独自制度の対応と運用負荷軽減を両立
給与計算を止めずにオンプレ脱却 日本電波工業に学ぶ混乱ゼロの短期間クラウド移行術
日本電波工業は、オンプレミスで運用してきた人事給与システムのクラウド移行を週末2日間で完了したという。独自の給与制度や操作性を維持しながら短期間でのクラウド移行をどのように進めたのか。
人事給与システムをクラウドへ移行したいが、給与計算を止めるわけにはいかない。独自の給与制度も維持したい――。日本電波工業は、こうした条件を満たしながら、オンプレミスで運用してきた人事給与システムを週末の2日間でクラウドへ移行した。
同社が採用したのは、キヤノンITソリューションズ(以下、キヤノンITS)の人事給与システム「SuperStream-NX Cloud」だ。業務への影響を抑え、週末に移行作業を実施し、週明けから安定した操作感で利用を再開したという。
日本電波工業はどのようにして短期間での移行を実現できたのか。
独自の給与制度を維持して週末2日でクラウド移行できた理由
日本電波工業は、水晶振動子や水晶発振器などのデバイスを手掛ける企業だ。同社では、組合費をはじめとする給与控除項目や各種制度に応じた給与計算など、独自の人事・給与制度を運用している。
以前は紙の給与明細を発行し、給与計算では多くの手作業が発生していた。汎用(はんよう)的な人事給与パッケージでは独自制度への対応が難しかったため、2014年ごろからキヤノンITSの「SuperStream」をオンプレミス環境で利用してきた。
日本電波工業の管理本部 総務人事部 人事課 専門課長の植田氏によると、SuperStreamを採用した理由の1つは、標準で用意された設定の範囲で同社独自の制度に柔軟に対応できたことだった。
一方、長年利用する中でオンプレミスならではの運用負荷が課題になっていたという。法改正に伴うパッチ適用に加え、サーバの運用保守やバックアップも自社側で担う必要があった。オフラインバックアップのためにテープメディアも運用していたという。
加えて、同社は人材戦略をグループ会社へ展開することを検討していた。そこで、人事給与基盤を強化しながら、サーバ管理などの負担を減らす目的でクラウドへの移行を検討した。
「Fit to Standard」でも独自制度を維持できるか
クラウド化に当たり、日本電波工業は複数の人事給与システムを比較した。同社は、原則として個別カスタマイズを避け、標準機能を活用する「Fit to Standard」を基本方針としている。しかし、人事給与システムでは単純に標準化すればよいわけではなかった。
植田氏は、給与計算をはじめとする独自制度への対応にはカスタマイズが必要になる製品や、必要な項目をマスターで管理できない製品もあり、「要件に合うソリューションはなかなか見つからなかった」と説明する。
そこで候補になったのが、既に利用していたSuperStreamのクラウド版であるSuperStream-NX Cloudだった。
日本電波工業の管理本部 総務人事部 人事課 課長の上野氏によると、既存環境で利用してきた独自仕様をクラウド版でも適用できることに加え、長年のサポート実績を評価したという。人事部門のアカウント数を基にコストを算出できる点も、他のクラウドサービスと比較した際の判断材料になった。
週末2日間で移行、週明けから利用再開
今回のクラウド移行で特に注目すべき点は、移行にかかった期間の短さだ。日本電波工業は、オンプレミス環境からSuperStream-NX Cloudへの移行作業を週末の2日間で完了した。キヤノンITSによると、移行期間中も業務への影響を抑えながらシステム運用を継続したという。
上野氏は「通常であれば何カ月もかけて移行することになりますが、週末に移行を実行して、週明けには同じように使い始めることができました」と説明する。
利用画面も大きく変わらず、利用者はオンプレミスからクラウドへ環境が変わったことをほとんど意識せずに済んだという。
短期間で移行できた背景には、新しい人事給与システムへ全面的に入れ替えるのではなく、既存のSuperStreamで使っていた制度や運用を維持しながらクラウドへ移したことがある。
クラウド移行では、インフラだけでなく業務フローやシステム機能も同時に変更すると、要件整理や設定、テスト、利用者教育など移行範囲が広がる。日本電波工業の事例は、既存システムに大きな機能上の問題がなければ、まずインフラをクラウド化し、運用負荷を減らすという進め方も選択肢になることを示している。
テープバックアップやサーバ管理が不要に
日本電波工業では、人事部門の約8人を中心にSuperStream-NX Cloudを利用している。人事マスター管理や毎月の給与計算に加え、蓄積したデータを月次報告資料として出力している。
さらに、基幹システムの「SAP」に加え、経費精算、勤怠管理、労務管理、人事諸届などのクラウドサービスとも組み合わせて運用しているという。
クラウド移行による大きな変化は、人事給与システムそのものの機能よりも、周辺の運用管理だ。
植田氏によると、移行後はサーバの運用管理負担が軽減され、従来実施していたテープによるバックアップも不要になった。法改正などに伴う更新についても、新しい機能を利用しやすくなったという。
一方、業務側では従来と同じ操作性を維持している。つまり、日本電波工業は今回のクラウド化で、人事給与業務を大きく変えるのではなく、「利用者が使う部分はなるべく変えず、情シス側が担っていたインフラ運用を減らす」という形を取ったことになる。
今後はSuperStream-NX Cloudのグループ会社への展開も視野に入れ、業務の標準化や効率化を進める。人材育成やタレントマネジメントを含む人事基盤への用途拡大も検討しているという。
本稿は、キヤノンITソリューションズが2026年9月25日に公開した日本電波工業が「SuperStream-NX Cloud」への移行を週末2日間で完了 人事給与基盤のクラウド化と運用負荷の軽減を実現と日本電波工業株式会社さまのケースを基に作成しました。
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