企業の採用活動をスムーズにするための11個のベストプラクティス自社の採用プロセスを見直す

人手不足に直面する中で、自社に適した人材の採用はより難しくなっている。しかし採用活動を改善すればより多くの候補者に出会える可能性がある。採用プロセスの見直しに役立つ11個のベストプラクティスを紹介する。

2025年12月10日 15時45分 公開
[Eric St-JeanTechTarget]

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 従業員の採用プロセスを効率化することは、事業部門の採用担当者や人事部門にとって、依然として大きな課題だ。企業は手作業のプロセスや求人への応募の少なさ、期待に応えない人事システムなど、さまざまな問題に直面している。

 万能な解決策は存在しないが、採用を容易にするためのベストプラクティスが幾つかある。企業は、自社にとって最も効果的な方法を見極め、効率的な採用プロセスを確立し、最適な候補者を見つける必要がある。本稿は、採用プロセスのベストプラクティスを紹介する。

採用プロセスを見直す11個のベストプラクティス

1.内部プロセスの見直しと効率化

 採用プロセスから無駄を排除するために、全てのステップを見直す。付加価値を生まない作業は削減するか、自動化する。具体的には、冗長な承認フローの削除や、従来手作業で実施していた作業をソフトウェアで自動化することなどが挙げられる。

2.採用管理システム(ATS:Applicant Tracking System)の活用

 ATSは、採用プロセスで発生する手作業の自動化や求人情報と候補者情報の集中管理、候補者へのリマインダーや通知の送信といった機能を提供する。定期的にATSの使い方や機能を見直し、自社のニーズに合っているか確認することが重要だ。

3.候補者とのオープンな対話

 採用プロセスを通じて候補者とコミュニケーションを取り続けることで、彼らの関心を引き続けることができる。企業にとって優先順位の高い候補者は他に複数の転職先の選択肢を持つ傾向にあり、現職にとどまることを決める可能性もある。候補者に感謝し、求職にかける時間を尊重する姿勢を示すことは、採用担当者だけでなく企業全体の印象を良くする。

4.AI(人工知能)技術の活用

 さまざまなソフトウェアベンダーが、AI機能を既存のソフトウェアに追加している。AI機能は履歴書のレビューやランク付け、候補者の情報収集、求人広告の改善を支援する。

5.トレーニング

 採用プロセスに関わる全員に、適切なトレーニングを実施する。トレーニングの対象には、人事チームや採用担当者、経営者、現場の従業員が含まれる。全員が何を期待されているかを理解することで、採用プロセスは円滑に進む。

 トレーニングが重要である理由は幾つかある。まず、採用プロセスには順守すべき法的要件がある。トレーニングで従業員に労務に関する法規制を周知することで、既存の従業員が新しく入社した従業員にとって有害な言動をすることを防ぎ、企業の評判を守るのに役立つ。次に、従業員は採用活動で良いアンバサダー(大使)になり得る。従業員に採用活動に関するノウハウを提供することで、成果を上げることができる。採用担当者に対して、バイアス(偏見)を避けるためのトレーニングを施すことも重要だ。

6.会社を宣伝する

 候補者が新しいポジションを探すときは多くの選択肢があるため、企業は他社と差異化を図る必要がある。採用ページをWebサイトに作成するときは、空きポジションの掲載だけでなく、組織文化を強調し、働く環境を具体的に説明することが重要だ。チームでの働き方やプロジェクト内容、採用後の期待について語る動画の作成も検討する価値がある。ソーシャルメディアや印刷物の活用も有効な手段だ。

 候補者は入社の意思決定前に、社外のWebサイトやソーシャルメディアで企業の評判を確認することがある。そのため採用担当者は、こうしたWebサイトでのコメントや評価も確認する必要がある。

7.時間の管理

 採用業務の最中に、候補者の管理や採用関係者との連携、他のプロジェクトなどさまざまな業務が発生することがある。リクエストが入るたびにタスクを切り替える誘惑を避け、一つのタスクに集中することで、より多くの成果を上げることができる。

8.事業部門と人事部門で密に連携を取る

 事業部門の採用担当者は、人事部門に募集中のポジションの状況をメールや定期的な会議、ATSのレポートを通じて知らせることが重要だ。積極的なコミュニケーションとタイムリーな更新は、採用担当者との信頼関係を築き、期待通りの結果が得られない場合に調整する機会を提供する。

9.優秀な候補者に時間を投資する

 採用活動の目的は、適切な人材を採用することだ。1時間の面接では、企業と候補者の双方が十分に理解し合うには時間が足りない。また、候補者が企業やポジションについて学び、質問する時間も限られる。

 30分の事前オンライン面談を試み、職務への適性や候補者のスキルを確認するのは、候補者への理解を深める有効な手段の一つだ。最初の対面面接では、事前面談の内容を基に話を進める。候補者を絞り込んだ後は、複数のチームメンバーが候補者と会う機会を設けるとよい。これは候補者のことをより多面的に知ったり、多くのチームメンバーに紹介したりすることに役立つ。

10.候補者の能力を探る

 自社の文化や価値観に合い、労働倫理と継続的な学習の姿勢を持った候補者を探すことが重要だ。限られたスキルのみに焦点を当てるのではなく、広い視野で候補者を評価すべきだ。

 例えばJavaプログラマーを採用する場合、そのプログラミング言語の知識は必須だ。特定のデータベースやアプリケーションサーバに関する知識といった二次的なスキルは、関連技術に関する確かな基礎知識があれば、それほど重要ではない可能性がある。

 入社者が企業文化に適合し、優れた従業員であることを保証できれば、必要に応じて新しいポジションに異動させることができる。一方でスキルセットが狭い候補者は、企業の変化に対して機敏に適合できない可能性がある。

11.オンボーディング(新人研修)ツールの活用

 新入社員のスムーズな就業を支援するために、研修コンテンツやマニュアルの提供、入社手続きの自動化を支援するオンボーディングツールを活用するのが理想的だ。これは、候補者や人事部門、採用担当者、組織内の他の従業員にとって、入社者の研修プロセスを効率化する手段になる。

 採用プロセスのベストプラクティスを見直すことは、現行プロセスを改善したい場合に良い出発点になる。これにより、考慮していなかった項目を浮き彫りにできる。ベストプラクティスのリストがあれば、それらの項目をどのように実施すべきか、そしてそれらを企業の文化に合わせてどのようにカスタマイズできるかを検討し、組織の目標達成に役立てることが可能だ。

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