需要変動と在庫最適化を両立
EOL対応工数を9割削減 日本精機がAIで実現した“脱属人化”とサプライチェーン変革
日本精機は、キナクシスの「Kinaxis Maestro」を採用し、AIを活用した需給計画基盤を構築。需要・供給・生産計画の統合管理により、計画策定工数を9割削減したという。同社が抱えていた課題や、採用の決め手は。
自動車業界では、需要変動への迅速な対応と在庫最適化の両立が重要な経営課題となっている。特にTier1サプライヤーは、自動車メーカーからの多様かつ頻繁な需要変動に対応しながら、納期を守りつつ過剰在庫を抑えなければならない。
日本精機は、AIを活用した新たな需給計画基盤を構築した。システム基盤として、キナクシスのサプライチェーン・オーケストレーション・プラットフォーム「Kinaxis Maestro」を採用し、需要・供給・生産計画を横断的に可視化するとともに、中長期の需要情報を統合管理できる環境を整備した。キナクシスが2026年6月12日に発表した。
本稿は、日本精機が従来抱えていた課題と、Kinaxis Maestro採用の決め手を整理する。
日本精機が抱えていた課題と導入の決め手は
併せて読みたいお薦め記事
“サイロ化”の関連記事
日本精機は、自動車部品のTier1サプライヤーとしてグローバルに事業を展開している。同社では従来、部品表(BOM)を基幹情報として管理していたが、一部の需要情報や在庫情報、部品発注情報は各部門で個別に管理されていた。
その結果、データの突合や更新に多くの工数を要していたほか、需給判断が担当者の経験や勘に依存する属人的な運用が発生していた。情報把握の遅れや判断精度のばらつきは、迅速かつ正確な意思決定を難しくし、過剰在庫の発生要因にもなっていたという。
AIで需給全体を可視化
そこで同社は、中長期の需要情報を統合的に管理し、部品発注計画を高度化するためにKinaxis Maestroを採用した。
Kinaxis Maestroは、需要・供給・生産計画を統合管理するAI活用型のサプライチェーン・オーケストレーション・プラットフォームだ。部品表と需要情報を連携させることで必要量計算や需給計画を支援するほか、高速シミュレーション機能によって複数の需給シナリオを短時間で比較検討できる。
日本精機は、部品表と需要情報を紐づけた計画立案や必要量計算を標準機能として利用できる点に加え、高速なシミュレーション機能を評価し導入を決定した。
導入後は、中長期の需要情報を一元的に可視化し、フェーズ別の部品情報に基づく発注計画を最適化できるようになった。さらに、従来は個別最適で進められていた意思決定プロセスを標準化し、需給全体を見据えた判断が可能な体制を整備した。
計画策定業務の工数を約9割削減
システム導入による効果は数値にも表れている。
新機種向け部品供給の計画策定業務では、従来年間1065時間を要していた作業時間が75時間へと減少した。約93%の削減となる。
また、生産終了を意味するEOL(End of Life)部品への対応業務でも、年間1248時間かかっていた工数が120時間へと縮小した。約90%の削減に相当し、需要変動への対応に伴う現場負荷の軽減につながっている。
日本精機 DX・システム企画部 シニアマネジャーの北原 肇氏は、「需要変動への迅速な対応と在庫最適化の両立は重要な経営課題だった。Kinaxis Maestroは、部品表と需要情報を連携した計画立案や必要量計算を標準機能として備えており、当社の業務要件に適合していた。また、高速なシミュレーション機能によって複数シナリオを迅速に比較検討できる点も評価した」と説明する。
今後は適用範囲をさらに拡大し、海外拠点への展開も検討しているという。
情シスが学ぶべきポイント
本事例の特徴は、単なる業務効率化ではなく、「属人的な判断」をデータとAIに基づく意思決定へ転換した点にある。
多くの企業では、需要予測や在庫管理、生産計画などの情報が部門ごとに分散し、担当者の経験に依存した運用が残っている。日本精機は、需要・供給・生産の情報を統合し、シミュレーションによる意思決定基盤を整備することで、業務工数の削減と判断品質の向上を同時に実現した。
AI活用が進む中で、企業の競争力を左右するのはAIそのものではなく、AIが活用できるようにデータと業務プロセスを統合できるかどうかだ。日本精機の取り組みは、その好例と言えるだろう。
(※)この記事は本多和幸氏と谷川耕一氏によるIT事例メディア「CaseHub.News」に掲載された「日本精機、需給のAI管理で部品供給と生産終了の計画時間を9割削減」(2026年6月14日)を、TechTargetジャパン編集部で一部編集し、転載したものです。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
この記事の著者
関連記事
新着ホワイトペーパー PR
-
製品資料
[株式会社キーエンス] なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは -
製品資料
[株式会社セールスフォース・ジャパン] 「CRMは設計と無関係」は本当か? PLMとの融合で実現する高速開発 -
事例
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] AIエージェントの時代にどう備える? 「新たな働き手」を支える3要素とは -
製品資料
[日本ヒューレット・パッカード合同会社] “横並びの自動化”から脱却、AI活用で生産性と競争力を高める秘訣 -
製品資料
[サイボウズ株式会社] AIが「わざわざ使うツール」になっていない? 業務で自然に使う導線にする秘訣
こんなメディアも見られています
TechTargetジャパンに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
ベンダーコンテンツ PR
From Informa TechTarget
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
なぜ「全社配布Copilot」は使われないのか? 失敗に学ぶAI定着
-
2
法務と開発者で「言葉が通じない」問題 トヨタやソニーが語るOSS管理の真実
-
3
ChatGPTは“検索しまくり”でGeminiは“淡泊”? データが明かすAIの裏側
-
4
なぜ「Gemini 4 Argon」は出遅れたのか? Googleが狙う“逆転のシナリオ”
-
5
「中堅・中小企業のネットワーク・セキュリティ運用実態」に関するアンケート
-
6
損保ジャパンはなぜ「COBOL」を捨てなかったのか? 脱メインフレームの真相
-
7
「Wi-Fi 7」経由でWindowsが乗っ取られる? 最高権限奪取の恐怖
-
8
情報漏えいはなぜ繰り返されるのか 今すぐ見直すべき「境界」
-
9
情シスの約8割が転職や退職を意識 調査で分かった“辞めたくなる最大の理由”
-
10
【漫画付き】ひとり情シス協会が明かす、RAG導入でしくじる企業「2つの共通点」
ホワイトペーパーランキング PR
-
1
不審メールの経路や見せ方に変化? 2026年夏の3事例から見えた動向と対処方法
-
2
家庭用Wi-Fiルーターの業務利用は危険? 避けるべき理由と具体的な対策
-
3
Microsoft 365を安全に運用 うっかりミスやサイバー攻撃に備えるデータ保護術
-
4
財務部門がAIを最大限に活用する方法 無駄のない戦略的リーダーシップへの道
-
5
LLMが兵器化? 元FBI高官が鳴らす警鐘とセキュリティツール統合のポイント
-
6
「オンプレミス回帰」せざるを得ない“合理的な理由”
-
7
なぜRPA導入は頓挫する? シナリオ作成の壁を乗り越える解決策とは
-
8
生成AIを開発に導入しても効果が見えない? 実証実験で分かった成果と課題
-
9
経産省DX指針から読み解く、受発注業務デジタル化ロードマップ
-
10
HDDを使わない「SSDオンリー」が無謀なのはなぜ?
TechTargetジャパン SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
TechTargetジャパンをフォロー