの保守がモダン化を阻む? 「変えない判断」から脱却する方法とは
-
4
AI駆動攻撃にどう対抗する? 超速の攻撃からエンドポイントを保護する方法
-
5
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
6
プログラミング不要で誰でも実現できる、ネットワーク運用管理の自動化とは
-
7
Linux初心者でも知らないとまずい「RHEL」「SLES」の違いとは?
-
8
東大教授と考える、AI時代の「データ主権」「信頼性」「ガバナンス」の在り方
-
9
「IT史に名を残すシステム障害」8選
-
10
最速72分でデータが流出? 最新の脅威トレンドや侵入手法から分かった防衛策
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー