AWS、Azure、Google Cloud接続を一元化
ANAが専用回線から移行した「NaaS」の全貌 ネットワーク準備が数カ月から数週間に
全日本空輸(ANA)は、旅客サービスを支えるネットワークの柔軟性向上に向けて、エクイニクスの「Equinix Fabric」を採用したと発表した。ネットワーク基盤移行の経緯を紹介する。
エクイニクスは2026年8月6日、全日本空輸(ANA)が旅客サービスを支えるネットワーク基盤を刷新する目的で、エクイニクスの「Equinix Fabric」を採用したと発表した。
ANAは、Equinix Fabricを活用し、集中管理型のクラウドネットワークハブを構築。アプリケーションの開発やテストに必要なリソースを利用可能にするためのネットワーク構築期間が約80%短縮した。同社は5年間の総保有コスト(TCO)の30%削減を目指す。ANAが抱えていた課題や導入決定までの経緯を説明する。
「数カ月」を「数週間」に 移行の全体像
ANAは約280機の航空機を保有し、200以上の路線を運航している。予約や搭乗手続き、顧客とのコミュニケーション、運航管理など、旅客サービスを支えるシステムには高い可用性と耐障害性が求められる。
一方、事業の拡大に加えてハイブリッドクラウドやマルチクラウドの利用が広がり、ネットワークの構成は複雑になっていた。
事業の拡大やマルチクラウド化に伴ってネットワークが複雑になり、新しいシステムを追加するたびに回線の構築や管理に時間とコストがかかる――。こうした課題に直面したANAは、従来の専用回線を中心としたネットワークを見直し、「Network-as-a-Service」(NaaS)を活用した基盤へ移行した。
システムごとの専用回線が拡張の足かせに
ANAが従来採用していたのは、個々のシステムに専用回線を用意するネットワークアーキテクチャだった。システムの数が少ない段階では管理できても、接続先や利用するクラウドが増えるにつれて、個別の回線や設備を追加する必要が生じる。
その結果、ネットワークを拡張するほど構成が複雑になり、コストも増加する。新たなアプリケーションを開発、検証する際にも、必要なネットワーク環境を用意するまで時間がかかっていた。
世界で流通するデータ量が今後10倍に増えると見込まれる中、ANAにとって従来型のネットワークをそのまま拡張し続けることは、将来的な成長やデジタルサービスの迅速な展開を妨げる要因になりかねなかった。
そこでANAが選んだのが、ネットワーク機能をサービスとして利用するNaaSへの移行だった。
ANAデジタル変革室デジタルガバナンス部ITインフラチームのマネージャー、中里潤氏は、急速な事業拡大に伴って従来以上の柔軟性がネットワークに必要になったとして、既存環境を拡張し続けるのではなく、NaaSを導入することが「唯一の現実的な選択肢」だったと説明している。
AWS、Azure、Google Cloudへの接続を集約
ANAはEquinix Fabricを基盤として、集中管理型のクラウドネットワークハブを構築した。
Equinix Fabricは、ネットワーク接続をソフトウェアで設定、管理できるインターコネクションプラットフォームだ。ANAはこれを利用することで、新たな物理回線をその都度敷設することなく、「Amazon Web Services」(AWS)や「Microsoft Azure」「Google Cloud」などの主要なクラウドサービスへオンデマンドで接続できる環境を整えた。
個別のシステムごとに回線や設備を用意する構成から、接続をクラウドネットワークハブに集約する構成へ切り替えた格好だ。
この仕組みでは、プライベート接続に加え、ネットワークポリシーを集中管理できる。エクイニクスによると、最新のセキュリティフレームワークとの整合性も確保し、セキュリティやコンプライアンスへの対応を図っているという。
ネットワーク準備を「数カ月」から「数週間」に
ネットワークの構築方法を変えた効果の1つが、アプリケーション開発やテストに必要な環境を用意するまでの時間の短縮だ。
従来は必要なネットワーク環境を構築するのに数カ月かかっていたが、新基盤では数週間まで短縮した。エクイニクスは、ネットワーク構築期間として約80%の短縮につながったとしている。
接続先を追加するたびに物理回線を構築する必要がなくなれば、アプリケーションのテスト開始までの待ち時間を減らしやすくなる。ANAはこうした機動性を、新しいアプリケーションやサービスを早期に展開するための基盤として活用する考えだ。
クラウド環境同士を接続しやすくすることで、旅客向けサービスの統合やリアルタイムの運航連携にも役立てる。
さらにANAは、このネットワーク基盤を高度なデータ分析や業務自動化、次世代AIのワークロード処理にも利用する方針だ。
クラウドの利用範囲が広がるほど、システムごとに専用回線を追加するネットワークは管理が難しくなりやすい。ANAの事例は、ネットワークを個別に「構築する」方式から、必要に応じてサービスとして「利用する」方式へ移すことが、マルチクラウド時代のインフラ刷新の選択肢になることを示している。
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