ITフリーランス市場1.2兆円突破へ
腕が良くても「コミュニケーション難」は契約終了 単価増でも欲しいフリー人材は
ITフリーランス市場は2026年に1.2兆円規模へ拡大し、開発現場の9割が生成AI活用に前向きな姿勢を示す。一方で、単価上昇が続く裏側で「コミュニケーション難」を理由とした契約終了が相次ぐなど、人月モデルの限界も露呈している。人材供給が頭打ちとなる2028年を前に、情シスが確保すべき真の高度人材像が浮き彫りとなった。
「高い単価を払ってでも、プロジェクトを完遂できる『当たり』の人材が欲しい」。そうした情シス部門の切実な声が、統計データからも裏付けられた。ITフリーランス市場は2026年に1兆2000億円規模にまで膨らみ、もはや外部人材の活用なしに企業のDXは立ち行かない。一方で、生成AIの急速な普及により「ただコードが書けるだけ」の人材の価値は、かつてないほど揺らいでいる。
本記事では、最新の市場調査から判明した、7割の企業が単価を上げてでも求める「高度人材」の条件と、スキル以前の理由で「契約終了」を突きつけられるエンジニアの共通点を解説する。人材供給が頭打ちとなる「2028年の壁」を前に、情シスが今確保すべき人材とは。
ITフリーランスの契約更新を見送った理由は?
人材サービス業を展開するエンが運営する『フリーランススタート』の調査によると、ITフリーランス市場は拡大を続けている。2026年の市場規模は1兆2209億円に達する見通しで、2016年の7641億円と比較すると約1.6倍となる予測だ。
この10年間の成長背景には、企業のDX推進やSaaS企業の急成長に伴うIT人材需要の高まりがある。さらにコロナ禍を経てリモートワークが定着したことで、フリーランスとして活動するエンジニアの裾野が広がったことも大きな要因となっている。
一方で、市場の構造は大きな転換点を迎えている。調査結果では「米国を中心にAIエージェントの急速な実用化が進み、コーディングやテスト工程の代替が可能になったことで、人月モデルの有効性が問い直されている」と分析されている。市場が求める人材像は、単純な「労働力の量」から「専門的な質」へと明確にシフトしつつある。
開発現場の9割が生成AIに前向き、「活用必須」も4割に
開発現場の生成AIの活用方針については、企業の姿勢が鮮明になった。調査対象の42.7%が「業務効率化のため、活用を強く推奨・必須としている」と回答。「セキュリティルールを守った上であれば活用を許可している」(48%)と合わせると、9割以上の企業が生成AIの活用に前向きな姿勢を示している。
ITフリーランスを活用する目的については、「特定の開発スキル」(50.7%)や「特定の業界経験」(45.2%)が上位を占めた。正社員採用が困難な中で、即戦力となるスペシャリストを外部に求める傾向が続いている。
7割の企業で単価上昇、「コミュニケーション難」は契約終了の対象に
賃上げや物価高のトレンドを受け、ITフリーランスへの月次発注単価も上昇している。7割以上の企業が単価の引き上げを実施したと回答した。人材の活用満足度も76.9%と高く、企業側は一定のコスト増を受け入れつつ、外部人材を積極的に活用している実態が浮かび上がる。
しかし、高い報酬を払う一方で、企業側の選別は厳しさを増している。ITフリーランスの契約更新を見送った理由として最も多かったのは「報告・連絡・相談などのコミュニケーションに難があった」(48.0%)で、「期待した成果物・スキルレベルに達していなかった」(39.2%)を上回った。どんなに優れた技術力があっても、チーム開発を阻害する「コミュニケーションの欠如」は、契約終了の決定的な理由となっている。
迫りくる「2028年の壁」、供給高止まりでエージェントの重要性増す
今後の見通しとして、デジタル人材のフリーランス比率は2031年に15.5%を超え、同年の市場規模は1兆3795億円に達すると予測されている。ただし、国内の人口減少に伴い、ITフリーランス人口は2028年以降、伸びが緩やかになり、2031年には約17万2873人でほぼ横ばいになるとみられている。
供給が頭打ちになる中で、ハイスキルな人材の確保はさらに困難になる。同調査の責任者であるエンの相場敏行氏は「単に人員数をそろえる人月モデルから、高い生産性と専門性を持つ人材への集中という質的転換が本格化しつつある。スキルセットの精緻(せいち)な評価や、的確なマッチングを実現できるエージェントの価値がいっそう高まるだろう」としている。
調査概要
ITフリーランスを活用している企業515社の担当者515人を対象に、2026年3月23日~24日の期間、インターネットリサーチ(マクロミル)で実施。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
TechTarget ニュースプラス
国内のIT業界ニュースを迅速に報道します。企業動向から導入事例、市場トレンドまで幅広く取り上げ、実務に直結する情報をタイムリーに提供する連載です。
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣 -
製品資料
[サイボウズ株式会社] AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
【漫画付き】ひとり情シス協会が明かす、RAG導入でしくじる企業「2つの共通点」
-
4
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
5
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
6
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
7
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
8
BMWも導入 78兆円市場に化ける「フィジカルAI」の衝撃
-
9
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
10
「AI活用を前提とした業務PCへの移行」に関するアンケート
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー