「教える側」ばかりが疲弊する現状
先輩エンジニアの8割が育成に重圧 半数が「評価・給与に反映されない」不満
IT人材不足が深刻化する中、開発現場の若手や中堅エンジニアにとって後輩の育成は重要な業務だ。しかし、指導者は「評価されない」という不満や重圧を抱えている。現場を疲弊させる構造的な課題とは。
開発現場の第一線で活躍する若手・中堅エンジニアにとって、後輩の育成は避けて通れない重要な業務だ。しかしその裏側では、ITエンジニアの8割以上が後輩指導に強い負担を感じているという実態が浮き彫りになった。その半数近くが「指導が自分の評価・給与に反映されない」という現状に悩んでいることも判明した。
本稿で取り上げるのは、エンジニア向け転職サイト「キッカケエージェント」を運営するキッカケクリエイションが2026年4月7~8日に実施した「ITエンジニアの『後輩指導』に関する実態調査」だ。対象となったのは、直近2年以内に新卒・中途を問わず後輩や部下の指導・育成に関わった経験を持つ、25~39歳のITエンジニア300人だ。
現場の善意や個人の自助努力に依存した育成体制は限界に近づいており、組織的な支援の欠如が指導者のモチベーション低下を招きかねない状況になっている。後輩に「本当は言いたいけれど言えない」先輩エンジニアの切実な本音とは何か。育成を個人の負担から組織の力に変えるための構造的な課題と解決への糸口を探る。
評価されない育成業務の限界
調査結果によると、後輩や部下の指導に対して「非常に負担を感じる」(28.7%)、「やや負担を感じる」(52.7%)と回答した割合は、合計で81.4%に達した。大半のエンジニアが、日々の業務の中で育成に対する重圧を感じていることが分かる。
この負担の根底には、企業の評価制度や支援体制の不備がある。指導に負担を感じる理由として最も多く挙げられたのは、「指導したことが自分の評価・給与に反映されないから」で48.0%だった。次いで、「自分の業務と並行して指導時間を確保しにくいから」が45.1%となっている。
企業からの評価や支援が「不十分だ」と認識している割合は32.3%(「あまりそう思わない」23.0%、「全くそう思わない」9.3%)を占める。その支援不足の理由としては、「社内に指導マニュアルや育成カリキュラムがないこと」(48.5%)や「指導にかかる時間・工数が業務として認められないこと」(46.4%)が上位に並んだ。自身の業務目標を達成しつつ、評価対象外の育成業務を属人的なノウハウでこなさなければならないという実態が、現場に重くのしかかっている。
擦れ違うコミュニケーション
こうした余裕のない状況は、先輩と後輩のコミュニケーションにも摩擦を生んでいる。回答者の75.3%が、後輩に対して「直接言えていないが、本当は伝えたいこと」があると答えた。具体的に伝えたい内容のトップは、「質問する前に自分なりの仮説を持ってきてほしい」で52.2%と過半数を占めた。これに「同じことを何度も聞かずにメモを取ってほしい」(39.8%)、「分からないまま長時間悩まず、早めに相談してほしい」(39.4%)が続く。
調査の自由回答では「事前に調べた上で質問して欲しい」といった切実な声が寄せられた。手取り足取り教える時間を確保できない中で、後輩に「主体的に考える習慣を身につけさせること」(43.7%)や、「指示内容やゴールの認識のずれを防ぐこと」(40.3%)に多くの先輩エンジニアが苦労していることがうかがえる。
負担感の裏にある成長の実感
一方で、指導の難しさに直面しながらも、先輩エンジニアは後輩への配慮を欠かしていない。後輩に指導やフィードバックをする際に意識していることとして、「1on1やレビューなど二人きりの場を選んだ」(39.3%)、「具体的な改善アクションとセットで伝えた」(38.3%)、「相手の良い点も合わせて伝えるようにした」(35.3%)といった実践的な工夫が上位に並んだ。
後輩の指導経験が「自分自身のエンジニアとしての成長に役立っている」と感じる割合は、「非常にそう思う」(22.7%)と「ややそう思う」(56.7%)を合わせて79.4%に達する。強い負担感の中にも、教えることを通じて自らも新たな気付きを得て学ぶという、成長実感が併存していることが明らかになった。
現場のエンジニアは、正当な評価や明確な業務工数が伴わない条件でも、後輩の成長のために日々知恵を絞っている。しかし、個人の責任感や善意だけに依存した育成体制は、長期的には教える側の疲弊を招き、組織全体の活力を削ぐリスクをはらんでいる。
企業に求められるのは、指導を担う従業員の貢献を人事評価に正式に組み込み、育成業務を業務工数として明確に認める制度設計だ。それと同時に、育成カリキュラムの整備やメンター制度の導入など、指導の属人化を防ぐ仕組みを構築することが急務だ。現場の負担を軽減し、育成文化を組織全体の強みに転換することが、今後のIT企業における競争力の源泉になる。
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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
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