統制と利便性を両立する最適解

横行する「野良AI」の恐怖 三菱重工が全社AIインフラを“自作”した本当の理由

各事業部門が独自に生成AIを導入する「野良AI」は、セキュリティ統制を破壊する重大なリスクだ。この危機に直面した三菱重工業が、全社共通のAIシステムを内製した理由に迫る。

 生成AIの急速な普及は、現場の業務効率化を後押しする一方で、IT部門に新たな頭痛の種をもたらしている。各事業部門が独自の判断で無数の生成AIツールを導入することで生じる「個別最適化」や、セキュリティおよび運用ルールの統制が完全に効かなくなる懸「野良AI」(シャドーAI)のリスクだ。

 多岐にわたる事業分野を持ち、各事業部門が独立して運営されている大手重工業メーカーの三菱重工業は、こうしたリスクに直面していた。同社では、顧客からの問い合わせ処理や作業依頼の管理が個人の電話やメールに依存しており、処理履歴などのナレッジが分散し、業務の属人化が深刻な問題になっていた。各部門が個別に十分なIT人材を確保することは難しく、全社横断的な対処が急務だった。

 このガバナンス崩壊の危機を打破するため、三菱重工業のデジタルイノベーション本部は大きな決断を下す。既存のパッケージツールを部門ごとに導入するのではなく、クラウドサービス群「Amazon Web Services」(AWS)を活用し、全社共通のITインフラやAIワークスペースをスクラッチで内製開発する方針を固めたのだ。しかし開発チームには、フロントエンドのノウハウはあっても、インフラやバックエンド、最新のAI技術に関する知見が不足していた。

 知見が不足する中、三菱重工業はどのようにしてAWSや生成AIの技術を吸収し、開発プロセスを高速化したのか。先行リリースからわずか2週間で2000人以上のアクティブユーザーを獲得し、チャット利用回数1万5000回を記録した新システムの裏側に迫る。

知見不足からのスタート

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