企業向けAI基盤「Gemini Enterprise Agent Platform」発表
「質問に答えるAI」から「業務を動かすAI」へ Googleの新AI基盤は何がすごい?
Googleは、企業向けAI基盤「Gemini Enterprise Agent Platform」を発表した。複数のAIエージェントを連携させ、企業データを活用しながら継続的に業務を実行する仕組みを提供する。
企業向けAI(人工知能)市場で、「AIアシスタントを導入する」段階から、「複数のAIエージェントを連携させて業務を自律実行させる」段階へと競争軸が移り始めている。こうした中Googleは、企業向けAI基盤「Gemini Enterprise Agent Platform」(以下、Gemini Enterprise)を発表した。単体のAIチャットではなく、複数のAIエージェントを連携・管理し、企業データと結び付けながら長期的に動作させる構想だ。2026年4月22日(米国時間)、年次カンファレンス「Google Cloud Next」で発表された。
Google Cloud CEOのトーマス・クリアン氏は、Gemini Enterpriseについて「データ、人、業務目標をつなぐ“接着剤”になる」と説明した。従来のAI活用では、個別のAIアシスタントが単発の質問に応答する形が中心だった。一方、本構想においては、複数のAIエージェントが役割分担しながら、継続的に業務を進めることを想定している。
Googleの新AI基盤は何がどうすごい?
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Gemini Enterpriseは、既存のAI開発基盤「Vertex AI」に構築したものだ。特徴の1つが、「AIエージェント同士の連携」を前提にしている点にある。
例えば、あるAIエージェントが情報収集を担当し、別のAIエージェントが分析を実施し、さらに別のAIエージェントがレポート作成を担うといった形で、複数のAIエージェントが連携して処理を進める。
Googleは、こうした連携を制御するために、グラフベースの新しい開発フレームワークを導入した。これによって、どのAIエージェントがどの処理を担当し、どのタイミングで別のAIエージェントへ処理を引き継ぐのかを明確化できるという。
さらに注目されるのが、「長期記憶」の仕組みだ。従来のAIチャットでは、会話が終わると文脈が失われることが多かった。だがGoogleは「Memory Bank」や「Memory Profiles」と呼ばれる機能を導入し、ユーザー情報やプロジェクト履歴を長期間保持できるようにした。これにより、AIエージェントが過去のやり取りを踏まえて業務を継続することを目指す。
「AIの暴走」をどう防ぐか
AIエージェントの活用が広がるほど、企業にとって問題になるのがガバナンスだ。どのAIエージェントが、どのデータへアクセスし、どの処理を実行したのかを追跡できなければ、情報漏えいや誤動作のリスクが高まる。
Googleはこの課題に対応するため、「Agent Identity」「Agent Registry」「Agent Gateway」といった管理機能を追加した。各AIエージェントに暗号学的なIDを付与し、どのAIエージェントがどの操作を実施したのかを追跡可能にする。さらに、AIエージェントに適用するポリシーを一元管理する仕組みも導入した。
AIエージェントの管理機能そのものは新しい概念ではない。だが、調査会社Futurum Groupのアナリスト、ブラッドリー・シミン氏は、Gemini Enterpriseの特徴について、「AIエージェントだけでなく、ツールやスキル、「MCP」(Model Context Protocol)サーバまで統合的に管理しようとしている点」にあると指摘する。
企業データをどうAIにつなぐか
AIエージェントの精度を左右するのは、「どの企業データにアクセスできるか」だ。Googleはこの点でも機能を強化した。
Google Cloud Storage(GCS)には、「Smart Storage」と呼ばれる機能を追加した。これは非構造化データを解析し、自動でメタデータや文脈情報を生成する機能だ。この情報をAIエージェント向けの「Knowledge Catalog」と連携させることで、AIエージェントが企業データを理解しやすくする。
「囲い込み」ではなくマルチクラウドへ
興味深いのは、Googleが「自社クラウドだけで完結する世界」を前面に出していない点だ。
新機能には、異なるクラウド環境をまたいでデータ管理できる「クロスクラウドデータレイクハウス」機能が含まれる。さらに、Gemini Enterprise Canvasでは、Microsoft 365形式へのエクスポートにも対応した。
クラウドベンダー各社は、AIエージェント市場で競争を激しい競争を繰り広げている。一方で、企業の現実として、単一クラウドだけでシステムを統一しているケースはそれほど多くない。Googleの今回の動きは、「『マルチクラウド前提』でAIエージェント基盤を広げようとしているようにも見える」という専門家の声もある。
AIエージェント活用が本格化すれば、企業は単に「AIを導入するか」ではなく、「どのデータにアクセスさせるか」「どこまで自律実行を許可するか」「誰がAIエージェントを管理するのか」という新たな判断を迫られる可能性がある。Googleの今回の発表は、その競争が「AIモデルの性能」から、「AIエージェントの運用基盤」へ移り始めていることを示している。
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