ランサムウェアと誤操作リスクにどう備えるか
「統制不能な私物PC」から重要データを守る 東京農大のバックアップ選定基準
約60人の学生や教員が私物PCでファイルサーバにアクセスし、毎年人が入れ替わる東京農大の研究室。厳密なセキュリティ統制が困難な条件下で、ランサムウェアや誤操作によるデータ消失をどう防いでいるのか。
企業や教育機関のシステム管理者にとって、エンドポイントの厳格な統制は絶えず付きまとう課題だ。特に、多数のエンドユーザーが自身の裁量で私物デバイスをネットワークに接続するシステム構成では、管理者の目の届かないところでセキュリティインシデントのリスクが常に潜んでいる。
植物のゲノム解析を進める東京農業大学の農学部生物資源開発学科遺伝情報利用研究室も、まさにそうした「統制が困難な条件」を抱える組織の一つだった。同研究室は、世界各地の素材植物の遺伝子情報を詳細に解析するため、膨大なデータを取り扱っている。既存のファイルサーバに加えて、66TBに及ぶ大容量のクラウドシステムを研究用インフラとして併用してきた。
最大の懸念事項となったのは、重要データへのアクセス手段だ。研究室のファイルサーバには、約60人の学生と教員が個人所有のPCからアクセスし、USBメモリも頻繁に使用されている。毎年新しい学生が配属されるという組織構造上、教育やルールによる厳密なセキュリティ設定の徹底には限界があった。
このような条件下では、学生の誤操作による重要ファイルの上書きや削除、あるいは持ち込まれたデバイスを経由したランサムウェア(身代金要求型マルウェア)などのマルウェアの侵入といった事態を、「必ず起こり得るインシデント」としてあらかじめ想定せざるを得ない。遺伝情報利用研究室は、電子的破壊を前提とした多重の保護策を講じるためのシステム見直しに着手した。
回避困難な「人為的ミス」と「サイバー攻撃」にどう備えるか
東京農業大学は、研究データの保護体制を強化するためにバッファローの法人向けNAS「TS5420RN0404」を採用した。2026年9月24日、バッファローが発表した。農学部生物資源開発学科の遺伝情報利用研究室において、バックアップと不変スナップショット機能を組み合わせ、ランサムウェア感染や学生の誤操作に伴うデータ消失リスクの低減を図る。
東京農業大学厚木キャンパスの農学部生物資源開発学科遺伝情報利用研究室では、主にキャベツや白菜といったアブラナ科植物の品種改良を目的に、植物のゲノム解析を進めている。品種改良に向けた素材植物を世界各地から収集し、遺伝子情報を詳細に解析するため、取り扱うデータ量は膨大に上る。そのため、既存のファイルサーバの他、66TBに及ぶ大容量のクラウドストレージを研究インフラとして併用していた。
研究室のファイルサーバには、約60人の学生と教員が個人所有のPCからアクセスし、USBメモリも頻繁に使用されている。毎年新しい学生が研究室に所属することから、厳密なセキュリティ設定の徹底には難しさがあった。誤操作によるファイルの誤った上書きや削除、マルウェアやランサムウェアの侵入による電子的破壊といったインシデントについて、回避困難な事態として想定し、多重の保護策を講じる必要に迫られていた。
こうした背景から研究室では、ゲノム解析の生データや論文作成用の分析データなど、重要度の高い一部の研究データを確実に保管できる仕組みの検討を開始。ハードウェアとソフトウェアの双方が国内生産および国内管理である信頼性を評価し、バッファローのTS5420RN0404の採用を決めた。
新システムでは、研究室内のラックにTS5420RN0404を設置し、重要データのバックアップ先として利用している。バックアップ後はNASをネットワークから切り離す運用とし、マルウェアやランサムウェアの感染リスクに備える。併せて不変スナップショットを小まめに取得し、保存期間を最長の60日に設定した。保護期間中は管理者権限であってもデータを変更できないため、誤操作や不正なデータ変更・削除への対策としている。
今回の導入によって、研究室では重要な研究データの一部をTS5420RN0404にバックアップし、不変スナップショットとネットワーク切り離しを組み合わせて保護する体制を整えた。これにより、学生による誤操作やマルウェア、ランサムウェア感染などに伴うデータ消失リスクの低減を図る。
東京農業大学農学部生物資源開発学科准教授の小松憲治氏は、従来、研究室内のファイルサーバやクラウドには外国製品を利用していたと説明する。その上で、今回の導入により、重要な研究データの一部を国産NASに保管できるようになったと述べる。バッファロー製NASについて、シンプルさと安定性を重視した設計で、ファイルサーバとして利用しやすい点を評価した。
研究室では今後、火災や地震などの災害によるデータ喪失リスクを分散するため、別キャンパスなどへの物理的なオフサイトバックアップも検討する方針だ。
(※)この記事は本多和幸氏と谷川耕一氏によるIT事例メディア「CaseHUB.News」に掲載された「東京農業大学、研究データの消失対策にNASを活用 不変スナップショットで保護」(2026年9月25日)を、TechTargetジャパン編集部で一部編集し、転載したものです。
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