COBOLをJavaへ自動変換
仕様書ゼロでメインフレーム移行 AT&TのAI活用術
メインフレームの移行は、ソースコードの複雑化やドキュメント不在のために困難を極める。この技術的負債に対し、AT&Tは複数の専門特化型AIが連携する「マルチエージェントシステム」を導入した。具体的な仕組みは。
通信業界にはオンプレミスで稼働するレガシーシステムがあふれている。通信大手AT&Tは、膨大なトランザクションを処理するメインフレームのモダナイゼーションという壁に直面していた。長年稼働してきたシステムは、度重なる機能追加によって複雑化していた。仕様書などのドキュメントが存在せず、ソースコードを読み解く必要があるため、従来の手法では移行に数年単位の時間を要した。年間5分しか停止が許されない厳しい可用性要件もあり、リスクを伴う刷新は困難を極めていた。
この課題に対し、AT&TはAmazon Web Services(AWS)の生成AIツール群を導入した。自律的にタスクを処理するAIエージェントを活用し、ソースコード分析から仕様書作成、コード変換までの工程を自動化する。従来は数カ月から数年を要した作業を数分に短縮し、変革の70%を加速させる目標を掲げている。
長年の技術的負債を、AIエージェントはいかにして解消するのか。AT&Tが活用するAWSサービスの仕組みと、単なる移行にとどまらないアプローチを解説する。
複数AIエージェントがレガシーシステムを刷新
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モダナイゼーションの進め方
AWSの技術イベント「AWS re:Invent 2025」におけるセッション「Accelerate Telco Transformation: AT&T's AI-Powered Migration at Scale」では、通信業界のレガシーシステム変革に向けたAI技術の活用法が詳細に語られた。
数十年にわたって稼働してきたメインフレームの刷新は、単一のAIモデルが処理するには工程が複雑過ぎる。そこでAWSが提示したのが、複数の専門特化型AIエージェントが連携して自律的にワークフローを処理する「マルチエージェントシステム」だ。ソースコードの分析、ドキュメントの生成、マイクロサービス化(小さな機能単位に分割する設計手法)の提案、「COBOL」から「Java」などの現代的なプログラミング言語への変換といった作業を、それぞれのエージェントが分担して実行する。
特に変革の手間を引き下げているのが、ドキュメント生成エージェントの存在だ。既存のソースコードを読み込み、ビジネスロジックを説明する文書と、システム設計を記述する技術文書の2種類を自動生成する。これまで、仕様書がないシステムの移行ではテストと修正に膨大な時間を要していたが、この自動生成により移行時間を半減させることが可能になった。
AWSは、既存のソースコードを新しいプログラミング言語で書き換える手法から一歩踏み込んだ手段として、AIコーディングエージェント「Kiro」を紹介する。
従来の移行手法では、現在では使われていない不要な機能まで新しいシステムに持ち込んでしまう無駄があった。Kiroは、ソースコードから開発を始めるのではなく、「どのような機能が欲しいか」という仕様から出発する。既存システムの分析データを基に、エンドユーザーが指定した仕様に合わせて新しいアプリケーションを一から生成する。簡単な操作で目的の機能だけを備えたシステムが作られ、自動テストまで実行される。AWSはこの手法を、単なる移行ではない「再構想」と位置付けている。
AT&Tでエンタープライズアーキテクチャを担当するラマ・ラガバン氏は、「既存のツールを用いた従来の手法ではシステム全体の10%程度しか移行できなかった」と振り返る。メインフレーム技術の有識者が減少していく中で、ビジネスを止めずに移行を加速させるためには、生成AIによる自動化が不可欠だった。
「AI技術の進化によって、従来の制約に縛られることはなくなった。AWSのサービスを活用することで、これまで年間10~25件程度だったアプリケーションの処理ペースが、はるかに速まることが期待できる」(ラガバン氏)
AT&Tは、クラウドサービスの利点を生かした並列処理によるパフォーマンス改善も見込んでいる。自社のビジネス要件と高い可用性を維持しながら、ITインフラのリスクを軽減する方針だ。システムの一元化と最新技術への適合を実現する上で、「AWSの機能群は、私たちを目標へ導いてくれるものだ」とラガバン氏は評価した。
本稿は、AWSが2025年12月7日に公開した記事「AWS re:Invent 2025 - Accelerate Telco Transformation: AT&T's AI-Powered Migration at Scale (IND201)」を基に作成しました。
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