通関業務は、国家資格が必要で専門性が高く、緻密な作業と常に新しい知識が求められる業務だ。同業務における人材確保や業務の属人化に課題を抱えてきた名港海運の解決策と、成果創出までの道のりを紹介する。
Shippioは2026年8月18日、名港海運が、通関業務の効率化と属人化の解消に向け、Shippioの「Shippio Clear」を導入したと発表した。Shippio Clearは、通関業務をAIで効率化できるサービスだ。本稿は、名港海運がShippio Clearを導入するまでに抱えてきた課題や、得られた効果を紹介する。
名港海運の大阪支店では、5人で構成される通関管理チームが、申告書類の作成から許可取得までの一連の業務を担っている。特定の担当者が特定の案件を専任するのではなく、チーム全体で業務を分担する運用を採ってきた。
一方、通関業務は通関士資格や実務経験が求められる専門性の高い領域だ。書類の内容確認や数量計算などでは担当者の経験や知識が必要になる場面が多く、人材の採用や育成のハードルは高くなる傾向にある。人事異動の際に、担当者が培ったスキルやノウハウを組織としてどのように蓄積、継承するかという課題もあった。
加えて、繁忙期には残業が常態化していた。同社の本拠地ではない大阪で専門人材や派遣スタッフを確保すること自体も難しく、仮に人員を確保できても、専門性の高い通関業務を短期間で任せることは容易ではなかった。
通関管理チームは、2024〜2025年ごろから、AIやITを活用した業務効率化の必要性を感じていた。ただし、具体的にどのようなツールを導入すればよいか分からず、現場の担当者が情報収集を続ける状態が続いていた。
導入のきっかけとなったのが、東京で開催された物流関連の展示会だった。ShippioのブースでShippio Clearを確認し、AI-OCRによる書類の読み取り精度を評価したことから導入の検討を始めた。
Shippio Clearは、インボイスなどフォーマットが統一されていない貿易書類をAI-OCRで読み取り、品目別や総量の計算、内容確認などを支援するクラウドサービスだ。Shippioによると、AI-OCRの読み取り精度は97%。読み取ったデータは、NACCS(輸出入・港湾関連情報処理システム)の申告書フォーマットに変換でき、HSコード(輸出入される商品を分類するためのコード)や原産地情報を含む申告項目も出力できる。
名港海運はこうした機能を使って、書類からの転記や数量計算といった定型作業を省力化し、特定の担当者の経験や暗黙知に依存しにくい業務体制をつくることを狙った。
Shippio Clearの導入時に、大規模な研修や既存の業務フローの抜本的な変更といった施策は実施しなかったという。現場のメンバーが日々の業務で利用しながら、「この書類は読み取れる」「ここはうまく読み取れない」といった気付きを共有し、使い方を固めていった。
導入効果の1つが、経験の浅い人材を早期に業務へ投入できるようになったことだ。AI-OCRが書類の読み取りや数量計算などの定型作業を支援することで、通関実務の経験がない派遣スタッフでも業務に参加しやすくなった。
名港海運によると、未経験の派遣スタッフが約1カ月でチームの戦力として活躍できるようになったという。従来は経験者に依存しやすかった作業の一部を経験の浅いスタッフにも任せやすくなり、人材育成のハードルを下げる効果が表れた。
同時に、通関業務の脱属人化も進んだ。書類の読み取りや計算といった作業をシステム上の共通プロセスに置き換えることで、特定の担当者の知識や経験だけに頼らず、チーム全体で業務を分担しやすくなった。人事異動などでメンバーが変わった場合にも、業務を引き継ぎやすい体制づくりが実現した。
処理量にも変化があった。書類の読み取りや数量計算などの手作業を減らしたことで、1人が1日に処理できる件数は40〜50件規模になった。1件当たりの作業時間の短縮幅は数分程度だが、多数の案件を処理する中で積み重なり、チーム全体の業務負荷の軽減につながっている。
繁忙期の残業時間については定量的な削減効果を測定している途中だが、煩雑な計算作業や手作業での転記に追われる場面は減ったという。作業量だけでなく、転記ミスを避けながら繰り返し処理するといった負担が減り、担当者の心理的な負担の軽減にもつながった。
Shippio Clearの活用は、日々の申告業務の省力化からデータ活用にも広がり始めている。業務データの集約が進んだことで、名港海運は現在、荷主ごとに情報を確認しやすくするための商品マスターの精査などに着手している。
名港海運は、インボイスやパッキングリスト、船荷証券(B/L)など複数の船積み書類をまとめて取り込んだ際に、AIが書類の種類を自動判別して仕分ける機能や、Microsoft Excelファイルの読み取り精度の向上にも期待しているという。
本稿は、Shippioが2026年8月18日に公開したプレスリリースを基に作成しました。
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