Excel台帳管理の改善も
大阪広域水道企業団、RPAで月288時間削減 IT未経験の職員が自ら開発できた理由
大阪広域水道企業団は、ノーコードRPAを導入し、工事検査に伴う事務作業を自動化した。専門的なIT知識を持たない現場職員が業務シナリオを内製し、繁忙期に月間288時間相当の削減効果を得た。成果獲得の背景は。
大阪広域水道企業団は、ノーコード対応のRPA(ロボティックプロセスオートメーション)ツール「ロボオペレータ」を導入し、工事の検査に伴う事務作業を自動化した。4種類の業務シナリオを運用し、繁忙期において月間288時間相当の業務削減効果を確認したという。
特徴は、ITの専門知識を持たない現場職員が、業務の整理からRPAのシナリオ開発、稼働後の改善までを主導した点にある。本件で成果を挙げるまでに実施した取り組みを紹介する。
現場主導で進めた自動化内製化の全貌
大阪広域水道企業団は2010年、大阪府水道部の事業を引き継ぐ団体として、大阪市を除く府内42市町村が共同で設立した特別地方公共団体だ。水道水を市町村に供給する用水供給事業と、工場などに水を届ける工業用水事業を担っている。
現在は、府内の市町村が運営する水道事業を段階的に統合する「府域一水道」の実現に向けて事業を拡大している。こうした統合の進展に伴って工事件数が増え、浄水場や管路の大規模工事を検査する広域事業部技術管理課では、検査関係事務の処理量が増加していた。
同課では、検査記録を「Microsoft Excel」(以下、Excel)の台帳で管理している。職員は検査台帳への入力に加え、検査関係書類のPDF化や決裁システムへのアップロードといった作業を手作業で実施していた。
工事が集中する1月から3月には、月間300~400件の検査処理が発生する。毎日1~2人の職員が定型作業に張り付き、それでも残業が発生する状態が続いていた。統合が進めば処理件数はさらに増えると見込まれる一方、単純に人員を増やして対応することは難しかった。
「誰でも作れる」「オンプレミス」「伴走支援」を重視
同企業団は、増加する定型業務を自動化するため、RPAの導入を検討した。採用したのは、PKSHA Associatesが提供し、パナソニック デジタルが導入と運用を支援する「ロボオペレータ」だ。選定では、主に3つの条件を重視した。
1つ目は、ITの専門知識がない職員でも、直感的にシナリオを作成・管理できることだ。特定の担当者だけが扱えるツールでは、その担当者の異動によって運用が続けられなくなる恐れがある。そこで、現場の複数の職員が開発や修正に関われる操作性を求めた。
2つ目は、オンプレミス環境で稼働できることだ。同企業団では、クラウドサービスの利用がデータに関するセキュリティポリシーに抵触する可能性があり、組織内の環境でRPAを動かせることを必須条件とした。
3つ目は、開発や運用を支えるサポート体制だ。導入担当者は、RPAに関する知識がほぼない状態から検討を始めた。そのため、単にツールを提供するだけでなく、現場が自力でロボットを開発、運用できるようになるまで伴走する支援を評価した。
人の判断と定型作業を切り分ける
同企業団は2025年7月、ロボオペレータのトライアルを開始した。最初に取り組んだのは、既存業務の整理だった。
パナソニック デジタルが提供したExcelシートを使い、人手で実施している一連の作業を言語化して分類した。これにより、「繰り返し実行できる定型作業」と「職員による判断が必要な作業」を切り分け、自動化できる範囲を明確にした。
業務フローを整理した後は、現場担当者が自ら業務シナリオを設計し、それに沿ってロボットを作成した。操作方法は短期間で習得でき、担当者は他の職員でも開発できるとの感触を得たという。
開発中に分からない点が生じた場合は、メールでパナソニック デジタルに問い合わせた。サポートエンジニアから迅速に回答を得ながら、トライアル期間中に業務フローの整理と主要シナリオの開発を完了した。2025年10月に本導入を決定し、同年11月から本番稼働を開始した。
内製化が稼働後の改善を速める
本番稼働後は、繁忙期が始まる2026年1月に向けて、2025年12月中に対象となる全ての業務シナリオを作成した。
稼働初期にはエラーが発生することもあったが、現場担当者がパナソニック デジタルから助言を受けながらシナリオを修正し、改善を繰り返した。シナリオ開発を外部事業者に全面委託せず、業務を理解する職員が内製したことで、問題の発見から修正までを短期間で進められたという。
その後、同企業団は4種類の業務シナリオを運用している。RPAによる削減効果は、合計で月間288時間相当に上った。これは、従来、繁忙期に毎日1人以上の職員が定型作業に張り付いていた業務量とも、おおむね一致するという。
定型作業をRPAに移したことで、職員は工事の技術的な確認や管理など、それぞれが本来担当するコア業務に時間を使えるようになった。
Excel台帳も見直し、完全自動化へ
同企業団は今後、2026年度の繁忙期に向けて、RPAのシナリオだけでなく、自動化の対象となるExcel台帳そのものも改善する。
導入初年度は、エラーが発生した際に職員がすぐ対応できるよう、RPAの動作を見守りながら運用していた。今後はシナリオの精度を高め、人による確認を減らし、より完全な自動化に近づける方針だ。
浄水場や各事業所など、他部署への横展開も検討する。単にRPAツールを配布するのではなく、業務を整理し、自動化できる部分を見極め、現場で改善を続けるという一連の進め方を組織内に広げる考えだ。
人員を増やすだけでは処理し切れない業務量の増加に対し、現場自身が業務を見直して自動化する体制を構築した大阪広域水道企業団。今回の取り組みは、IT人材が限られる公共団体や水道事業者が、定型業務の削減と自動化の内製化を両立させる一例となりそうだ。
(※)この記事は本多和幸氏と谷川耕一氏によるIT事例メディア「CaseHub.News」に掲載された「大阪広域水道企業団、RPAで検査業務を自動化 月288時間削減」(2026年8月6日)を、TechTargetジャパン編集部で一部編集し、転載したものです。
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