VMwareのライセンス体系変更に伴う費用増加を背景に、オンプレミス仮想化システムの維持費用が急増している。この危機をAWSへの移行で脱し、大幅なインフラ縮小を果たした3つの組織の戦略を紹介する。
VMwareのライセンス体系変更に伴い、永久ライセンスからサブスクリプションモデルへの移行や大幅な価格改定が進んだことで、オンプレミスシステムの維持費の急騰という問題が生じた。これを受けたIT担当者は、オンプレミスシステムを維持すべきか、クラウドサービスに移行すべきかという選択を迫られている。この判断はインフラの維持費用と日々の運用体制の両面に大きな影響を与えるためだ。
こうした課題に対し、米国の大手医療サービス提供企業であるEnvision Healthcare、メキシコの航空会社Aeromexico、カリフォルニア大学(University of California)の3組織は、Amazon Web Services(AWS)への移行による解決を図った。各組織はAWSの移行支援ツールを活用し、短期間での移行やインフラ縮小を実現している。例えば、Envision Healthcareは乱立していたデータセンターの集約を進め、わずか9カ月間で約5000コアあったインフラ規模を、アプリケーションの精査と廃止によって大幅に削減することに成功した。
自社の要件に合わせた最適な移行手法と、プロジェクトを成功に導くためのクラウド財務管理手法「FinOps」の重要性について、各組織の実践例から探る。
AWS社の年次カンファレンス「AWS re:Invent 2025」におけるセッション「AWS for VMware migrations: Successes, roadmaps, & strategies(MAM203)」では、VMware製品で構築されたシステムのAWS移行における成功体験や今後の展望についてディスカッションが繰り広げられた。
航空業界のように24時間365日の稼働が求められ、システムの停止が許されない業務現場において、システムのクラウド移行のハードルは高い。Aeromexicoは、オンプレミスインフラに残された移行難易度の高いシステムをクラウドサービスに移行する際、既存のIPアドレスを保持しつつ、アプリケーションへの改修を最小限に抑える必要があった。
そこでAeromexicoが採用したのが「Amazon Elastic VMware Service」(Amazon EVS)だ。これはAWS内でVMware製品をそのまま稼働させるマネージドサービスであり、アーキテクチャの大幅な変更を避けたい場合に有効に働く。Amazon EVSと、ネットワーク拡張ツール「VMware HCX」を組み合わせることで、同社はオンプレミスのネットワークをAWSへ論理的に拡張した。これによって、夜間の1時間半という極めて短い時間帯を利用し、無停止でのシステム移行を実現している。結果として、1カ月の短期間で96台のサーバと50個以上のアプリケーションを移行し、日々の運用や顧客サービスへの影響を出さずにプロジェクトを完了させた。
Aeromexicoの担当者は当初、Amazon EVSを「一時的な通過点(中継地)」と位置付け、その後に別のシステム構成に再構築する計画だった。しかし実際に移行を進めると、想定以上の俊敏性とパフォーマンス向上が得られたことから、一部のワークロードはAmazon EVSにそのまま保持し、他の主要システムは計画通りリファクタリングなどのモダナイゼーションを段階的に進めるアプローチへと方針を転換した。
システムをクラウドサービスに移行するだけではなく、クラウドサービスに適した形へと再構築するアプローチも、費用削減や可用性向上の鍵を握る。カリフォルニア大学は、処理時間の長期化が深刻となっていた給与システムや、締め切り直前のアクセス集中によって毎年ダウンしていた入試システムを相次いでAWSに移行した。課題を根本から解決した後、VMware製品のライセンス費用増加を回避するために全システムのクラウド移行計画を前倒しで進めた。
この一連の移行過程では、強制的にインフラの全面的な見直しをすることになった。移行に当たって全システムを精査した結果、用途不明のまま稼働し続けていた不要な「ゾンビサーバ」を15台発見して削除した。不要な資産の廃棄やOS設定の刷新を進めることで、約6万個に及ぶソフトウェアの脆弱(ぜいじゃく)性を解消することに成功している。クラウドインフラへ移行したことで、運用担当者は継続的なパッチ適用の負担から解放され、セキュリティの抜本的な強化と費用削減を同時に成し遂げた。
カリフォルニア大学高額な維持費がかかっていたメインフレームからAWSへの移行を完了させ、300万ドル(約4億円以上)もの費用削減に成功。これらの成功体験を重ねたことで、全システムのAWS移行を決断した。
移行プロジェクトを技術面からだけではなく、財務や運用の側面から支える仕組みも欠かせない。各組織のリーダーが口をそろえて強調したのが、FinOpsと強力なガバナンス体制の構築だ。
カリフォルニア大学の事例では、クラウド導入の初期段階において現場主導でテスト利用が進んだ結果、非効率でセキュアではない設定による過剰な支出増加を招いた時期があったという。この状況を打破するため、クラウド運用に長けたリーダーを採用し、全学的な標準ルールの設定とガバナンスを確立した。同時にFinOpsの実践を徹底したことで、月額5万ドルかかっていた関連費用を1万ドルまで削減した。
Envision Healthcareも、オンプレミスインフラ時代からFinOpsを担う専門チームを組織化している。クラウドインフラはもちろんのこと、オンプレミスインフラにおける無駄な投資を特定し、異常な支出増のアラートを受け取った際は、1日〜1週間以内という迅速さで原因となる無駄を特定できる体制を構築した。費用を可視化し、ビジネス上の価値を具体的な金額換算で示すことが、各部門の納得を得ながらインフラを最適化する強力な武器となっている。
クラウドサービスへの移行は最終目標ではなく、継続的な改善の出発点に過ぎない。AI技術を活用したコード変換ツールによるレガシー言語からの脱却や、構成ファイルのコード化(IaC)を通じたインフラ構築の自動化など、各組織はすでに次の段階に向けて歩みを進めている。
本稿は、AWS社が2025年12月3日に公開した動画「AWS re:Invent 2025 - AWS for VMware migrations: Successes, roadmaps, & strategies (MAM203)」を基に作成しました。
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本記事は制作段階でChatGPT等の生成系AIサービスを利用していますが、文責は編集部に帰属します。
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