トークンコストで絶望しないために【前編】
気づけば請求額が爆発 LLMコストを膨らませる4つの落とし穴
LLMの利用拡大に伴い、入力・出力トークンの消費増加が課題となっているという声がある。トークンの請求額を膨らませる4つの要因と、増大を誘発させる従業員のアクションを紹介する。
トークンは、大規模言語モデル(LLM)が処理・生成するテキストの基本単位だ。プロンプトと回答に含まれる単語はトークンに分割され、その量に応じて課金される。
この支出を改善する手法に「トークンマキシング」(Tokenmaxxing)がある。トークンマキシングは、本来は従業員がAI使用量を競って「Token Legend」などのリーダーボード上位を狙い、トークン消費を最大化する行動を指す言葉として広まった。しかし、CFO(最高財務責任者)へのAIコスト説明を求められるCIO(最高情報責任者)の間では、より少ないトークンで最大の成果を出すコスト最適化を意味する用法も生まれている。本記事は後者の文脈で、トークンの請求額を膨らませる要因と、無駄な消費を引き起こすアクションを紹介する。
トークンマキシングの壁となるアクションは?
併せて読みたいお薦め記事
AIツール利用の勘所を把握する
LLMの取引には2つの側面がある。入力トークンは、システムプロンプト、会話履歴、参照文書、ユーザーのクエリなど、モデルに送信される全てをカバーする。出力トークンは回答をカバーし、モデルやプロバイダーにもよるが、通常は入力の2倍から4倍のコストがかかる。
価格はLLMの階層によっても異なる。最先端のフロンティアモデルは、小規模モデルよりも1000トークン当たりの単価が大幅に高い。
Deloitte Consultingで米国ハイブリッドクラウドインフラリーダーを務めるクリス・トーマス氏は、LLMをデプロイする方法によってもコストは変わると指摘する。オンプレミス、パブリッククラウドのAPI、コロケーションでは、同じモデルでもコストが異なる。「LLMで浪費してしまう理由の1つは、コスト構造全体でトークンがどこでどのように生成されるかを組織が理解していないことだ」とトーマス氏は言う。
トークンの請求額を膨らませる4つの要因
基本料金以外にも、トークンの請求額を膨らませる4つの隠れた要因がある。
1.プロンプトが長すぎる
毎回の呼び出しで、全文書やフィルタリングしていない検索結果全体をプロンプトに入力すると、1回あたりの入力トークン数が急増する。
2.文脈を毎回再投入する
呼び出しごとに同じシステムプロンプトやコンテキストを再送すると、同一トークンに繰り返し料金を支払う状態となる。
3.出力長の制限を明示しない
出力長の制限を明示しないと、LLMは必要以上に長いテキストを返す傾向がある。
4.AIエージェントを無駄にループさせてしまう
AIエージェントに明確な終了条件を設けないと、AIエージェントは再計画(re-plan)やモデル再呼び出し(recursive calls)を繰り返し、トークンのコストは爆発的に増える。
コスト増大につながるアクションは?
コストに影響する要因を知ることは重要だが、トークンの請求額を膨らませる行動を誘発させないことも大切だ。
「最大の浪費は会話ではなく構造にある」。ヘルスケアや非営利セクターでCIOやCTOを歴任したOrdovera Advisoryのマネジングディレクター、ブライアン・フェンディング氏はこのように説明する。「3パラグラフで済ませられるプロンプトのはずが、例えばクエリに入力するたびに50ページの文書を読み込むシステムを運用しているのであれば、設計段階の判断ミスでトークンを無駄に消費している状態だ」
AT&TのリードデータAIエンジニアであるモニカ・マリク氏は、一般的な導入環境で見られる複数の非効率なパターンとして以下を挙げる。
- 過剰なコンテキストを入力している
- 必要なのは一部であるにもかかわらず、文書全体や長いチャット履歴をプロンプトに流し込む。
- デフォルトで最上級モデルを使用する
- 分類、抽出、要約、ルーティングなどの作業は、安価なモデルで十分対応可能だ。
- RAG(検索拡張生成)の状態が不適切
- 検索するデータの中に不要なものが混ざっている。あるいは、フィルタリングやランキングをせずに生のテキストをそのまま渡している。
- プロンプトが肥大化している
- システムプロンプトや書式ルールを際限なく追加し、テンプレートがコスト高でメンテナンスが困難になっている。
- キャッシュを使っていない
- プロンプトや要約を再利用せず、呼び出しのたびに出力を再生成させている。
「LLMの導入初期は、コストを意識した設計よりも、導入の速さを優先しがちだ」。マリク氏はこう指摘する。しかし、利用規模が拡大すればコストは積み上がる。ソフトウェアベンダーJellyfishでAI研究の責任者を務めるニコラス・アルコラーノ氏は、「過剰にトークンを使っている状態からは、タスクの定義不足や不要な入力の繰り返しがうかがえる」と指摘する。
後編では、トークン量を抑制するための施策を紹介する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
TechTarget発 先取りITトレンド
米国TechTargetの豊富な記事の中から、最新技術解説や注目分野の製品比較、海外企業のIT製品導入事例などを厳選してお届けします。
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
急増する「AIはこう言ってる」マン 判断を狂わせる「AI忖度」を防ぐには?
-
2
取手市がVDIと決別した理由 更改費用「4倍超」を約1.7倍に圧縮
-
3
「データストレージの活用方法」に関するアンケート
-
4
自宅のWi-Fiが「遅い」「途切れる」本当の原因は? Dellが推奨する鉄則
-
5
本当に安いPCで十分か? “すぐ重くなる”を防ぐノートPC選びの絶対条件
-
6
Claudeの不可視透かしに批判殺到 著作権消失や誤判定に潜む企業リスク
-
7
100億円の「Linux更新」を回避 みずほ銀行が選んだ“おきて破り”のRHEL延命策
-
8
221人調査で分かった「情シス最大のストレス」は?
-
9
LLMの「過学習」、正しく説明している文章はどれ?
-
10
レガシー基幹システムをSAPに統合 山善が突き止めた「標準化と個別最適」の境界線
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
年収2000万「クラウドセキュリティのプロ」になれる資格とは
-
2
セキュリティソフトをすり抜ける標的型攻撃メール、不審メールの見破り方とは?
-
3
Windows Updateの通信集中で回線が逼迫、ネットワーク刷新事例に学ぶ解決策
-
4
財務を戦略的組織へ進化させるAI活用術、4つの主要な障壁と解消方法
-
5
「NAS」「SAN」「DAS」は何が違う? いまさら聞けないストレージの基礎
-
6
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
7
標的型攻撃メールを見破るには? サンプル文面を例に傾向を解説
-
8
商用利用の安全性を確保し大量のコンテンツを高速で生成する、AI活用の秘訣
-
9
マンガで解説、1日で生成AI環境を構築できるワークショップの中身とは?
-
10
Dark AIが台頭する時代の新発想、「より高度なAIで対抗する」具体的方法とは?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー