人事異動時の「アカウント変更遅れ」を防ぐ
ホンダが実現した28万人のID運用自動化 「手作業の権限変更」から決別
組織ごとに乱立する認証システムや手作業による権限付与は、IT部門を疲弊させるだけではなく重大なインシデントの要因になる。28万人超のID管理という課題に対し、ホンダはいかにして統制を図ったのか。
企業規模が拡大し、組織が複雑化するにつれて、IT部門の頭を悩ませるのが「IDと権限の管理」だ。拠点や部門ごとに独自の認証システムが乱立すれば、オンプレミスでシステムの維持管理に工数を奪われかねない。さらに深刻なのは、入社や異動、退職といった人事イベントに伴う権限変更作業だ。手作業への依存は、IT部門の作業負荷を肥大化させるだけではなく、人事イベント時の権限付与の遅れなど、セキュリティや業務効率における「死角」を生み出す。
世界的なモビリティ企業である本田技研工業も、組織ごとに混在する認証インフラと、パスワードに依存した旧式システムというリスクに直面していた。このリスク解消に向けて、同社は28万人超、約1600個のアプリケーションを抱える大規模かつ複雑な条件下で、ゼロトラストセキュリティ実装の第一歩として抜本的なID管理の刷新に踏み切った。
本田技研工業は「7段構え」のセキュリティ対策を策定し、その中核として認証システムの強化を位置付けた。しかし、単に認証の入り口を集約し、システムを刷新するだけでは、複雑なIDライフサイクルと権限ガバナンスの問題は解決しない。真の運用自動化を実現するために同社が下した決断とは。
なぜ「単なる認証システムの一元化」では不十分だったのか
本田技研工業は、マクニカが提供するIGA(Identity Governance and Administration)ツール「Saviynt」を導入した。2026年8月4日、マクニカが発表した。IGAは、IDやアクセス権限を適切に統制し、必要最小限の権限付与や棚卸し、監査業務を支援する仕組みだ。今回の導入によって、28万人超、約1600個のアプリケーションのID・権限制御システムを構築し、グローバル規模でのIDガバナンス強化と運用自動化を実現した。
本田技研工業では、本社や研究所などの組織や拠点ごとに複数の認証システムが混在し、ID管理やアクセス統制の分散と複雑化が課題となっていた。既存システムはオンプレミスインフラ中心で運用されていたため、バージョンアップや互換性維持に多大な工数を要していた。人事イベントに伴う権限管理は手作業が頻発し、反映までに時間を要するケースがあった。エンドユーザーにとってもシステムごとに異なる画面からログインする必要があり、利便性に欠ける他、パスワード依存によるセキュリティリスクも顕在化していた。
こうした状況を受けて本田技研工業は、7段構えのセキュリティ対策を策定し、中核として認証システムの強化を位置付けた。複雑な権限モデルやIDライフサイクルの管理を見据え、IGAツールの導入を検討。大規模システムに適合するスケーラビリティや複雑な権限モデルへの適応力、クラウドネイティブなアーキテクチャ、中長期的なTCO(総所有コスト)最適化を評価し、Saviyntを採用した。
導入に際しては、マクニカが製品サポートに加え、国や地域で異なるデータ品質の平準化やシステムへの取り込み支援を実施した。
新システムの構築によって、エンドユーザーはシームレスなログイン体験を通じて各種アプリケーションを利用できるようになり、利便性が向上した。IDおよび権限ガバナンスの整備に伴い、権限付与や変更、棚卸作業の大半を自動化したことで、作業負荷の削減を見込む。迅速な監査レポートの出力も可能となり、セキュリティ部門がより高付加価値な業務へ注力できる体制が整った。
本田技研工業 デジタル統括部ITインフラ部 チーフエンジニアの山田太郎氏は、「Saviyntの導入によって、グローバル全社でのID管理と権限ガバナンスの統合が実現し、運用効率とセキュリティの両立を達成できた。従来は多大な工数を要していた権限の棚卸や付与作業が自動化されたことで、業務のスピード感と安全性が飛躍的に向上している」と話す。
本田技研工業は今後、サービスアカウントをはじめとするノンヒューマンIDや、特権アクセス管理まで含めた統合的なガバナンスの実現を目指す。Saviyntをグローバル全社における運用自動化とガバナンス強化の共通システムとして活用する方針だ。
(※)この記事は本多和幸氏と谷川耕一氏によるIT事例メディア「CaseHUB.News」に掲載された「本田技研工業、IDガバナンス基盤を統合 28万人超の管理と運用を自動化」(2026年8月4日)を、TechTargetジャパン編集部で一部編集し、転載したものです。
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