ファイル保存だけでは意味がない?
管理職の損失は年間29万円 資料はあるのに調べ直しが減らない理由
引き継ぎ書類や社内ルールといった情報をまとめておいたものの、調べ直しの時間が減らないという声がある。ヌーラボは「調べ直すことによる経済的損失」を調査、結果を公開した。調べ直しが発生する理由は何か。
社内に資料は残っている。それなのに、なぜ従業員は過去の情報を何度も「調べ直す」のか――。原因は、単にファイルが見つからないことではないようだ。
ヌーラボは2026年8月24日、全国の20~59歳のビジネスパーソン1000人を対象に実施した「調べ直すことによる経済的損失」の調査結果を発表した。対象は管理職500人、一般社員500人で、調査期間は同年7月27~28日。
調査結果から浮かび上がったのは、組織から失われているのが資料だけではないという実態だ。
調べ直しが減らない どうすれば
では、資料が残っているにもかかわらず、従業員はなぜ必要な情報を見つけられないのか。調査から見えてきたのは、単なる「情報の所在」ではなく、「なぜそうなったのか」という過去の経緯や判断理由、つまり「文脈(コンテキスト)」が失われているという問題だ。
調査では、情報が見つからない理由を尋ねた。その結果、「資料はあるが分かりにくい・使いにくい」が29.6%、「資料が整理されていない・更新されていない」が29.0%と上位に挙がった。
つまり、必要な資料そのものが存在しないとは限らない。ファイルが残っていても、どれが最新なのか分からない、内容を読み解きにくい、現在のルールに至った背景が分からないといった状態では、業務に必要な知識として十分に活用できない。
特に問題になるのが、「何を決めたか」は残っていても、「なぜそう決めたのか」が残っていないケースだ。例えば、社内ルールの文書を見つけても、そのルールを設けた理由や当時検討した選択肢が分からなければ、例外的なケースが起きた際に判断しにくい。過去の議事録でも、結論だけしか残っていなければ、後任者が同じ検討を一からやり直すことになりかねない。
こうした「文脈の欠落」が、繰り返される「調べ直し」の一因になっていると考えられる。
調査では、調べ直している内容についても尋ねた。その結果最も多かったのは「社内規定・ルールや申請方法の確認」で34.8%だった。次いで「議事録などの過去の決定事項・経緯を調べ直す」が33.0%、「業務の進め方・業務フローを調べ直す」が31.7%と続いた。
ヌーラボの試算では、こうした「調べ直し」による経済的損失は、ビジネスパーソン1人当たり年間平均20万1545円に上る。役職別では一般社員が11万1206円だったのに対し、管理職は29万1884円と約2.6倍だった。
今後のナレッジ共有システムに求める機能を尋ねた質問では、「欲しい情報がすぐに検索できる仕組み」が38.2%で最多となった。「資料や情報が自動的に整理・更新される仕組み」も34.2%に上った。
さらに31.7%は、「AIに質問すれば必要な情報や過去の経緯が分かる仕組み」を求めていると回答した。単にファイルを探し出すだけでなく、「なぜこのルールになったのか」「以前どのような議論があったのか」といった背景まで確認したいというニーズがあるようだ。
ただし、AIを導入すれば自動的に文脈が取り戻せるわけではない。そもそも意思決定の理由や議論の経緯が記録されていなければ、AIが参照できる情報も存在しない。
企業には、資料を「保存する」だけでなく、判断に至った経緯や理由まで組織のナレッジとして残し、後から検索・参照できる状態にすることが求められそうだ。
本稿は、ヌーラボが2026年8月24日に公開したプレスリリースを基に作成しました。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社MatrixFlow] 「物流リソース最適化」ガイド:人員・配車・傭車を出庫依頼の確定前に決めきる -
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
2
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
3
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
4
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
5
肥大化した「SFA」の沼 4カ月でBigQuery×AppSheetの新システムを構築した方法
-
6
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
7
次世代RPA「ハイパーオートメーション」が急成長か Gartnerが予測
-
8
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
9
昭和大学病院がeICUを導入、ICUの患者情報を遠隔地で一括管理
-
10
「何から始めればいい?」 情報漏えい対策で悲鳴を上げる中小企業のリアル
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
プログラミング不要で誰でも実現できる、ネットワーク運用管理の自動化とは
-
4
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
5
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
6
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
-
9
“あのファイル転送”で暗躍するノーウェアランサム
-
10
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー